文=丸山素行 写真=Getty Images

ケガ人が出たことで八村がスタメンに抜擢される

NCAAトーナメント3回戦、八村塁が所属するゴンザガ大はエリート8(ベスト8)を懸けて、フロリダ州立大と対戦した。

2回戦のオハイオ州立大戦でキャリアハイとなる25得点を記録した八村は、先発のキリアン・ティリーが故障したことに伴い、トーナメントに入って初めてスターターで起用された。

立ち上がり、3ポイントシュートが決まらないゴンザガ大は、オフェンスでリズムがつかめず開始約5分間で6-16と先行されるも、この悪い流れを八村が断ち切る。3分間得点が止まっている状況、ゴール下でパスを呼び込みファウルを受けながら力強くシュートをねじ込む。2試合合計で16本中7本の成功と低調だったフリースローも確実に沈め、3点プレーでチームを立て直した。

さらに直後のオフェンスでも、ローポストでボールを受けると、ディフェンスを2人かわし、ゴール下で連続得点を挙げ、流れを引き寄せたかに見えた。それでも、相手が八村への警戒を強めるとオフェンスに絡めなくなり得点が止まる。

その後、ゴンザガ大はインサイドを重点的に守るゾーンディフェンスがハマり15-0のランで一度は逆転に成功する。しかし29-28でリードして八村がベンチに退いた後、残り2分から3連続で3ポイントシュートを許し、32-41とされて前半を終えた。

終盤の勝負どころで失速、ベスト8入りを果たせず

前半9得点の八村は後半に入っても好調をキープ。ゴール下にボールを呼び込み、シュートファウルを誘ってはフリースローを沈めた。また3ポイントラインからドライブを仕掛け、フリースローラインあたりから放つプルアップジャンパーで加点していった。

だが残り11分48秒の場面、八村は速攻からレイアップに持ち込むが、テランス・マンのシュートブロックを浴びて、逆速攻を受けてしまう。八村に限らずゴンザガ大は相手の高さに苦戦し、1試合を通じて9本のブロックショットを許した。

なかなか点差が詰まらない状況が続いたが、ちょうど半分の10分が過ぎる場面で、ザック・ノーベルJr.の3ポイントシュートが決まり49-53と肉薄。そのまま5点前後の点差で試合は推移する。

そして54-59で迎えた残り4分52秒、八村が4つ目のファウルを犯しベンチに退くと流れはフロリダ州立大へ傾く。その後の1分間で1-7と走られ、11点のビハインドを背負った場面でゴンザガ大はタイムアウトを要求。すぐに八村をコートに戻すも、もうフロリダ州立大の流れを変えられない。八村へのマークは厳しくボールムーブは停滞。ガード陣がドライブで突っ込むという単調な攻めになり、これがディフェンスにも悪影響を及ぼす。

残り1分36秒、時間がないゴンザガはオールコートでプレッシャーをかけるが、ロングパスを通されてしまう。ファウル覚悟でシュートを止めにいくが、バスケット・カウントを許し、さらにはそのファウルがフレグラントファウルと判定される。このバスケット・カウントからの一連の流れで6点を失い、最終スコア60-75でゴンザガは敗れた。

カレッジ2年目の八村、収穫と課題

八村はチームハイの16得点を挙げ、5つのオフェンスリバウンドを含む9リバウンドと2ブロックを記録。アクシデントを受けての先発出場ながらチームで一番の輝きを放っていた。だがその一方で、後半の勝負どころでオフェンスに絡めなかったのも事実だ。打開する力はあったがボールを呼び込めず、ガード陣の苦しい攻めを眺めることしかできなかった。

そういう意味では、八村を先発に据えた後に、ベンチから流れを変えられるシックスマンが出てこなかったのが敗因となった。ゴンザガはスターターの5人全員が30分以上の出場、ベンチから出場したのは3人のみ。一方でフロリダ州立大は11人が出場してタイムシェアを徹底。6-30とベンチポイントの差が顕著に表れた。

昨シーズン、八村は日本人として初めてNCAAトーナメントに出場したものの、プレータイムはほとんど得られなかった。だが今シーズンはシックスマンという地位を確立させ、スタッツも飛躍的に向上した。ベスト16敗退は不本意な結果だろうが、絶大なインパクトを残した八村への期待は今まで以上に高まる。