文=丸山素行 写真=鈴木栄一
マイナス要素がある中で強豪を撃破
レバンガ北海道は先週末のサンロッカーズ渋谷戦を1勝1敗で終えた。特に第1戦では最高のパフォーマンスを見せ、アウェーで完勝を収めた。チーム2番目の得点源だったグレゴリー・ウィッティントンを失ったにもかかわらず、アルバルク東京やSR渋谷といった強豪から勝ち星を挙げたことは後半戦を戦う上で大きな自信になった。
チームのレジェンドである折茂武彦も、第1戦を終えてこんな発言をしている。「悪いことがあったにせよ、これを本当にプラスにとらえないといけない。こうやって渋谷さんに圧勝できましたけど、これでプラスアルファが自分たちにあると思えば、もっと上を目指せるし、可能性もあると思うのでプラスに考えてやりたい」
このプラスアルファという部分はもちろん3人目の外国籍選手の存在だ。選手のリクルートについて「報告だけは受けますが、選手である以上は他の選手の評価もしないですし、リクルートも一切関与しません」という折茂だが、「外国人が一人いないので厳しい状況であるものの、言い訳にせず来れてるので、今後もっと楽しみになります」と逆境を追い風にとらえている。
観客動員数が好調も「答えなんてない」
先日Bリーグはマーケティングレポートを発表した。北海道は昨シーズンの平均入場者数が2796人(6位)だったが、今シーズンは平均3716人(2位)へ増加している。約1000人の観客増加は、伸び率では堂々の1位だ。
社長の顔も持つ折茂に観客増の要因を聞くと「正直、答えなんてないんですよね」という言葉が返ってきた。「それをやれば集まるのかって言ったら集まらないわけじゃないですか。だから理由なんか分からない。今まで何をやってきたかを挙げて、それを会社のみんなで共有してそれを続けていくことが大切だと思います。我々は地元密着で、選手が休みの日に一緒にバスケやったり、給食を食べたり、子供たちのために活動したりいろんな活動をしています。それがようやく実を結んだと思います」
過去のそうした活動の積み重ねが結果に表れていることは間違いない。だがBリーグになった今、そうしたファンへの活動などは他のクラブも少なからずやっている。ここまで他クラブとの伸び率が違うのは北海道という土地柄も大きいと話す。
「あとはマスコミの方々の力は大きいです。北海道は独自の電波があるじゃないですか、番組も出させていただいて、言ってしまえばおじさんおばさんがみんな知ってるわけですよ。やっぱりテレビの電波に乗っかることは非常に大きいことなので、そういう空中戦だったり。でも地道にやっていかないとこうはならないので、これからも続けていくことが大切ですね」
「大変なことはもう慣れたので(笑)」
北海道は現在19勝17敗と勝ち越しているものの、東地区では最下位となっている。リーグ全体で見れば9位ということを考えれば、東地区がどれだけ激戦区であるかが分かる。
川崎ブレイブサンダース、SR渋谷が東地区に移り、「当初は厳しいのかなという思いはやっぱりありました」と折茂も認めている。「日本人は変わらないにせよ、外国人を2人変えてどうチームが機能するかも分からなかったです。さらに言ってしまえばウチみたいなチームが、予算をたくさん使えるところと戦っていかなきゃいけない現状はちょっと厳しいと思っていました」
それでも蓋を開けてみれば、「マーク(トラソリーニ)もしっかり機能してますし、ダニエル(ミラー)もしっかり踏ん張ってくれてるので今の順位があるのかと」と当初の心配は杞憂に終わり、周囲からも一目を置かれるチームへと遂げている。「想定内か想定外なのか分からないですけど、チームとしては非常に良い傾向にあると思います」と折茂は言う。
その折茂は現役選手、球団の代表取締役、Bリーグ理事という3種の草鞋を履いている。「大変なことはもう慣れたので(笑)、何が大変なのかよく分からないんです」と苦笑を浮かべるも、この大役をこなす術を教えてくれた。
「当然、経営のこともあるのでそこが土台になるものの、選手としての立場もあるのでそこはしっかり切り分けながらやります。そこでもBリーグの理事っていう立場になるので、リーグ全体のことも考えつつ。やっぱりみんな一緒にしないで一つひとつ分けてやっていくことがいいのかな、そうすれば引きずらないです」
どんな逆境に見舞われても、北海道には百戦錬磨の折茂がいる。後半戦はまだ始まったばかりだが、北の雄はチャンピオンシップ進出を一つも疑わず、前だけを向く。
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