ベンチスタートの選手でリーグトップの19.3得点
好調サンダーで重要な役割を果たしているデニス・シュルーダーは、シックスマン賞を2年連続受賞したルー・ウィリアムスを上回る平均19.3点と、ベンチスタートの選手ではリーグトップの数字を記録しています。キャリアを通して課題だったシュート力の大幅な改善がキャリアハイの得点をもたらしており、自慢のスピードで抜き切らなくても得点を重ねられるようになりました。3ポイントシュートで39%、ミドルシュートで47%とアウトサイドシュートの成功率を大きく上げたシュルーダーですが、そこには個人のスキルアップとチーム事情が絡み合っています。
今シーズンのサンダーは、リーグを代表するスコアラーであるラッセル・ウエストブルックとポール・ジョージが抜けたことでパスが回るようになり、シュルーダーのシュートチャンスも増えました。しかし、完全なフリーで打った3ポイントシュートは平均2.8本から2.3本へと減っています。ディフェンスを引き付けてパスを出してくれる選手がいなくなった結果ですが、個人のスキルアップによって成功率は7ポイント向上しています。
またポイントガードとしてボールを持つ時間が長くなったものの、シュルーダー本人がシュートまで行ったプレーだけで比較すると、昨シーズンはシュート全体の60%が3ドリブル以上を要していたのに対して、今シーズンは45%まで減っています。つまり、より少ないアクションでシュートまで到達していることになります。
バックコートからボールを運んで、チームメートにパスをしないでシュートまで行くような個人オフェンスがなくなり、オフェンス開始時にパスを選択することが増えたことになります。パスを回して全員が得点に絡むようになったチーム事情から、バランスの良いプレーチョイスをするようになりました。
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— OKC THUNDER (@okcthunder) December 23, 2019
ただし、アシスト数は4.1本から4.0本へと微減で、チームオフェンスを意識してパスを出す割にはアシストが減ったことになります。シュートまでのドリブルが減ったこととアシストが減ったことには関係性があり、ドライブした際にはディフェンスを引き付けてのパスを選択することが減り、シンプルに自分が打ち切るプレーが多くなりました。スピードがありながら、しつこいドリブルでチャンスを逃すこともあった昨シーズンから、思い切り良く打つことで成功率を上げた印象があり、迷いのないプレーが好結果を生み出しているのです。勝負どころでも躊躇うことなくミドルシュートを選択している姿は「自分で決める」ことを前提としたメンタル面の変化を強く感じます。
シュルーダーがシュート成功率を上げた理由は、特定のスコアラーがいないチーム状況で打ち切る意識が高くなり、その結果として余計なドリブルが減ったことが強く関係していそうです。これはサンダー全体に言えることでもあり、1試合当たりのパス本数は50本近く増えましたが、アシストは1.2本減りました。パスは多く回すものの、最後はそれぞれが得意とする個人技でアタックするオフェンスが好成績に繋がっています。
高い能力はあるものの雑なプレーが多かったシュルーダーですが、シンプルに個人技を生かせるサンダーのチーム事情とシュート力の向上によりシックスマン賞も現実味を帯びてきました。それはシュルーダーだけでなく、チーム全員が主役としてハードに戦う今シーズンのサンダーがもたらした好循環です。