シーズン再開もアービングとデュラントは不在

ケビン・デュラントとカイリー・アービングを補強し一気に注目チームになったネッツですが、デュラントはウォリアーズ時代のケガで全休、アービングも20試合にしか出場できず、さらにチーム再建の功労者であるヘッドコーチのケニー・アトキンソンを解任する激動のシーズンとなりました。ここまで30勝34敗、東カンファレンス全体の勝率が低いことでプレーオフ圏内にいるものの、勝率は5割を下回っています。

昨シーズンまでは複数のスクリーンによるオフボールの動き出し、スペースを作る細かいポジションチェンジをベースにし、ポイントガードの視野の広さと判断力が重要なオフェンスを行っていましたが、今シーズンはアービングとキャリス・ルバートの突破力に比重を置いたオフェンスにシフトしました。

しかし、この戦術変更が浸透する前にアービングがケガで戦線離脱。早々にスペンサー・ディンウィディー中心に切り替わったことで、昨シーズンの戦い方に戻ることになります。

それでもチームは勢いを取り戻し、エース不在でも戦えるチームであることを示しますが、1月にアービングが戻ってから4勝5敗と再び負け越してしまいます。アービングがいない間では勝率5割をキープしていたこともあって、エースと戦術が噛み合わない状況に不平不満が出てきました。その結果、フロントはエースを優先してヘッドコーチ解任を決断したのです。

オフェンスは度重なる変更があり安定しませんでしたが、ディフェンスはディアンドレ・ジョーダンとジャレット・アレンが交代でゴール下を塞ぎ、トーリアン・プリンスらの万能なウイングディフェンダーが並んで安定したブロックを築き上げており、大量失点する試合は減ってきました。ディフェンスで大崩れすることなく、試合終盤にエースを生かしたオフェンスで勝利する、プレーオフを見据えたゲームプランが整備されてきたと言えます。

シーズン中の東カンファレンスの上位チームとの直接対決ではペイサーズとヒート以外のチームに対してはディフェンスが機能しており、アップセットを起こす可能性もあります。しかし、勝負どころの1本を決めるスーパースターがいるからこそ成り立つ戦略であるにもかかわらず、デュラントもアービングもプレーしません。来シーズン以降に向けた経験値を増やす意味でも、若手がスーパースターの代役を務めれらるかを試す残りシーズンになりそうです。

『スター不在でもタフに戦える集団』を示せるか

『バブル』で迎えるシーズン終盤戦、ジョーダンとディンウィディーは新型コロナウイルスに感染したことでチームに帯同しておらず、期待されるのは3月のセルティックス戦で51点を挙げたルバートの爆発です。持ち前のスピードを生かした突破に加え、3ポイントシュート成功率38%とシュート力を向上させてきたことで、4年目でキャリアハイの17.7得点を記録しています。この2シーズンはケガでの離脱があったものの、シーズン開幕直後に活躍する傾向にあり、中断期間を経てからの短期決戦であればさらなるパフォーマンスを見せる可能性もあります。

まずは再開するレギュラーシーズンでプレーオフ進出を確定させる必要がありますが、9位のウィザーズとは差があるため、ルバートがフル稼働すれば難しいことではありません。シーズン全休が決まっていたデュラントと契約したのも、来シーズン以降に優勝を目指すためであり、若い選手の多いネッツにとっては、未来に向けて結果以上に内容が重要な残りシーズンとなります。

注目を集めながら揺れ動いたネッツですが、『スーパースターの融合』という重要なポイントを除けばチーム作りはそれなりに進みました。アービングを取り巻く環境はどうなるか読めないものの、デュラントが戻って来れば形になりそうなだけに、その前段階としてスーパースター不在でもタフに戦える集団として、プレーオフのヒリヒリした戦いの経験値を高めておきたいところです。