川崎ブレイブサンダースを変革する師弟コンビ、北卓也&佐藤賢次(前編)「お客さんの様子に興味津々でした」

川崎ブレイブサンダースを変革する師弟コンビ、北卓也&佐藤賢次(前編)「お客さんの様子に興味津々でした」

2020/06/10

北卓也

今シーズンの川崎ブレイブサンダースは、Bリーグで31勝9敗と中地区トップ、また天皇杯では決勝進出を果たし、リーグ随一の優勝候補の地位を取り戻した。この復活の第一歩は北卓也がクラブ史上初のGMに就任したことにあり、コーチ陣、選手ともにこれまでにない積極的な補強が行われた。この陣容を、新ヘッドコーチの佐藤賢次がしっかりまとめ上げたことでチームは勢いを取り戻した。新体制1年目としては順調なスタートを切った師弟コンビが、変革のシーズンを振り返る。

「コーチの3人がチームを組み立てるバランスが良かった」

──まずは北GMにうかがいますが、自身の後任となった佐藤ヘッドコーチの采配ぶりについてどう評価していますか。

北 僕がヘッドコーチ1年目の時はリーグ下位だったし、初めてのシーズンが大変なことは理解しています。シーズン途中で終わってしまいましたが、地区優勝と結果を出してくれたことは評価できます。また、ヘッドコーチ経験者の勝久ジェフリーと穂坂健祐が、アシスタントコーチとしてすごくサポートしてくれました。賢次を中心にコーチの3人が、互いに足りないところを補ってチームを組み立てていくバランスがとても良かったですね。

──佐藤ヘッドコーチは、自身の手腕についてどう振り返っていますか。

佐藤 まずはお褒めいただきありがとうございます(笑)。振り返ると本当にいろいろなことを経験したシーズンでした。大ケガにインフルエンザ、遠征から戻ったらアリーナが水浸しになっていたり。それでもチームみんなでまとまり、一つひとつ真摯に向き合って戦うことができました。結果だけでなく、積み重ねの過程でもしっかりできたのは良かったです。ヘッドコーチ経験者を外部から入れたのは僕のリクエストでした。ヘッドコーチの経験がないのは自分の弱さで、1年目から何もかも上手く行くわけはないと思っていて、そこをサポートできる経験者に来てほしかったんです。

北 希望を聞くうちにヘッドコーチ経験者だったり、英語が話せるといった部分が出てきました。そこで賢次が一緒にやりたいのは誰かを選んでもらい、交渉しました。今は企業チームではありませんし、時代の流れもあって外部からコーチを迎えることは自然な流れでした。

──シーズン中、2人はどれくらいの頻度でミーティングなどのコミュニケーションを取っていましたか。

佐藤 週に1回の定例ミーティングでいろいろ教えてくれるのでやりやすかったです。試合当日に話すことはあまりないです。

北 試合前が大変なのは分かっていますので、私から話しかけたりすることはありませんね。また、終わった後も事務的なことは言いますけど、試合の内容については何も言わないです。現場の責任者は賢次ですし、何か言いたいことがあれば定例ミーティングで伝えました。あとはほぼ毎回、チーム練習を見に行っていたので、何かあればそこで聞いていました。ただ、チームは基本的に上手く行っていたので、そこまで言わなければいけないことはなかったです。

──ケガ人が多く出て苦しかった時も、特別に何か話したことはなかったですか。

佐藤 何かありましたっけ?(笑)。北さんは「好きなようにやれ」と言ってくれて、実際に僕がやりやすいように気を使っていただいていると感じていました。「なんでタイムアウト取らなかったの?」とか「なんで、あそこで変えなかったの?」など、采配について聞かれたのは1回か2回だったと思います。

佐藤賢次

「とにかくボールを動かし、みんなが合わせて動く」

──ヘッドコーチから見て、今シーズンのチームはやりたいバスケットボールがどれくらいできたと感じていますか。

佐藤 まずディフェンスを作り直したくて、2人のアシスタントコーチと話し合いました。以前からあるものにより細かい部分を取り入れ、2人が持ってきた新しいアイデアも加えて形を作り、それを選手たちが見事に表現してくれました。最後、少し数字は落ちてしまいましたが満足しています。オフェンスはもう少しやれたかもしれません。開幕前、オフェンスは最初は苦しむけど徐々に上手く行くと言っていて、実際に得点も伸びて連携も良くなっていました。ただ、ターンオーバーの数は下がりきらなかったです。

──オフェンスでは、ビッグマンのジョーダン・ヒースとニック・ファジーカスによる3ポイントシュートが大きな武器になりました。もともとヒースは大学時代からシュートの半分が3ポイントシュートという選手ですが、ファージカスはこれまでになくアウトサイドから狙っていました。これは最初から狙っていたものなのか、次第に確立されていったものですか。

佐藤 J(ヒース)は最初からシュートフォームがきれいで、シュートが上手いと思っていましたけど、あそこまで入るとは予想していなかったです。だからといって、3ポイントシュートをどんどん打てと指示を出したことはありません。やりたかったのは相手の守備が準備する前に仕掛けてアドバンテージを作り、ゴール下のイージーシュート、もしくはオープンなシュートを打つことです。結果として、とにかくペイントタッチをしてボールを動かし、みんなが合わせて動く中でビックマンが3ポイントシュート打つ形になりました。ビックマンの外が増えることでゴール下にスペースができ、ガード陣のレイアップが増える好循環となりました。

──北GMは初めてのフロントで、手探り状態でのスタートから1年が経過してどんな手応えを感じていますか。

北 手応えはないです(笑)。ただ、現場の時は頼むばかりだったのがGMとなり、事業面について分かってきたところはあります。チームを強くするためにはお金が必要ですが、本当にそれが必要なのか確認することも大事です。どちらの考えも分かるので板挟みになる時もありますけど、そこは話し合いながら解決していくことだと思います。

──北GMはホームゲームになると開場からアリーナの入口に立ってファンに挨拶をしていました。誰でも気軽に話しかけられる強化責任者というのは異例ですが、どんな理由から始めたのですか? それこそ厳しい言葉を投げかけられる可能性もありますよね?

北 私はずっと現場でしたので、ベンチから試合を見たことしかありませんでした。長くやっていましたが、試合前の入場口がどんな様子なのか見たことがなかったんです。ファンの方たちはどんな様子なのか、試合開始の何分前にどれぐらいやって来るのか。クラブスタッフだけでなく、ボランティアの方々やユースの子たちが実際どのように手伝ってくれているのか。飲食ではどういうものが売られているのか。すべてが私にとっては初めてで、興味津々でした。ファンの皆さんとはいろんな話をしましたけど、昨シーズンと比べて今シーズンは上手く行っていたし、「優勝しましょう」みたいなポジティブな話ばかりでしたよ。

──興味津々なのは分かりましたが、1カ月もすれば把握できますよね。それでも続けた理由は何ですか? 北GMと一緒に写真を撮ったファンの数はすごく多かったと思います。

佐藤 確かにたくさん写真を撮られていますもんね(笑)。

北 これがだんだん減ると思うと寂しさはあります(笑)。正直、途中でいなくなりづらくなったのはありますよ。でも、ファンの方の声を聞けるのは本当にありがたいです。あそこにいなかったら何するのとなった時、特にやることがないですしね(笑)。

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