スティーブ・カー

「くだらないことが身に降りかかるから給料をもらう」

現役時代にブルズの『王朝』時代を経験したスティーブ・カーは、マイケル・ジョーダンとともにスリーピート(3連覇)達成に貢献した。その彼が2014-15シーズンから指揮を執るウォリアーズは、5年連続NBAファイナル進出、3度の優勝、歴代最多の年間73勝を達成するなど、NBAの歴史に刻まれる偉大なチームとなった。

黄金時代を築いたとはいえ、ウォリアーズを取り巻く環境のすべてが順風満帆だったわけではない。カーとドレイモンド・グリーンの衝突しかり、勝っているチームには批判や中傷も付きまとう。

ただ、それはカーにとってブルズ時代に経験済み。ポッドキャスト番組『Runnin’ Plays podcast』に出演したカーは、当時のチームメートだったデニス・ロッドマンの『格言』の影響を受けていることを明かした。

そのロッドマンの発言は、「試合には無給で出場するけれど、くだらないことが身に降りかかるから給料をもらう」というもの。

カーはこう説明する。「給料をもらえるのは、バスケットボールをプレーするからではなくて、トレードされたり、契約を解除されたり、ブーイングされたり、ケガをするリスクがあるからだ。それに、素晴らしい結果を残せても、面倒なことが付きまとう」

この「面倒なこと」の中に、誹謗中傷や的外れな批判、必要以上のプレッシャーが含まれる。昨年のオフにケビン・デュラント、黄金期を支えたベテラン組が退団または引退し、クレイ・トンプソンもシーズン全休、そしてステフィン・カリーも2019-20シーズン序盤に負傷して長期離脱となった影響を受け、ウォリアーズはリーグ最下位に低迷。天国から地獄に一気に突き落とされた。

その都度、様々な批判や中傷を浴びることになるが、その対価として報酬を受け取っているのだとカーは考える。チームの歯車だった現役時代より、個性豊かな面々をヘッドコーチとしてをまとめ上げる方がはるかに難しいに違いない。ロッドマンの発言は、結果を残し、注目される全選手、全チームが感じる苦悩なのかもしれない。