「実力で上がったB1で結果が残せていないのは悔しい」
谷直樹と松崎賢人は、西宮ストークスの前身である兵庫ストークスが創立された2011年に、1学年下の道原紀晃は翌年に入団。3人とも草創期からストークスを知る選手たちだ。当時のJBL2からスタートしたストークスは創設3季目の2013-14シーズンに、トップカテゴリーのNBLに昇格。しかしシーズン中に25連敗を喫し、最終的な成績も9勝45敗と惨憺たるものだった。
「あの時は25連敗している最中も含めて、勝てる気がしなかった。JBLがNBLに変わるタイミングで、実力での参入ではなかったし、負けても仕方がないやろという感じがあったのも正直なところ。でも今シーズンは、昨シーズンにB2で優勝して実力でB1に上がった過程があるので、そこで結果が残せていないのは本当に悔しい」(松崎)
「あの頃は身体面でも技術面でも全く勝てる気がしなかった。今シーズンのB1でも結果が出ていませんが、勝てるチャンスがあるゲームもあったし、全くかなわないとは感じません」(道原)
「今は自分たちがもう少し上手くできていれば勝てていたんじゃないかという試合も多い。その結果を得るために、みんな向上心を持ってやっています。NBLの初年度に比べればファンの方も、もっとやれるんじゃないかと期待されていると思います。そういう意味でも、あの頃とは違います」(谷)
ここまでチームが結果を残せていない要因を訊ねると、3人は異口同音に同じ内容のことを話す。
「開幕前はもうちょっとできるかなと思ってシーズンに入りましたが、実際には厳しい状況になっています。惜しい試合を落とすなど、接戦に勝てない勝負弱さがあることは否めません」(谷)
「自分たちのミスから自滅して、勝てる試合を落としたり。そういうことが多かった。それが、一番のポイントだと思います」(松崎)
「勝てるところでしっかり勝っていたら、西地区内でも競り合っていただろうし、この時期でもプレーオフ争いに絡めていたと思う。それだけに、悔いが残ります」(道原)
「絶対に下を向かず、みんなで前を向いて頑張ろう」
下位に低迷する現状では、チーム内がバラバラになってもおかしくはない。しかし今のストークスは決してそんな状況にはないと、キャプテンの目線から谷は言う。「勝てなくて、みんなの気持ちまで沈んだ時期もありました。だけど『そういう気持ちでやっていても何も変わらない』という話し合いをチーム全体でして、『絶対に下を向かず、みんなで前を向いて頑張ろう』と一つになってやっています。僕は過去にも勝てないシーズンを経験して、そこでチームがバラバラになっている状態を目にしてきました。今はそうなってはいませんし、今後も絶対にそうならないように、キャプテンとしても気を付けてやっていきます」
現状を打破するために改善すべき点はいくつもあるが、チームとしてその最たるものはディフェンスだと彼らは感じている。
「多く得点を取れるチームではないので、相手のスコアをいかに抑えるか。チームとしてどう守るかを、もっと突き詰めていかないとけない」(谷)
「負けている試合ではディフェンスが引いてしまって、ソフトな展開になってしまっています。今までは一人の選手の出場時間が多くて終盤に疲れてしまい、第4クォーターにやられてしまうことが多かった。戦術の部分ではありませんが、試合に出ていないメンバーがもっと頑張って、試合に出られるほどの実力をつければ、プレータイムがシェアできる。そうなれば、短い時間でもっともっとアグレッシブにプレーできるはず。試合に出ていないメンバーの底上げができればチームは変わると思います」(松崎)
後半戦に入って2名の外国籍選手が入れ替わり、富山グラウジーズから岡田優が加入。新たなプレーヤーが加わり、戦術面でもテコ入れがなされるなど、チームは前半戦とは違う形に変化した。
「選手の入れ替えがあって、最初にキャム(キャメロン・リドリー)が来た時に、シーホース三河戦で大金星を挙げられました。これで雰囲気が変わるかなと思いましたが、練習を重ねるごとに噛み合わない部分も出始めた。そこにハーバート(ヒル)と岡田さんも加わって、シーズン途中での加入なのでプレーが合わない部分はありましたが、チームとして機能するようにみんなでやっている状況です。新しい選手を加えて、今後の試合でどう勝っていくか。そこでまた違ったストークスが見せられると思います」(松崎)
「新しい選手が入ってきてくれたことを好転のきっかけにしたい。選手同士はプレーしていく中で分かりあえることも多いので、試合を重ねるごとに良くなっています。それを続けていくしかない」(谷)
道原は後半戦になってポイントガードへとポジションを変更。そのことが本人にもチームにも刺激を与えている。「自分にとって良い経験だと思います。これまでは自分がシュートを打つことばかり考えていましたが、今は仲間がいかに得点できるかを考えるようになりました。バスケットに対する考え方、コート全体の見え方も変わってきましたね。ポイントガードでプレーするにあたってはテンポを大事にしたい。今までのストークスもそれを大事にしてきたので、しっかり遂行したいと思っています。それと同時に、自分の武器はやはりシュートだと思うので、打つ回数を増やして、成功率を高めることが目標です」
「良いことが待っていると信じてやり続ける」
大学卒業後にストークスに入団した3人は、今や中堅の世代になった。若手だった頃とはチーム内での立場は変わり、責任感も増した。
「若手のころは好き勝手にやっていて、その頃は勝っても負けても、あまり何とも思っていなかった。でも年齢を重ねるにつれて、負けたらその原因を考えるようになりました。若手選手がどんなことで悩んでいるかも、目に入ってきます。そんな時は、自分たちが若手のころにベテランの選手にしてもらったようにアドバイスをしたり、時には厳しい言葉をかけたりもしています。そうすることで、若い選手が育ってくれると思っています」(松崎)
「年齢も上のほうになってきましたし、チームの中での立場や役割を理解してやっているつもりです。若いころは先輩方に自由にさせてもらっていて、当時は負けてもヘラヘラしていたこともありましたが、今は重く受け止めています。キャプテンとしても、もっとできることがあるんじゃないかと考え込んだりもしますし、責任を感じてやっています」(谷)
「昨シーズンとは真逆のシーズンなのでしんどいですけど、僕は兵庫の頃からここにずっといる。以前にもこんな厳しいシーズンを経験したことがあります。それを若い選手に伝えて、今後への糧にしていきたい」(道原)
キャリアを重ね、背負うものも増えた。一つの勝利、一つの敗戦に対して感じる重みも、若い頃とは格段に違う。そんな彼らが自らに課す、シーズン終盤戦にすべきこととは──。
「一プレーヤーとしては、もっと得点を取る。キャプテンとしてはシーズン終盤に向けてプレーオフも考えていかないといけないので、チームがバラバラにならないようにしていく。そこに向けてもチームの志気が下がらないようにすることが僕の仕事だと思っているので、それをやり続けたい」(谷)
「絶対にB1に残留することが目標。勝つ姿勢を見せることを大事にして、たとえ負けていても応援したくなるようなチームになれば、自ずと結果もついてくると思います。そのためには残りの全試合で、一人ひとりが力を出し尽くさないといけない。勝てていないチームが一瞬でも気を抜くと、すぐにダメな方向に流されていく。一つひとつを大事にして、チーム全員でがむしゃらに勝ちを取りに行く姿勢を見せることが、今後の僕たちの仕事だと思う」(松崎)
「レギュラーシーズンのゲームはまだ残っていますし、その後にもプレーオフに回る可能性がある。最後までモチベーションを保っておかないと、チームが良い形で終われません。そのために、どのチームもどの選手も同じだと思いますが、各々がステップアップできるように日々練習をすることが大事。毎日の練習でやっていることを信じて、その先に良い結果が待っていると信じてやり続けます」(道原)
ストークスが誕生したのは2011年。あの頃はチームも、プレーヤーとしての彼らもヨチヨチ歩きだった。谷、松崎、道原の3人は、ともに成長を重ねてきたチームの危機に敢然と立ち向かう決意だ。
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