文=丸山素行 写真=鈴木栄一、B.LEAGUE

「ピック&ロールからのスペーシングがすごく良い」

新潟アルビレックスの勢いが止まらない。3月3日と4日には東地区首位を走るアルバルク東京を相手に連勝を収め、さらに先週末の横浜ビー・コルセアーズ戦では3点差、4点差と終盤までもつれた接戦を制し、今シーズン最長の5連勝をマークしている。

この連勝は司令塔である五十嵐圭を抜きにしては語れない。得点もアシストも伸ばしているが、それ以上に劣勢をはねのける3ポイントシュートや、終盤の大事な時間帯でのゲームメークなど、数字では表れない部分での貢献が大きい。

本人は好調の要因としてスペーシングの良さを挙げる。その副産物として日本人選手の得点が伸びていると分析した。「ピック&ロールからのスペーシングが今すごく良いです。A東京戦はそこからパスアウトして、アウトサイドの3ポイントシュートが確率良く決まりました」 

「自分が切れ込んでいった中で今村(佳太)が合わせてくれたりだとか、 自分たちのオフェンスバリエーションが少しずつ増えています。今まではツーメンゲームの中で僕とダバンテ(ガードナー)がフィニッシュに持っていくシチュエーションが多かったのですが、後半戦に入ってオフェンスのプレーの幅が増え、自然と他の日本人選手の得点が伸びています」

新潟は得点ランキングトップを走るガードナーを擁するが、エースに依存し日本人選手の得点が伸びないことが昨シーズンからの課題だった。だが現在では「ダバンテにダブルチームに行かれることが多く、そこからアウトサイドに展開した後のシュートを決め切れていることが自分たちの強みになっている 」と、理想的なオフェンスを体現できていると五十嵐は自信を語る。

頭角を現す若手とベテランの安定感で連勝

新潟は天皇杯の中断期間明けから連敗なしの9勝5敗。特に2月のバイウィーク以降は絶好調だ。この期間の準備が好調を呼び込んだと五十嵐は言う。「バイウィーク中にもう一度、1on1のオフェンスやディフェンスの細かいところを確認しました。そこから今村が積極的に攻守ともに仕掛けてくれるようになりました。ダバンテにかかる負担をどれだけ日本人選手がカバーできるかというのが後半戦の自分たちの課題で、一人ひとりの意識が変わってきてるというのが今の勝ちにつながっているのかなとは思いますね」 

五十嵐が言うように、22歳と若い今村の成長は目を引くものがある。もともとの高いディフェンス力に加えて、オフェンス面でも自信を持ってシュートを放っている。A東京戦では2試合で37得点を挙げるなど勝利の立役者となった。

それと同時に、A東京とのゲーム2では35歳の城宝匡史が17得点を挙げ、横浜のゲーム2では34歳の池田雄一が試合を決定づける劇的な3ポイントシュートを沈めた。ベテランの安定感と若手の台頭、新外国籍選手のフィットなど、チーム状態が良いことは明らかだ。

「ラモント(ハミルトン)が加入して、チームの中でのスタイルをより確立している状況です。他の若い選手ものびのびやりながら自信をつけているという部分では、今チームとしてすごく良い方向に向かっていると感じますね」

37歳で再認識する「やっぱりバスケットって面白い」

新潟をまとめる五十嵐は、若く見えるがチーム最年長の37歳だ。それでも平均出場時間は31.5分(リーグ2位)と年齢を感じさせない。昨シーズンは平均30分を越え、「正直、疲れました」と苦笑していたが、1つ年齢を重ねた今シーズンも状況は変わらない。

タフな状況が続くが、それを上回るモチベーションで戦っているのが今の五十嵐だ。「身体はしんどいですが、いろんな環境の変化とともに、あらためてやっぱりバスケットって面白いし、もっとうまくなりたいという思いが続いています。折茂(武彦)さんという大先輩もいるし、長く現役でありたいなとは思いますね」

現在新潟は19勝23敗で中地区4位で、2位の三遠ネオフェニックスを2ゲーム差で追っている。チャンピオンシップ進出、そしてその先にある優勝を目指す新潟の中心には、プロ11年目を迎えても色褪せない、バスケの楽しさを感じる五十嵐がいる。