文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「ずっと練習してきた結果」

Bリーグ第10節、栃木ブレックスは三遠ネオフェニックスと対戦した。初戦に勝利した栃木だったが第2戦は先発5人を途中で総入れ替えするなど出だしの悪さを露呈し、1勝1敗の痛み分けに終わった。

それでも栃木にとっては大きな収穫があった。それは山崎稜の覚醒だ。ここまで出番が少なかった山崎だが、初戦で14得点、第2戦で13得点とチームで2番目の得点源として存在感を示した。

「明確なきっかけは特に分からないですけど、ずっと練習してきた結果がこうやってプレータイムをもらえることによって発揮できたのかなと思います」と山崎は冷静に自らのパフォーマンスを語る。

第9節までのプレータイムは平均5分。これはルーキーシーズンの平均6.8分を下回るキャリアワーストの数字だ。だが三遠戦では初戦で16分、第2戦で大きくプレータイムを伸ばしている。それは与えられたのではなく、自らつかみ取ったものだ。

「プレータイムは与えられるだけじゃなく、自分から勝ち取りに、つかみ取りにいかなきゃいけないものです。最初のシュートが決まって、次のシュートも決まって。そういうふうに積み重ねていって、プレータイムが伸びていくものと思っているので、コツコツとっていう感じですね」

それは指揮を執る安齋竜三ヘッドコーチも同じ見解だ。「選手にはチャンスを与えたいと思ってますし、そこで自分の役割をしっかりやってくれてプラスアルファがあればその後も使う目途が立ってくる。安心して使える選手が増えれば増えるほどありがたいですし、今週の2試合はザキにとっては良い週末でした」

「雑草魂で試合に出れるようになっていった」

山崎のパフォーマンスで特に印象的だったのは第2戦のファーストシュートだ。栃木は序盤に出遅れ、2-14と大きなビハインドを背負ったところで先発の5人を一気に入れ替え、山崎がコートに立った。

「ベンチで見ていても明らかに流れが悪かった。そこを断ち切らないといけなかったので、アグレッシブにやろうというのは5人で話しました」と振り返る。その山崎は栃木にとって初めてのフィールドゴールとなるミドルシュートを沈め、ここまで静まり返っていた会場の雰囲気を一変させた。その後も3ポイントシュートを沈めてチームに流れを呼び込み、第2クォーターには逆転の立役者となった。

「自分のプレーを見せる場ではあるので、コートに出た以上そこはチャンスだと思って。やってやるっていう気持ちしかなかったです」

一気にインパクトを残した山崎。富山グラウジーズに所属していた昨シーズンは約20分弱のプレータイムを得ていたが、栃木に移籍してからはベンチを温める日が続いた。それでも腐らなかったのはスラムダンク奨学金の4期生として、アメリカに渡った経験も少なからずプラスに作用している。そして内に秘めた『雑草魂』のおかげだ。

「向こうでも最初は出れなくて、地道に頑張るしかなかったです。雑草魂でコツコツ頑張って試合に出れるようになっていったので」

「この三遠との2日間で『できるな』という手応えを感じたので、すごい自信になりました」と山崎は締めた。

地道に努力を重ねてきた山崎にとって唯一足りなかったのは自信だった。そしてその足りないピースをこの2日間で手に入れた。実力があっても試合で発揮できなければ意味はないが、『練習は嘘をつかない』というのも事実。雑草であっても美しい花を咲かせるのだ。