川崎はリーグ再開へ準備万端、佐藤賢次ヘッドコーチ「高い強度を保つことさえブレなければ大丈夫」

川崎はリーグ再開へ準備万端、佐藤賢次ヘッドコーチ「高い強度を保つことさえブレなければ大丈夫」

2020/03/12

佐藤賢次

新型コロナウィルスによる試合の延期は、Bリーグのどのチームにも大きな影響を与えている。各チームともリーグ戦の再開に向けてトレーニングをしているが、先行きは不透明であり、高い集中力を維持するのは簡単なことではない。就任1年目ながらここまでリーグ1位タイの勝率を残している川崎ブレイブサンダースの佐藤賢次ヘッドコーチに、今は何を意識して日々の練習に取り組んでいるのか。また後半戦に向けた展望を聞いた。

「来るべき時に向けて『BE REDAY』だけはしっかり」

──こういった予測不可能な社会情勢の中、ヘッドコーチとして何に注意してチーム練習を行なっていますか。

いろいろ難しいですが、分からないことに対してどうこう言っても仕方がないです。今、やらないといけないのは決まっている予定に対して最善の準備をすること。ただ、それでも先行きが分からず「このままシーズンが終わってしまうんじゃないか?」という不安がある中で練習をしているので、とにかく集中力を高めて質の高い練習を短い時間でやっています。

延期が決まってすぐ、「スポーツを仕事としている社会人として、コート上でやるべきことを表現することで、見ている人々に日常生活とは違う何かを感じてもらう。それが自分たちの存在意義だ」と選手には伝えました。ただ、コートでしっかり表現するためには準備が必要です。こういう時だからと練習をサボって、いざシーズンが再開してバテバテだったら見にきてくれた人々には何も伝わらないし、そうなっては我々の価値がなくなります。来るべき時に向けて『BE REDAY』だけはしっかりしています。

みんな集中力もモチベーションも高いし、私も毎日、明日はどんな練習メニューにするか選手と向き合いながら勝負している感覚です。「今日も良い練習ができた。ケガ人もなく無事に終わった。明日は何をしようか」。その繰り返しです。

──予想外の一時中断となってしまいましたが、ここまでの戦いぶりをどう評価していますか。

11月から16連勝を達成しましたが、その途中で主力にケガ人が出てしまいました。その苦しい状況で天皇杯を戦って、ある程度の底力みたいなモノは見せることができました。天皇杯までに勝ちきるベースを作ることが一つのポイントだったので、そこはある程度できたのかと思います。

そこからジャマール・ソープ、水野幹太と増田啓介も入って最後にパブロ・アギラールが加入しました。ただ、どうしてもシーズン最初から積み重ねてきた選手と、在籍期間が短い選手の間には戦術の理解度に差があります。チームを一から作り直しているわけではないですが、やり直している部分は多いです。もう選手登録可能な期限は終わったので、あとは最後の仕上げをやっているところです。

──その中でも収穫、課題はどういうところですか。

一番の収穫は、一つの目標に対してチームで助け合い、時には厳しいことも言い合いながら、チーム全体で向かって行くことの強さを感じ取れたことです。課題に関してはやっぱり勝ちきる力が足りません。リーグ連覇を達成したA東京のような堅実さ、ソリッドなところがまだまだです。遂行力、徹底力、試合終盤の競った場面で誰が何をするのか、その関係性をはっきりさせる。そういった勝ちきり方などで課題を感じています。

佐藤賢次

「誰が出ても同じ強度でプレーできるように底上げを」

──故障者続出の厳しい状況をなんとか乗り切ることができたのか。もっとできたと思うのか、どういう気持ちでしたか。

最善は尽くしたし、やれることは全部やった感覚はあります。ポイントとなる試合がいくつかあって、天皇杯ファイナルラウンドの準々決勝のA東京戦で勝ちきったのはすごく大きかったです。あとリーグ戦が再開してから連敗し、さらにJ(ジョーダン・ヒース)が欠場した中で迎えた京都戦での勝ち、そこから彼が復帰して、A東京に勝ちきれた。その後、開幕節と天皇杯で負けた悔しさを前面に出してきた宇都宮とのアウェーで、連勝はできなかったですが1戦目は勝ちきれた。そういった一つひとつ鍵となる試合をしっかり取れたのはすごく大きかったです。

──これからの戦いに向けて、まずは新加入のアギラール選手について教えてください。スペイン代表で欧州選手権の優勝メンバーと、かなりの大物選手です。

すごい選手を獲得したみたいな感じになっているんですかね(笑)。今、練習での彼も十分にすごいですけど、試合で全開の彼はまだ見たことがないので、どんなものか楽しみです。

タイプとしてはマティアス(カルファニ)に似ている部分はあると思います。彼は『怪盗カルファニ』と言われているようにスティールがうまかったですが、『怪盗パブロ』のようなプレーを出してくれています。リーチが長く、フットワークもいい。合流してからの練習のスタッツを見たら、彼がスティール王だと思うくらい読みが鋭いですし、IQも高いです。

──当初は実戦をこなしながらコンディション、他の選手との連携を上げていく予定だったと思います。その状況が変わったことはプラスですか、マイナスですか。

チーム状況だけを言うとプラスの面もあります。パブロ(アギラール)もそうですし、ジャマールも天皇杯ファイナルラウンド準々決勝の前日に契約して、あそこまでやってくれました。ただ、細かいコンセプトとか大事にしているところで伝わりきれていないところがたくさんあり、それは増田も水野も一緒です。今、練習でそういうところを徹底的にやれています。ただ、それでも試合で上手くフィットして活躍できるかは別の問題で、強いチームとの試合をこなさないと分からないです。

──期待の新戦力も加わり、再び開幕当初のようにプレータイムのシェアができるようになってきました。そうなれば、主力への負担も軽減され、コンディションも良くなってくると思いますか。

そうですね。良いコンディションで戦うことと、チームの底上げはセットです。誰が出ても同じ強度でプレーできるように底上げして、タイムシェアをしていきたい。今、若手は元気で、チーム内での激しい競争が生まれている。選手が15人いて外国籍選手が3人なので、その内1人がベンチ入りできません。日本人も12人のうち2人は、外れます。そこは選手も分かっていて、ゲーム形式の練習ではバッチバチにやり合っています。

いつも全員にチャンスを与えたいので、外れることを伝えるのは一番つらい仕事です。ですが厳しさも持っていないとやっていけません。外れる選手のことは当然気にします。僕も現役時代にはベンチ入りできない時がありました。リーグ戦は15名登録で天皇杯は12名登録という時代があり、それで天皇杯のメンバーから漏れたことがあったんです。それを告げられた時の気持ちを経験しているので、必要ではないから外れるわけではない、とケアはしていきます。外れる3人は毎回同じではないでしょうが、その3人が日頃の練習でどんなパフォーマンスを出してくれるかが、優勝に向けてのキーになると思います。

佐藤賢次

「頭に血がバッと上がっては、すぐにアイシングする感じ」

──川崎が指向しているのは、プレータイムを多くの人数でシェアする戦い方です。ただ、同じスタイルで戦うチームと比較すると、選手交代のタイミングは流動的です。そこはシェアしながらも、できるだけ固定化したくない考えですか。

コート上でエネルギーが出ていない、役割をしっかり実行できていない選手はすぐに代えたい。そこは大事にしたいです。イメージ的にはコート上の5人が勢いに乗っていて、ずっとエナジーのある状態を維持していくことです。常に均等なプレータイムで試合に勝つのが理想です。でも、人間なので良い時も悪い時もあり、それは理解しています。

──開幕前の取材では「常に冷静でいたい。冷静に状況を見ていて、それぞれが持っている力の100%を出せる状況を作ってあげられるコーチでいたい」と話していました。ここまでやってみて、感覚はいかがですか。

試合中は熱くなりますが、そういう時も頭に血がバッと上がっては、すぐにアイシングする感じです。血が上がってそのまま噴火して、冷静でいられなくなるのが一番嫌です。時々タイムアウトで怒ったりする時もありますけど、それは意図して怒っていることもあります。自分で奮い立たせないと怒りは出てこないので、その後は力が抜ける感じです(笑)。

感情の起伏については、ほぼ想像していた通りです。ですが、想像していた以上にいろいろ全部見るのは難しいと感じる部分はあり、だからこそアシスタントコーチ陣の一言にはすごく助けられています。

──シーズンが始まり、長らくチームの顔だった北卓也さんの後任だというプレッシャーを感じたことはありますか。

正直、感じたことはありません。ただ、北さんが積み重ねてくれたベースがこの成績を作っていることは間違いない。それは試合を重ねることで、より思うようになっています。セットプレーも全く同じものを使ったりもしていますし、選手たちが自分で考えて判断する連係のところは、北さんの下での8年間の土台があってこそ。そこは伝統の一つとして引き続き育てていきたいです。

──これからの戦いですが、もうファイナルを逆算しての選手起用、戦いぶりになっていく段階ですか。

そこは頭には入っていて、逆算モードにはなりつつあります。そこで勝ちきることをイメージしながら1試合ずつ戦っていくつもりです。だから、1月2月の苦しい時のニックが38分、Jも38分プレーするみたいなことにはならないと今は思っています。ただ、試合になったらどうなるか分かりません(笑)。

──篠山選手もそろそろ復帰すると思います。どのようにチームに組み込んでいこうと考えていますか。

いきなりスタメンで出て勝負どころを任せようとまでは思いません。徐々に徐々に、調子を上げていってくれれば。それでもウチのコンディショニングスタッフを信用しているので、ケガする前よりも良い状態で戻って来ると期待しています。

──アギラール選手が加わり、篠山選手が戻って来ることで、この数カ月でできあがってきたものが、少なからずリセットされます。そこへの心配はありますか。

ほとんどありません。それぞれの選手でプレーは変わっても、高い強度を保つことさえブレなければ大丈夫です。パブロがどう絡んでいけるのかは不確定要素なので、そこはこれから整理していきます。

──最後に、リーグ戦が再開したら休みなしでシーズン終了まで進んでいきます。やってきたことを継続すれば優勝できる手応えはありますか。

どんな相手に対してもウチのコンセプトは通用していると思います。そういう意味で言うと、優勝する力のベースはできあがりつつあるかなと。ただ、今のチーム力で優勝はできない。徹底力だったり、勝負どころの結束力だったりとか。そういうものはまだまだ上げていく必要があります。優勝する自信は持ちつつも、課題はたくさんあるので一日一日、階段を上がっている感じです。

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