松島良豪

「川崎、北海道の選手ともケガなく無事に終えて良かった」

3月15日、レバンガ北海道は川崎ブレイブサンダースとの無観客試合を行った。前日にはチームの3選手が発熱したことで試合が中止になるなど、バスケットボール以外の部分で大きなプレッシャーを受けながらの試合となった。

その中でもビッグマンの相次ぐ離脱によってサイズ不足に陥りながらも前半は39-42と互角の戦いを演じる意地を見せた。しかし、後半に入ると前半のような強度をキープすることができずに崩れ、最終的には71-97で敗れた。

司令塔の松島良豪はこう振り返る。「今までやってきた練習と違うラインアップで、積み重ねてきたことが出せない状況でした。前半に関しては内田(旦人)、桜井(良太)さんが頑張ってくれ、クロースゲームになったのは良かった。ただ、そこで後半も良い流れで続けられなかったのはポイントガードの責任です」

もちろん勝てなかった悔しさはあるが、この一戦は何よりも無事に終われたことが重要だった。「いろいろな感情がある中、川崎、北海道の選手ともケガなく無事に終えてよかったです。勝敗を抜きにしたところでは、そこが一番大事なところでした」

松島良豪

「味方をどう生かすか。それこそ自分の美学」

新型コロナウィルスの感染が終息に向かっているとは言えない状況の中、無観客で実行した初の週末は、結果的に2試合が中止となった。この状況を受け、Bリーグは4月1日まで予定していた残りの無観客試合を中止とする決定を下している。

今後、どうなるのか状況はいまだ不透明なままであり、最悪の場合このまま今シーズンが終了する可能性もあり得る。そうなった場合、すでに今シーズン限りでの引退を発表している松島にとって、この試合がラストゲームとなってしまう。

そのことを聞くと、「今日が最後の試合になっても、それはそれで良いかなと思います」と松島は語った。

「今日のシューティングの時『これが最後かも』という感情がよぎりました。ただ、最後になったとしても、まずは個人よりチームを優先したかった。だから、この感情と向き合うのは試合が終わってからでいいかなと」

そして松島は続ける。「今日もアシストをできましたし、ミスもありましたが、点数よりアシストが先行したところは僕らしいかなと。どんな時でも、たとえコーチにシュートを打てと言われても、まずは味方をどう生かすか。それを(北海道に加入してから)この5年間ずっと考えてきました。それこそが自分の美学だと思ってやってきました。自己中でもありますが、それを最後まで貫き通すことができました」

松島良豪

「プロで学んだことを次の世代に伝えていく」

図らずもこの試合、松島のスタッツは0得点4アシスト。シュートは1本も打っていない。彼らしさが出た数字だった。また、常に自分ではなく、周囲に気を配る彼の姿勢は、この言葉が何よりも象徴している。

「現役最後になるかもしれない試合で川崎の篠山(竜青)さん、藤井祐眞選手と、素晴らしい選手とマッチアップさせてもらえたことに本当に感謝しています」

最後に今の心境を松島はこう締めくくった。「最後まで持ち味を出せたので悔いは残っていないです。そして、引退した後で大学院に行って、バスケットボールを学ぶことは決まっています。プロで学んだことを次の世代に伝えていく。今日も川崎の選手たちはすごく上手かったですし、そういう選手になれる子を一人でも多く輩出したいです」

15日の試合がラストゲームになるかもしれない。松島にはその覚悟ができている。ただ、こんな形で彼がユニフォームを脱ぐのはあまりに寂しすぎる。なんとか新型コロナウィルスの状況が好転し、慣れ親しんだホームアリーナで北海道のファンから新たな船出を祝ってもらう形で、現役生活を終えられることを切に願う。