取材=古後登志夫 構成=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE、滋賀レイクスターズ

昨シーズンの滋賀レイクスターズは後半戦に怒涛の快進撃を見せ、一時はリーグ最下位に沈む苦境を抜け出してプレーオフなしでの残留を決めた。ショーン・デニスを新たな指揮官に迎えて臨んだ今シーズン、序盤戦に6連敗、そして先週まで12連敗という大きな連敗を経験しながらも、チームリーダーの並里成はあと一歩でチームが噛み合うと手応えを感じている。

当然、チャンピオンシップ進出争いに絡むことができていない現状には満足していないが、一足飛びにすべてを望んでも事態が好転しないことも理解している。並里にチームと自身の現状と、終盤戦に向けた意気込みを聞いた。

「自分たちのやるべきことははっきりしている」

──先週末の大阪エヴェッサとの第2戦に勝って連敗を止めました。

やるしかないなと感じていましたし、僕が身体で表現することが大切だと思っていました。チームが苦しい時にリングに向かっていく姿勢が、チームのためになると。ゴールに向かう姿勢を見せられたかなと思います。

──ここまで12勝26敗という成績は別として、チームの現状をどう見ていますか?

コーチのやりたいことがまだ浸透していない感じですね。それは練習でも試合でも言えることで、やるべきことを完全に遂行できていないのが現状です。オフェンスではポジションの位置や仕掛けるタイミング、ディフェンスもポジションだったりローテーションだったり。よく指摘されるのはゾーンで誰がどの位置から出るのが決まっているんですが、そこで混乱してしまったり。ヘッドコーチの求めることはシンプルなんですが、やることが多い。それをまだ遂行できていないです。

連敗が続いていたんですが、そのほとんどが強豪相手の試合でした。そこでクロスゲームもあったりして、結果はついてこないけどチーム自体がレベルアップしているとは感じます。自分たちのやるべきことははっきりしている。だからこそ勝ちたいという気持ちは強いし、負けるとやっぱりガッカリします。なので勝ちたいですね。

──昨シーズンも残留争いに巻き込まれました。比較すると何が違いますか?

昨シーズンより良いのは間違いないです。今は僕らが悪いと言うより相手が良いという感じで、自分たちの踏むべき段階を踏んで少しずつですが登っている感覚があります。昨シーズンはどうしたらいいか分からない中でやっていたので。今は選手が受け身に入っているのが問題ですね。一人ひとりの気の持ちようなので、そこは今みんなで前を向こうと話しています。

自分たちのやることを全部完璧にやるのは難しいですが、もっと効率良く、できることをどんどん増やしていければいいと思います。

──並里選手自身のパフォーマンスについてはどう評価していますか?

安定させたいですね。ディフェンスもオフェンスもそうですけど、ゲームを通して安定させたいのはオフェンスです。試合の中で得点の入らない時間帯がすごく長い時があるので、そこでもっと良い判断をしたいです。

──アシストは昨シーズンの4.2からキャリアハイの6.9に伸びています。リーグでも2位の数字ですが、これだけアシストが伸びているのは良い判断ができているからでは?

それもちょっとはあると思いますけど、コーチがすごくスペーシングを大事にしていて、チームとして僕の持っているものを生かそうとしてくれているので。空いている選手にパスを出したり、自分としてはシンプルなことを自然にやっているだけです。ただ、うまく行かない時にどうするのか、チームにもっと明確に伝えられたらと思います。

日本代表には「もっと早く選出されたかった」

──日本代表の24人の予備登録メンバーに選ばれました。これについてはどんな思いですか?

もっと早く選出されたかったです。自分としてはディフェンスもできてクリエイトもできて、チームも誰よりも引っ張っていける自負があります。「日本代表で誰ができるんだ」という話になった時に、シュートが上手い人、ディフェンスができる人、ゲームメークができる人はそれぞれいますが、自分がそれを兼ね備えているという自信はあります。

まだ候補に入っただけです。チームも勝っていないしプレーオフにも出ていないし、他の国から日本に来たばかりのコーチからしたら、予選が始まっているという状況で、僕を招集するというチョイスはすごく難しいのだと思います。

──それでも予備登録に入ったのは大きな前進だと思います。現在28歳ですが、向上心はまだまだ衰えないですよね。

昔より向上心がありますよ。今がちょうど良い状態だと思います。経験を積んで自分自身に余裕が出てきて、スピードや動きも年々上がってきています。

──父親になったことで意識に変化はありましたか?

それも一つあるかもしれないですね。悩んでいる暇はないし、どんどん前に進んでいかないと。子供が日々成長して、自分も成長しなければと思うんですよね。10年後、20年後に自分の成長が止まって、子供だけ成長するのも納得いかないというか。常に成長していたいです。

前回の琉球ゴールデンキングスとの試合では子供が見に来てくれたんです。今は3歳になって、すごく応援してくれるようになって。カレンダーも分かるようになって、僕が帰って来る日を楽しみにしてたらしいです。そういうのがあるとやっぱりうれしいですよね。

──アメリカでプレーしたいという気持ちはもう完全にないですか?

そんなことはないです。やっぱり順番があって、アメリカより先に日本代表が大事だと思っています。実際に向こうに行って2日か3日のトライアウトで「良い選手だけど、代表には入っているのか?」となれば、「代表経験はないけど契約しよう」とはならないじゃないですか。その度胸があるコーチは本物だと思いますが、それはグレッグ・ポポビッチにしかできない(笑)。だから日本代表という経験をして、次に行きたいと思っています。そのためには自分のプレーの質をもっと上げる必要があるし、滋賀を勝たせるプレーをしなきゃいけないですよね。

「これから終盤戦に向けて自分もすごく楽しみ」

──そうして話は滋賀に戻るわけですね。ここから終盤戦、どんなプレーをしたいですか?

やっぱりリバウンドとルーズボールですね。ディフェンスに限ると思います。そこでどれだけ身体を張れるのかがカギになります。ヘッドコーチが自分たちのやるべきことを明確に示してくれているので、まずはそれについていくこと。それにプラスして、数字に残らないちょっとした考え方が大事で、こういうシチュエーションではこうしてほしい、という話は他の選手に伝えるようにしています。

──それはプレーの決まり事なのか、メンタル面の話なのか、どちらですか?

メンタルの部分ですね。例えばこの前ノブ(長谷川智伸)や(狩野)祐介のシューター陣に話したのは、琉球との土曜の試合の最後のことです。4点差で負けていて残り1分を切ってて、その時に3ポイントシュートが欲しかったんです。トランジションで持っていき自分でシュートにも行ける状況で、シューター陣にパスをしようと思って見ていたのですが、2人は普通に走っていました。ゲームの中でこういう時こそシューターのプライドとして「俺によこせ」という気概が欲しかったです。「もらう気で走ってくれ」ということは言いました。

僕が第1のオプションなので、どうしてもそこを見てしまうことはありますよね。でもゲームの流れとかシチュエーションによって、必ずしも僕じゃなくていい時があると思います。そこをみんなが共通理解して、相手の弱いところを突く攻撃ができれば得点力も上がるはずです。

──中断期間を挟んで、いよいよシーズンは佳境を迎えます。

もう少しでチームはフィットすると思っています。これから終盤戦に向けて自分もすごく楽しみにしています。もちろん、12連敗はもうないはずで、ここから勢いをつけて行きます!

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