今シーズンの千葉ジェッツは28勝12敗、東地区の3位、B1全体でも4位の成績でシーズンを終えた。トップのアルバルク東京からは3.5ゲームの差を付けられたが、直接対決では2勝を挙げている。開幕当初の出遅れを取り戻したチームは特に今年に入って調子を上げ、3年連続のファイナル進出、そして悲願のリーグ制覇に向けて突き進んでいた。ポイントガードの藤永佳昭も、他のチームメートと同じく自分たちの実力への手応えと、だからこそシーズンが途中で終わってしまったことへの悔しさを持っている。ただ、千葉に加入して2年目のシーズン、ポイントガードの3番手の彼にとっては自信を確たるものにする半年間だった。気合いのこもったディフェンスでアリーナを沸かせる藤永は、自身のさらなる成長と千葉での優勝を見据えている。
「ベストディフェンダー賞は狙っています」
──千葉での2シーズン目が終わりましたが、どんなシーズンでしたか? チームは開幕から2勝5敗とスタートダッシュに失敗して、そこから徐々に調子を上げていきました。藤永選手も序盤は少なかったプレータイムを次第に伸ばしていった印象です。
ある程度はチームのことも分かっていたし、結果を残さないといけないと覚悟を持って臨んだシーズンでした。開幕当初はコミュニケーションを取らなくてもできるだろう、お互いに分かるだろういう部分があり、軽い気持ちで入ってしまってディフェンスが悪かったです。オフェンスも課題はありましたが、ディフェンスが噛み合わずに失点が多かった方が大きかったです。
プレータイムが安定していなくても、僕自身のやることは変わりません。ディフェンスをしっかりやって、そこからオフェンスを組み立てるという役割は明確なので、練習からそこはブレていなかったし、やれる自信はありました。あの時期は我慢して、プレータイムが来たらチャンスを生かそうと思っていました。
昨シーズンはほとんど負けなかったので、チームとしても個人としてもマズいんじゃないか、という気持ちはありましたね。それでチームが暗くなった時もありましたが、試合ごとに良くなっていって、最後は練習からコミュニケーションもすごく取れるようになっていたので、最後までやりたかった気持ちが強いです。
──序盤の出遅れを挽回し、きっちりチャンピオンシップ進出圏内につけていました。転機となった試合はありましたか?
大きかったのは年明けにアルバルク東京に連勝したこと。あれは大きかったです。今シーズンのA東京は同じ相手には連敗していなくて、あれが初めてのGAME1、GAME2での連敗でした。ディフェンスも上手く行ったし、あれでみんな自信を取り戻すことができました。そこから上向きになったところでシーズンが終わってしまったので、すごく悔しいです。
──個人的な出来はいかがでしたか? 平均プレータイムは1年目の6.0分から10.4分へと伸びました。
手応えは結構ありました。昨シーズン以上に、自分ができることをチームメート、コーチ陣、ファンの皆さんに証明できたと思います。昨シーズンはディフェンスだけのイメージだったと思うのですが、今シーズンは得点を取ることも意識しました。ポイントガードとして周りを使うのも大事ですが、困った時に自分で点を取れないとガードはダメだと思います。得点できない選手と見られて相手に捨てられて4対5になっては困るので。まだまだ成長しないといけませんが、自分も得点できる選手だと見てもらえました。
──それでもまだ、ディフェンスの信頼感の方が強いと思います。ベストディフェンダー賞は意識しますか?
意識しているし、狙っているんですけど、選ばれている選手に比べるとプレータイムが少ないです。でも、個人賞よりもチームで優勝したい気持ちが強いです。賞にこだわらずチームのためにディフェンスをしていますし、勝つために頑張っているので。
僕のディフェンスはどちらかと言えばスティールとかにも出ないんですよね。自分がプレッシャーを掛けてパスが緩くなってターンオーバーを誘う感じなので、スタッツには残りにくいです。でもベストディフェンダー賞はチャンスがあればもちろん取りに行きたいです。もっと認められるよう頑張ります。
「あの会場でやることがすごくモチベーションになる」
──最近はガードの大型化が進み、173cmの藤永選手はサイズのミスマッチになることも多いですが、そこは気にしませんか?
僕は身長が低いので、その分はフィジカルとスピードで負けられません。でも、ミスマッチと思われるかもしれませんが、プラスになることが多いと証明できれば試合に出られると思っています。ディフェンスもそうだし、オフェンスで自分が出ている間にリードを広げたり、そういうことを何試合も証明していくことが信頼に繋がります。そこは自信を持ってやっています。
──アワードに『ディフェンスで会場を沸かせた賞』があれば、藤永選手が一番かもしれません(笑)。
僕もそう思います。『ディフェンスで会場を沸かせた賞』には自信を持っているので(笑)。ディフェンスで会場が沸くのは本当に気持ちが良いので、それは来シーズンも狙っていきます。最近ではファンの皆さんも僕に期待している感じがするので(笑)。
──藤永選手の契約延長が決まり、来シーズンも富樫勇樹選手、西村文男選手とポイントガード3人の体制になりそうです。序列としては3番手ですが、それを覆してプレータイムを伸ばしたいという気持ちは強いですか?
もちろん試合には出たいし、覆したいです。今シーズンは文男さんがケガをして、2番手になったところでA東京戦を含めてチームが勝てたことが僕には大きかったです。文男さんが戻って来た後も2番手として使われたのは自信になったし、信頼されているとも感じました。2人にないところはディフェンスしかないので、まずはそこで見せていくこと。そこに得点を加えていくイメージです。
本当にどこのチームよりもポイントガードの争いは熾烈だと思うんですよ、このチームは(笑)。2人ともどこに行ってもスタートで出れる選手で、リーグで一番ガードの層が厚いと思います。そこでやれていることは自信になります。
──藤永選手なら他のチームに移籍しても、先発ポイントガードとしてやれるのではないでしょうか?
でも、僕は千葉で優勝したいんですよね。優勝できるチームだとも思っているので。ファンの方が多いし露出も多いので、選手としては知名度を上げられます。僕みたいにディフェンスで見せる選手に、ファンの皆さんが盛り上がってくれて、藤永コールをしてくれるのは本当にありがたいし、選手としての価値も上がっていると思います。毎試合で5000人以上のお客さんが入って盛り上げてくれる、あの会場でやることが選手にとってすごくモチベーションになるので、やっぱり良いチームなんですよ。
──シーズン最終戦は無観客で行われました。お客さんの熱気がないアリーナでの試合はやりづらかったですか?
難しかったですね。ホームゲームでしたが、正直な感想を言えば心細かったです。たとえアウェーで相手チームのお客さんばかりだったとしても、誰もいないよりは見てくれた方がやりやすいです。ブーイングも大事ですよね。例えば宇都宮ブレックスのアリーナなんてやりづらいんですけど(笑)、無観客よりはずっと良いです。
「勝負どころの時間帯に絡む選手でありたい」
──来シーズンは千葉で3年目になります。選手としても28歳で経験も積み、キャリアの一番良い時期を迎えます。
あと数年先、29歳か30歳ぐらいがいいかな(笑)。でも、もう若手ではないので。童顔だから23歳とか24歳とかに見られがちですが中堅なので、チームでも大人の振る舞いをしなきゃいけない立場です(笑)。ポジションもガードだし、自分から意見を出していくことも必要です。チームのことももう理解できているので、どんどん発言していきたいです。
──来シーズンの目標はどこに設定しますか? 富樫選手を追い抜いて先発ポイントガードを狙いますか?
それよりも、勝負どころの時間帯で自分が出ていたい、そこに絡む選手でありたい思いが強いです。プレーで言うと、シュートの確率をもっと上げて、外だけじゃなく切り込んで決められる能力を上げたいと感じています。中に行ってフィニッシュする力は勇樹を見ていてもすごいので、その部分で近づいていきたいです。
あとはポイントガードとして、どのフォーメーションが効くのか、この相手にはこれだ、というのを試合中にもっと早く理解してコールできるようになりたいです。今シーズンはハーフタイム中にコーチやビデオコーディネーターが「これが効いてるよ」と教えてくれたんですけど、それを試合中に自分で判断できるようになりたい。がむしゃらにやるだけじゃなく冷静に、頭を使ったこともコンスタントにできる選手になりたいです。
すぐにできるようになることじゃないので、地道にコツコツやっていきます。場数を踏むことが大事なんですけど、それも今シーズンにプレータイムが伸びたことで出てきた課題なんです。なので、こう振り返るとやっぱり僕にとっては本当に大きなシーズンでしたね。だからこそ最後までやりたかったし、自分が出て優勝したかった。昨シーズンのファイナルは見ているだけだったので、今シーズンはファイナルのコートに絶対に立ちたいという思いでやってきました。その思いでやり続けます。
──今は自宅からあまり出られないと思いますが、何をして過ごしていますか?
マンツーマンでガジュトレをやっています。器具がなくて重さを増やせないし、上げることはできませんが維持はできています。あとは身体を柔らかくしようとヨガをやっています。やれることをとにかくやる感じですね。
トレーニング以外だと、僕は映画好きなのでいろいろ見ています。海外ドラマも好きで『SUIT』のシーズン8を見ています。マイケル・ジョーダンの『The last dance』ももちろん見ていて、やっぱり面白いし、早くバスケしたいと思いますね。あんなに怒られるならジョーダンとは一緒にやりたくないですけど(笑)、それと同時にああいう選手も大事なんだと感じます。
──それでは最後に、来シーズンの開幕を待つファンにメッセージをお願いします。
今シーズンも本当に応援ありがとうございました。シーズンが途中で終わった悔しさを来シーズンぶつけて、優勝を目指してまた戦っていきましょう。一体感を持ったホームアリーナ、相手チームの選手にもっと嫌がられるホームアリーナを作れるように一緒に協力していきたいです。個人としてはさらに安定したプレーをオフェンス、ディフェンスともに見せられるように、そしてお客さんが毎試合楽しめてワクワクするような、来て良かったなと思えるようなプレーをするので、是非応援よろしくお願いします。
プレータイムが増えたことで、今まで見えなかった課題も出てきたシーズンになったようです。藤永選手が千葉でプレーする意味も聞けて、ますます来シーズンが楽しみになりました。ちなみに写真は「ワイルドな感じでお願いします」と依頼して撮りました!#Bリーグ #chibajetshttps://t.co/QvN0eoevhH pic.twitter.com/DRyLaIGNkL
— バスケット・カウント (@basket_count) May 21, 2020
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