文=泉誠一 写真=Getty Images、古後登志夫

3度の国際大会とオールスターゲーム1回を開催

今年の日本一を決める天皇杯・皇后杯の舞台はさいたまスーパーアリーナ。2006年世界選手権に向けて建設され、本来であれば『バスケの聖地』になっていたはずのビッグアリーナであり、やって来る2020年東京オリンピックのバスケ会場だ。1月4日からはじまる天皇杯・皇后杯ファイナルラウンドは、3次ラウンドを勝ち抜いたB1とWリーグの8クラブによって争われる。その中で過去にさいたまスーパーアリーナでプレーした経験を持つ選手は何人いるのだろうか。

こけら落としとなった2000年9月、シドニーオリンピック直前にアメリカ代表とスペイン代表を招き、日本代表が世界の強豪に胸を借りた『スーパードリームゲーム2000』。当時の日本代表で今なお現役なのは、折茂武彦(レバンガ北海道)と青野文彦(ライジングゼファー福岡)の2人のみ。しかし、彼らは天皇杯3次ラウンドで敗れている。現在、コーチとなってファイナルラウンドに駒を進めているのが川崎ブレイブサンダースの北卓也ヘッドコーチと新潟アルビレックスBBの庄司和広ヘッドコーチ。そして、JX-ENEOSサンフラワーズの佐久本智アシスタントコーチである。

2006年世界選手権に開催国枠で出場した日本代表であったが、広島で行われた予選ラウンドで敗退し、さいたまスーパーアリーナでプレーする機会を得ることはできなかった。

『バスケの聖地』を経験した選手はごくわずか

庄司ヘッドコーチは、城宝匡史とともに2012年の『bjリーグオールスターゲーム』にも出場しており、3度目の大舞台に挑む。同じく鵜澤潤も2001年に行われた『ヤングメン(U21)世界選手権』で経験済みだ。中地区5位の新潟が1回戦で対戦するのは、同1位のシーホース三河。実力差はあるが、ビッグアリーナ経験者を3人も擁する新潟にとっては、一発勝負のトーナメントだからこそ、レギュラーシーズンとは違う結果だって期待できる。

当時のU21日本代表メンバーで、今なお現役として活躍する選手はもう4人しかいない。鵜澤とともに2度目のさいたまスーパーアリーナでプレーする機会を得たのが、田臥勇太(栃木ブレックス)である。再び立つ大舞台にモチベーションも高いことだろう。

1万4011人を集客した『bjリーグオールスターゲーム』には25名が選出されたが、今年の天皇杯で選手として再びこのコートに立つのは、先に挙げた城宝とともにマイケル・パーカー(千葉ジェッツ)だけである。3次ラウンドで敗れてしまった選手も多いが、すでに現役を退いた選手も少なくはなく、たった5年前ではあるが時の流れを感じずにはいられない。

「高いレベルにいる女子をもっと観てもらいたい!」

女子にとっては、誰もが初のビッグアリーナに挑む経験となる。今シーズン限りでの引退を表明しているトヨタ自動車アンテロープスの大神雄子にとっても、「ケビン・ガーネットが来日した時にJXのクリニックをして以来。でも、あのときもメインアリーナではなかったです。試合を観たことしかない」場所だ。

大神は言う。「さいたまスーパーアリーナでプレーできるというのは良いですよね。東京オリンピックの会場であり、今後のバスケの聖地になるように、選手たちは誇りを持って日本一を懸けた戦いになれば、自ずとバスケ人気もさらに上がると期待している。女子は本当に高いレベルにいるし、もっと観てもらいたい」

本来であれば、2006年世界選手権へ向け、そしてその後も毎年のようにビッグイベントを行うバスケの聖地となると期待していたがそれは幻に終わった。2万2500人を集客できるNBAクラスのビッグアリーナは、いつしか格闘技の聖地になってしまった。だが、2020年には東京オリンピックの舞台となり、ここでバスケを盛り上げなければならない。その第一歩としての試みが、今年の天皇杯・皇后杯である。選手もファンも、双方にとってホームコートアドバンテージにするためにも慣れておく必要がある。

残念ながらバスケは東京オリンピックで新たなアリーナを手に入れることはできなかった。だが、既存アリーナを使用できることをメリットとして捉えれば、今から様々な準備をすることだってできるはずだ。