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悲願のNBA制覇を果たし、存在感はさらに強まる

今でこそロールプレーヤーのイメージがすっかり定着したウォリアーズのデイビッド・ウェストだが、ホーネッツ(現ペリカンズ)、ペイサーズ時代は不動の先発フォワードだった。

オールスターにも2008年と09年に選出されたウェストがベンチ起用を受け入れるようになったのは、スパーズに移籍した2シーズン前のこと。2015年の夏、ウェストはペイサーズと再契約すれば1000万ドル(約11億円)を超える年俸を手に入れられたのだが、これを蹴ってスパーズとベテラン最低保証額の140万ドル(約1億5000万円)で契約。

これは単にキャリアを続けるのではなく、優勝を狙える環境でプレーする刺激を求めてのこと。スパーズでの1年目、プレーオフでサンダーに敗れると、2016年夏にウォリアーズに移籍した。そして昨シーズン、アンドレ・イグダーラやショーン・リビングストンらとともにセカンドユニットを支え、悲願の初優勝を成し遂げた。37歳で迎えた今シーズンは、18試合に出場して出場時間はキャリア最低の11.6分だが、フィールドゴール成功率と3ポイントシュート成功率は自己ベストの68.8%と50%を記録している。

これだけ安定したスタッツを残しているウェストも、6年前にキャリアを左右する大ケガを経験した。『SF Gate』によれば、ヒザの前十字靭帯断裂という重傷を負ったウェストは、それから食生活を見直し、朝に肉を食べる習慣を止め、糖質も断った。大半の選手が年齢を重ねるにつれ身体能力を落としていく中、ウェストは節制のおかげでベストコンディションを維持している。

今シーズンの好調には理由がある。ウェストは、試合が始まると第1クォーター途中にロッカールームに戻り、ステーショナリーバイクに乗って汗を流す。そして第2クォーター序盤から100%の状態でプレーする、というルーティンを行っているのだとか。

ウェストのように、他チームであれば主役を演じられる選手が脇役としてベンチに控え、不利な状況でも短時間で試合の流れを変えてくれるからこそ、ステフィン・カリー、ケビン・デュラント、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンによる『スーパーチーム』の力が生きる。

キャリア晩年ではあれベストな状態を維持するウェスト。それもそのはず、彼が見据えているのは今だけでなく、引退後の生活でも健康な状態を維持することだ。再生可能エネルギー関連会社でアドバイザーの役職に就くウェストは、『SF Gate』に「引退後にやりたいことがある。足を引きずったような状態で引退するのだけは御免だね」

自分の仕事を理解し、周到に準備して臨み、結果を残しているウェストのプレーは、さらに円熟味を増している。「引退後にやりたいこと」に着手するのは、まだ先のことになりそうだ。