「どうして病気になった人間の名前を出すのか」
ジャズのルディ・ゴベアはNBA選手で最初に新型コロナウイルスに感染した選手だと報じられた後、複数のチームに感染者が出ている。それでもゴベアに対する風当たりは強い。
どういう経路で感染したかは分かっていないものの「ゴベアがNBAにコロナウイルスを持ち込んだ」という反応は少なくなかった。感染が判明する以前、記者会見場でマイクなどに故意に触れた行為についてゴベアは、知らなかったとはいえ軽率な行動だったと謝罪。そして同じように新型コロナウイルスの影響を受けている人々に高額の寄付をした。
それでも、マジックでプレーするエバン・フォーニエは同じフランス出身のプレーヤーとして、いまだにゴベアへの批判が止まらないことに憤っている。ゴベアを槍玉に挙げる報道に「耐えられない」と、フランスのメディア『L’Equipe』に語った。
「まるでゴベアがNBAでのウイルスの顔みたいな扱いだ。ジャーナリストの伝え方、そして一般の人の反応はひどいものだ。報道を見ている自分も傷ついている。そもそも、どうして病気になった人間の名前を出すのか理解ができない。まるで移籍市場のスクープを競い合っているみたいじゃないか。新型コロナウイルスのフリーエージェントとでも言おうか。こんな状況は耐えられない。名前を伏せて『選手に感染者が出た』とだけ伝えればいいこと。シクサーズやレイカーズにも感染者が出たけど、名前は明かさなかった。この方がより配慮されている」
またフォーニエは、外国人選手の方が批判されやすいとも主張。「一般的には、違う国出身の人間が批判されやすい。ゴベアがヨーロッパ出身だからウイルスを持ち込んだとでも言うのか? ドノバン・ミッチェルだって感染している。もしかしたらミッチェルからゴベアに伝染したかもしれないじゃないか。でも、その可能性は誰も口にしないんだ」
今のところNBAは、2019-20シーズンを再開させる方向で検討を進めている。だがフォーニエは、この世界的大流行がすぐには収束しないと考え、「オリンピック開催は無理だと思う」と持論を語った。
おそらく今後もNBA関係者に感染者は増えるだろう。こういう事態だからこそ、各々のメンタリティが試される。お互いを思いやり、助け合う精神でこの難局を乗り越えるしかない。