「練習に対する姿勢、意識が変わりました」
アジアカップ予選の初戦、敵地でのチャイニーズタイペイ戦は96-57の快勝に終わった。ライアン・ロシターと金丸晃輔の新戦力がともにゲームハイの17得点を挙げる活躍を見せる中、ワールドカップをケガで欠場した富樫勇樹も先発ポイントガードに戻り、18分のプレータイムながら6得点4アシストを記録。特に第1、第2、第3クォーターのスタートを任されていずれもチームにリードをもたらし、完勝の展開へと持って行ったパフォーマンスは大いに評価できる。
「あまり1年開いたという感じはなくて。ワールドカップには出られなかったですが、普段と変わらずできたかなと」と、富樫は代表復帰戦を振り返る。ブランクよりも気にしたのは新型コロナウイルスの影響で観客を入れずに試合をしたこと。「怖くはないですけど、無観客試合になるのも仕方ない。でもスポーツをやっていて多くのお客さんの前でプレーできるのは幸せなことだと、あらためて感じました」と語る。
この試合はワールドカップの反省からディフェンスに重きを置いた。富樫もチームの出来について「2月入っての合宿はそこにフォーカスしてずっとやってきて、足元まで入ろう、一歩詰めようっていうところで相手が嫌がったイメージがあります。チームとしてやってきたことが出せた」と評価する。
ワールドカップでの惨敗を受けて、チームの意識は変わった。ワールドカップに参加していない富樫もチーム内の変化をこう感じている。「練習に対する姿勢、意識が変わりました。それまでが悪かったわけではないですけど、自分たちがどうしないといけないかミーティングで話し合った結果を練習からコートでしっかり表現して試合に繋がったと思います」
「今日のディフェンスのプレッシャーは、ただ今日良かったわけではなく、練習中からずっとやり続けてきたことなので、それがまさに出たと思います。特にディフェンスのところ、一歩詰めるっていうプレッシャーについてはずっと言われているので、そこは今日の試合もすごく良かったと思います」
3人の帰化選手による競争「良い方向にしか向かない」
今回の代表戦で大きな話題となったのがロシターの日本代表デビューだ。ポイントガードとしてゲームを作る富樫は初めての実戦ながら上々の連携を披露。「何回も対戦していてどういう選手かも分かっているので、本当にいつ預けても信頼できる、安心できる選手。ビッグマンですけどポイントガードを2人でやっているぐらいに思える器用な選手だと、この試合もそうですし練習でも感じていました」と語る。
ワールドカップ予選の途中でチームに加わったニック・ファジーカスとのプレーも長く、またもう一人の候補であるギャビン・エドワーズとは千葉ジェッツで一緒にプレーしている。帰化選手は1人しかチームに登録できない。富樫も「あの3人から1人を選ぶのは難しいですよね」と言う。「得点力で言ったらやっぱりニックだろうし、器用さで言えばライアン。ギャビンは走れて跳べるセンターです。自分が決めることではないですけど、あの3人から選べるような時代が来るって贅沢だなと思いました」
この3人によるオリンピック出場へ向けたチーム内競争は、本人たちにとってはタフなものになるが、その競争が厳しければ厳しいほど代表のレベルアップに繋がる。富樫も「競争は常に良いことなので」と競争激化を歓迎する立場だ。
「今シーズンの千葉の例で言うと、ビッグマン3人を獲得したことによって3人が競争することになって、ニック(メイヨ)とジョシュ(ダンカン)、ギャビンの3人が練習中に良いプレーをして、試合で活躍した選手が出ています。もちろんケガとかいろんな状況はありますけど、そうやって練習中から競争することはチームとしても良い質の高い練習に繋がって、良い方向にしか向かないと思うので。あの3人がいることで日本が必ずレベルアップするなっていう感覚はあります」
今回、エドワーズは候補選手に選ばれたもののケガをしてしまい、合宿には参加できなかった。それでも「システムとかヘッドコーチのことについて聞かれて話すことはあります」と、来るべき代表での共演に向けた準備は進めている。「でも、ギャビンは特に困ることはないんじゃないかな。ピックに来てダイブすることは常にやっている選手なので。今回ケガで参加できなかったのは残念ですけど、オリンピック前の合宿で一緒にやれることはすごく楽しみです」
今回は中国戦が延期となり、代表戦はこのチャイニーズタイペイ戦のみ。富樫は千葉ジェッツに戻って残るシーズンに集中し、次に代表で集まるのはいよいよオリンピックに向けた『本番』となる。富樫は言う。「オリンピックでは予選を突破したいという思いがかなりあります。そのためには、かなりの努力をしないといけないので、残り数カ月になりましたけど、何年もずっとそこに向けてやってきたので頑張りたい」