文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

圧巻のパフォーマンスでSR渋谷を撃破

シーホース三河はアウェーのサンロッカーズ渋谷戦を2つとも勝利し、連勝を12に伸ばした。日曜に行われた第2戦、2本の3ポイントシュートを含む9本のフィールドゴール、6本のフリースローのすべてのシュートを成功させ、ゲームハイの26得点を挙げた比江島は圧巻の活躍だった。

9得点に終わった第1戦の「消極的な印象が自分の中ではありました」という課題から「最初のマッチアップは伊藤(駿)さんがついてきたのでポストアップを狙っていこうと。そこで良いリズムになっていきました」と、身長のミスマッチを果敢に突くことで4得点2アシストを挙げ、チームに勢いをもたらした立ち上がりを振り返った。

比江島の『個』の力がSR渋谷撃破の一因になったのは間違いない。特に相手に精神的ダメージを与えるような、インパクトの強い得点が目立った。第3クォーター残り3分38秒、三河はオフェンスリバウンドを保持し、ノーマークでボールを受けた比江島は3ポイントシュートを沈め50-45とリードを広げた。SR渋谷は直前のオフェンスで3ポイントシュートを外し、逆転のチャンスを逸していただけに、この1ポゼッションでプラスマイナス6点分の重みがあった。SR渋谷はタイムアウトを要求するも立て直せず、自慢の堅守が崩壊。比江島の『一撃』はそれほど大きな精神的ダメージを与えるものだった。

ミスによるストレスを発散させるダンクシュート

「スティールだったり、リバウンドやアシストなど、勢いを与えるプレーが今日はできたと思います」と言うように、比江島は26得点だけでなく、6リバウンド7アシスト5スティールという圧巻の数字を残した。この数字を見ただけでも、試合でどれほどの影響力があったかが分かる。

だが、試合後の比江島は首をひねる。5つのターンオーバーを犯しており、そのミスのせいで喜びが半減していたのだ。「シュートは全部入ってるイメージがあったんですけど、その分ターンオーバーが多かったので、乗りきれてはいなかったです。自分の中ではミスしたイメージのほうが強いです」

この試合比江島はワンマン速攻からダンクシュートを決めた。ダンクについては「常に狙っている」と話したが、「ターンオーバーをした後でフラストレーションが溜まっていたので、その発散の意味でも(笑)」と、ミスを払拭する意味合いが含まれていたことも明かした。

確たる自信はピンチに動じない心の強さにつながる

比江島の活躍もあり、三河は最終クォーター残り6分30秒の時点で18点のリードを奪った。そのまま三河が押しきるかに思われたが、SR渋谷の猛反撃を受けて、残り19秒で1ポゼッション差まで詰め寄られた。

それでも比江島は「向こうが3ポイントシュートを決めたら同点になるっていうシーンはなかったと思うし、ファウルも5個溜まってたのでそんなに焦りはなかったです」と言う。相手のチームファウルが5に達している以上、自分の仕掛けで最低でもフリースローは得られる。さらりと発した言葉から、そんな自信が感じられる。確たる自信はピンチに動じない心の強さにつながる。追い上げられた時の心境も「圧倒的に有利だったので、栃木の時のような焦りはなかったです」と説明した。

この「栃木の時」とは、昨シーズンのチャンピオンシップ、栃木ブレックスとのセミファイナル第3戦のことを指す。圧倒的に有利な状況だったが、ダブルヘッダーの疲労が判断力を鈍らせ、アウェーの環境で冷静さを失った比江島のミスもあり、栃木に逆転負けを喫した。

その苦い記憶を糧にした比江島は、押しも押されぬ日本のエースへと成長した。チームの核をなす比江島がいる限り、三河の安定した強さはなくならない。