文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「もどかしいゲームがずっと続いている」

島根スサノオマジックは琉球ゴールデンキングスに2連勝した後、1カ月間も勝ち星から遠ざかっている。前節のサンロッカーズ渋谷戦に敗れ、連敗数は9にまで伸びてしまった。

今シーズンから島根に移籍した佐藤公威は悔しさを隠そうとせず、現在の率直な心境を語る。「もちろん勝ちたいって思いもあるし、勝たなきゃいけない状況なんですけど、ほんとにあと一つのところで勝てないのがずっと続いています。どのチームに対しても、大差で負けてるわけじゃないのですが……」

今シーズンからB1に昇格した島根。佐藤が言うように10点差以内での敗戦が多く、全く歯が立たないというわけではないが、それでも4勝11敗という数字を見過ごすことはできない。佐藤は言う。「目の前に勝利があるのに大事なところでミスをしたり、もどかしいゲームが続いているんですけど、勝つしかないのできっかけをつかめるように、もがいてる段階ではあります」

編成がガラリと変わったチームは大なり小なり連携構築に時間がかかるものだ。特に島根はB2を制した昨シーズンのチームから大きく様変わりし、全く別のチームになったと言っていい。

「新しいチームなので、数カ月で成熟できたらそんなに楽なことはない」と佐藤は現実を見据えるが、それでも「個々の色を見いだしつつありますし、お互いのことを理解し合いながらやってきていることは自信を持って言えます。チームとしてまとまってきています」と現状のチームを評価した。

「チームへの貢献を上手に表現できない悔しさ」

しかし、チームの雰囲気は悪くないと語る佐藤は、どこか感情を押し殺しているようだった。そして「良い我慢と悪い我慢があると思うんです」と、デリケートな部分について語り始めた。

「ストレスを抱えながらプレーするのと、それも分かってもらえない状況では解消の仕方が違ってきます。コミュニケーションだったり何かしらで解消ができればプレーも変わってくるだろうし。それも一つ僕たちが置かれてる状況であるかもしれない」

つまり、選手間の理解度が足りないことから生じるストレスに対し、それをどれだけ周りが共有できているかという問題なのだろう。それは上辺のコミュニケーションではなく、本当の意味でチームが一体にならなければ解決できない。

特に責任感の強い佐藤は自分を責める。「自分自身に反省を置く選手が多いと思います。『自分がもっとこうしていれば』という気持ちがいっぱいあるので……。それを上手に表現できない悔しさっていうのが、僕自身は一番強いです」

佐藤はそういった責任感とリーダーシップの部分を期待され島根にやってきた。言葉で言うのは簡単だが皆の意識を変えたり、高めたりすることは容易ではない。プロ13年目を迎える佐藤でさえ「すごく難しい」と漏らす。

だが、この厳しい状況でも佐藤はチームの可能性をあきらめず、勝利を追求し続ける。「次の勝ちによってきっかけがつかめるし、それを皮切りに勝つこともできると思っているので、それまでみんなで辛抱してやり続けるしかないです」

連敗が続くチームにとって、一つの勝利は状況を一気に好転させる特効薬になり得る。勝ち方を思い出すまで我慢が続く島根にあって、プロ意識の高い佐藤はチームを引き締め、トンネルから抜け出す時を待っている。