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ベルが戦線離脱した15試合、王者が10勝5敗と失速

王者ウォリアーズがロケッツに0.5ゲーム差の2位に甘んじているのは驚きだ。いくら競争の激しい西カンファレンスでも、トップはウォリアーズで決まり──というのが開幕前の予想だったのだから。過去の3年間、レギュラーシーズンの成績は67勝15敗、73勝9敗、67勝15敗。ところが現在は49勝14敗で、まだ19試合を残している。1敗で乗り切ることは考えづらく、ここ4年間では最も低い勝率となりそうだ。

ロケッツは確かに絶好調だが、それを寄せ付けないだけの強さはウォリアーズにはもうないのかもしれない。勝利に飽きた? 主力選手の老朽化? それともウォリアーズのスタイルが古くなりつつある? それらの問いにウォリアーズの選手たちは『NO!』と答えるだろう。その中にはルーキーのジョーダン・ベルもいる。

ベルは2017年ドラフト全体38位指名の選手。前評判は決して高くなかったが、ドレイモンド・グリーンを思わせるエネルギッシュなプレーですぐさま評価を勝ち取り、スター軍団のウォリアーズでも頭角を現した。成功しているが変化に乏しいチームにとって、こういう活力に満ちた若手の台頭は大きな刺激となる。

だが、身体を張ったエネルギッシュな守備と思い切りの良いダンクでチームに貢献していたベルは、1月15日のキャブズ戦を最後に足首の炎症で1カ月半の戦線離脱を強いられた。この時点でのチーム成績は36勝9敗で、ロケッツの30勝11敗を大きく上回っていた。ところがベルを欠いた15試合でウォリアーズは10勝5敗と失速。その間にロケッツは17勝2敗で首位に立った。

2月末にベルが復帰した後、チームは敵地でのニックス戦、ウィザーズ戦、ホークス戦で3連勝。ベルはプレータイムを制限されているが、休んでいた分までハッスルしてチームに勢いを与えている。まだ『試運転』といった感じだが、3月4日にはGリーグのサンタ・クルス・ウォリアーズに派遣され、キャリア初のGリーグでのプレーを経験。ゲーム勘を取り戻しつつある。

過酷なNBAの1シーズンをフルに戦うのは、いくらベルが頑強な身体の持ち主でも簡単ではない。ステフィン・カリーを始め実績豊富な『スーパーチーム』の主役たちは、流すところは流してプレーオフに向けて調子を上げていく術を心得ているが、ベルにはその経験がない。この時期にまとまった休養が取れたのは、プレーオフに向けてむしろプラスと考えるべきだ。

「僕は目標を設定しないんだ」とベルは言う。「それは自分の成長をどこか制限してしまうような気がするから。目標を設定して、それを達成したら、やっぱりペースが落ちてしまうよね。僕はそれが嫌だから目標を設定せず、ただ自分のベストを尽くすんだ」

その言葉が表す通り、23歳のベルは成長への貪欲な意欲を持っており、ウォリアーズ加入からの半年で貴重な経験を数多く積み、プレーヤーとしても大きく成長している。思わぬ『掘り出し物』に喜ぶ指揮官のスティーブ・カーだが、彼は同時にベルがもっと成長すると見込んでいる。「私の経験からすると、選手が最も成長するのはルーキーシーズンと2年目のシーズンの間なんだ。この調子だとジョーダンがどれだけ成長するか、期待してしまうよ」

王者ウォリアーズの最大の敵はロケッツでもキャブズでもなく自分たち自身の『マンネリ』。それを打破できるのはベルのような新しい力だ。ベルが調子を上げる終盤戦、ウォリアーズとロケッツの順位争うがどう展開するか、両チームのファンならずとも楽しみだ。