「日本代表の一員になれるのはハッピーなこと」
アジアカップ予選に向けて先週、今週と強化合宿を行なったバスケットボール男子日本代表だが、陣容は何度も招集されているメンバーばかりだった。その中でライアン・ロシターとともにフレッシュな存在だったのが、アキ・チェンバースだ。
過去2シーズン、持ち前の身体能力を生かしたタフなディフェンスとゴール下への鋭いアタックを武器に千葉ジェッツのBリーグファイナル進出に貢献したチェンバースは、今オフに横浜ビー・コルセアーズへと移籍。千葉では1試合平均で約20分の出場時間で主力の一員という位置付けだったが、横浜では平均30分出場で2桁得点をマークする大黒柱として活躍し、今回の代表合宿メンバー入りへと繋がった。
「サプライズだった。そして日本代表の一員になれるのはハッピーなことだ」と、チェンバースは招集を知った時の率直な思いを語る。
ただ、同時に「最初は少しナーバスになっていた。他の多くのメンバーは代表経験が豊富だ。それに練習から多くの注目が集まる。そういうところで緊張した部分もあった」と身構えた面もあった。
しかし、そういった懸念も「練習を重ねるごとに、どんどんチームに慣れていっている感覚はある。みんながよくしてくれているしね」とすでに払拭され、チームに馴染んでいる様子だ。
指揮官フリオ・ラマスからは「ハッスルし、アグレッシブにプレーしてほしい。そしてコートの上ではみんな対等の立場だから、オープンショットのチャンスやゴール下が空いていたら恐れないでシュートを打ちにいくように言われている」と明かす。
その上でチェンバースは、自分のやるべきことをこう考えている。「間違いなく周りをサポートするプレーが求められる。カッティングやいろいろと細かい動きをして、よりスペースを作り出す動きが必要となる。代表は各チームのスター選手が揃っているので、自分の強みであるアグレッシブなプレー、ハードワークすることに集中するのみだよ」
「チームのためならどんな小さなことでもやっていく」
アメリカ人の父、日本人の母の下、アメリカで育ったチェンバースが、日本でのプロバスケットボール選手として活動を始めてから7シーズン目となる。日本代表候補となった今の状況を「日本に来てから、ここまで長い道のりだった。ただ、今の自分の置かれている立場は来日した当初には想像もできなかった」と言う。
ただ、それは彼のバックボーンを考えれば納得だ。母校のカリフォルニア大マーセド校には、入学当時バスケットボール部がなく、友人と一緒に大学に働きかけて部を設立しているのだ。つまりアメリカ時代の彼は、実績と呼べるものがほとんどなかった。
そんな無名の彼を見いだし、日本に呼び寄せたのが当時bjリーグの浜松・東三河フェニックス(現三遠ネオフェニックス)の指揮官だった東野智弥(日本バスケットボール協会技術委員長)だ。
Bリーグ開幕時からの着実なステップアップを見れば、チェンバースの今回の代表候補入りは満を持してと言えるものだ。そのタイミングで今、代表の強化委員長が自らを発掘した東野であることには、少なからず縁を感じている。
「彼は僕を日本に引っ張ってきてくれた。そしていつも僕のポテンシャルを評価し、ずっと気にかけてくれていた。いろいろと話しをした時、彼も今回のメンバー入りにハッピーと言ってくれてうれしかった」
来日当初は、全く頭になかった日本代表だが、こうして合宿に呼ばれたことによりチェンバースの中でも確実に意識する存在となった。もちろん一人の選手として東京オリンピックに出たいという欲も生まれる。それでもまずは「チャイニーズタイペイでプレーしても、しなくても、チームのためならどんな小さなことでもやっていくつもりだ」と目の前のことに全力を注ぐことに集中する。
「自分をもっとプッシュして成長していきたい。そして代表でも試合に出られるようなりたい」とモチベーションを高めるチェンバースの台頭は、日本代表の競争をよし激しくし、さらなる活性化をもたらす。