文・写真=鈴木栄一

劣勢の試合から収穫を拾うシーズンベストの働き

レバンガ北海道は代表戦によるブレイクに入る直前の試合となった2月16日、17日の川崎ブレイブサンダース戦で連敗を喫した。第1戦は前半に20点以上の大量リードを奪いながら、そこから崩れる痛恨の逆転負け。そして第2戦は前日の勝利で勢いに乗った川崎を止められず、第3クォーター終盤に18点を追いかける展開となってしまう。舞台はアウェーのとどろきアリーナ、さらに外国籍選手を1人欠く苦境であることを加味すれば、このまま大差で負けてもおかしくない流れだった。

しかし、ここから北海道は猛烈に追い上げ、残り4秒には1点差にまで肉薄。最終的に79-82で敗れたが、水野宏太ヘッドコーチが「試合の序盤、相手に流れを持っていかれた中、そこで我慢して流れを戻す戦いが最後までできたことは、チームの成長につながります」と振り返ったように、成果を得られた一戦となった。

どんな劣勢になっても気持ちを切らさずに粘った北海道を牽引した一人が松島良豪だった。約26分の出場、10得点6リバウンド9アシストとすべて今シーズンベストの数字であり、松島の躍動があったからこそ北海道は敗れた中でも、指揮官が「価値あるもの」と語る収穫を得られたと言っても過言ではない。

「20点が安全ラインじゃない」東地区の過酷な現実

「ベンチメンバーが最後まで出ていたことに関しては価値ある試合でしたが、やはり前日に僕らは20点リードからやり返されて敗れました。今日は僕らがやり返さないといけない試合でしたが、エネルギーがもう一歩必要でした。こういう試合は東地区では多々ある。20点が安全ラインじゃないと、東地区の皆さんは分かっていると思います」

シーズンベストの数字については「個人的なスタッツはうれしかったですけど、どちらかと言うとこのスタッツでも勝ててないことが悔しいですね。でも収穫もあったと思いますし、全然後ろ向きにならず、前を向いてまた頑張っていきたいなという気持ちしかないです」と語る。チームの戦いぶりと同じく、手応えと反省を口にした。

また、ベンチからチームに勢いをもたらす活躍という点では、前日に川崎を逆転勝ちに導いたシックスマン、藤井祐眞の存在が刺激になったと続ける。「個人的にあまり喋ったことはないですけど、相手の同期の藤井くんがものすごく頑張ってチームを控えから鼓舞していたので、とても刺激になりました。僕も負けたくないなと思いました」

「一つひとつの仕事を重ねて、チームが勝てばいい」

松島と言えばこれまで司令塔としてプレーしていたが、今シーズンは開幕直前にベテランの伊藤大司が加入。先発の多嶋朝飛と実績のある2人がゲームコントロールを担うことで、2番ポジションとして起用されることが大半となっている。

この新しい役割について当初は葛藤もあったと語る松島だが、今ではしっかり切り替えができている。そして、コンボガードでプレーすることが自身のため、そして何よりもチームのためになると現在は考えている。

「ポイントガードをやりたい気持ちが前はありましたけど、今はないですね。今はチームのために自分ができること、オフェンスリバウンドだったり、ディフェンスでプレッシャーをかけたり、シュートを決めたりする。こういった一つひとつの仕事を重ねていって、その結果、チームが勝てればいいと思います」

「正直、伊藤選手の加入もあって、昨シーズンよりプレータイムも減っています。そう考えた時にガードだけをやるのではなく、チームに求められていることをやれば、自ずとプレータイムも伸びてくるんじゃないかなと思いました。なにせシーズン前半戦の自分のプレーは消極的でした。すごい外国籍選手が入ってきて、そこばかり見てしまっていました。後半戦はそこを気にせずに、僕自身も「もうちょっとアタックしていいんじゃないかな」という気持ちが年明けの川崎戦から出てきています。これは川崎さんのおかげでもありますし、今後残りの20数試合、続けて積極的にアタックしていきたいです」

根本にあるのは「みんなでハードに、全員でバスケ」

これで19勝19敗の五分となった北海道。そして、チャンピオンシップ出場を果たすための起爆剤として期待したいのが、チームに合流しているものの川崎戦では登録の関係から出場できなかった新外国籍選手のディジョン・トンプソンだ。まだ一緒に練習してわずかだが、松島は北海道のチーム戦術との相性は抜群と確信している。

「もともと高校の時にポイントガードをやっていた、ものすごくパスが上手な選手です。僕らの起点は4番の選手になることが多いので、これからフィットしてくると思います」

ブレイクを挟んでの終盤戦に向け、次のような頼もしいメッセージをくれた。「これからも、チームのやることは変わらないと思います。僕らの根本にあるのは、みんなでハードにプレーして戦うことと、全員でバスケをすること。中断明け、最初となる3月5日、6日の西宮戦はホームゲーム。札幌でやるのは1カ月ぶりだと思うので、楽しみにしていてほしいですね」

試合中の闘志溢れるプレーに加え、試合以外での『劇団松島』のリーダーとしてのパフォーマンスでもファンを楽しませている松島。北海道がさらなる人気と実力を備えるためには、彼の様々な面での貢献が欠かせない。