アジアで勝ち切れない『暗黒時代』に終止符を、ホームでの初戦にすべてを注げ!

2017/11/23
日本代表
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文=小永吉陽子 写真=FIBA.com

『日本のスタイル』を構築しつつ戦う日本代表

「ワールドカップ予選は日本バスケ界のターニングポイントになる。今までも自分がコーチとして携わってきた国際大会ではそう思いながらやってきましたが、今回こそは、このワールドカップ予選を機に、日本のバスケが進化していかなければならない」

2019年に中国で開催されるワールドカップの出場を懸けたアジア1次予選が11月24日に開幕する。2017年11月から2019年2月まで、1年3カ月にもおよぶ長いロードを前にして、JBAの技術委員長である東野智弥は、メディアに向けた公開練習の場で覚悟の声を発した。

バスケットボール男子日本代表は、長らくアジアで低迷している。日本は2006年にはホスト国として世界選手権を開催し、『世界基準』を掲げて4年間にわたり強化を積んだ時代があった。だが、それ以後は強化に継続性がなく、アジアの中で勝ち切れない弱さを露呈している。

これまでのような暗黒時代には終止符を打たなければならない。今回のワールドカップ予選は、アジアに『7枠』ある切符をつかみ取ることが大命題。東京五輪の開催地枠が保証されていない日本にとっては、ワールドカップに出ることで競技力をつけ、成長した姿を見せることで、開催国枠獲得への可能性を広げる必要がある。2020年のためにも、競技力向上のためにも、是が非でも勝ち上がらなければならないのがワールドカップ予選なのだ。

ワールドカップ予選を通して作る『日本のスタイル』

日本がこれまで低迷してきた理由には、指揮官の交代を繰り返して強化が継承されなかったこと、トップリーグで外国籍選手に依存してきたこと、フィジカルの弱さなど、様々な理由がある。その中でも国際試合のたびに感じてきたのは「日本は何がしたいのか?」と疑問に思うほど、特徴のないバスケをしてきたことだった。

勝負どころになると消極的になってゴールに向かえない。連戦ではスタミナ不足でタフに戦えない。相手チームが策を仕掛けると対応できずにパニックになるといった『情けないシーン』を何度も見せられてきた。それでも、昨年までヘッドコーチとして長谷川健志が指揮を執った時代には、意識改革から取り組み『戦う集団』へと変化し、ルーズボールやリバウンドの球際に食らいついたことで、2015年のアジア選手権では近年での最高成績となるベスト4にたどり着いた。

しかし2016年のオリンピック世界最終予選では惨敗し、世界とは大きな差があることを見せつけられてしまう。そこで、今夏から指揮を執るフリオ・ラマスヘッドコーチ(以下HC)は宣言した。「日本のスタイルを探し求めることからチーム作りを進める」と。

日本独自のバスケのスタイルの構築は、これまで多くの指導者がチャレンジしてきたこと。だが結局のところは、対策をされたときに立ち返る『原点』がないために崩れていた。今回は日本の強みとなる原点を作り上げることで、簡単には崩れないチームを目指す方針だ。

『タレント性のある選手の育成』という取り組み

ラマスHCは足が止まる時間帯をなくそうとしている。オフェンスではスピードある展開から、ボールをたくさん動かし、パスを散らしてスクリーンを活用してズレを作り、いいシュートセレクションを生み出すことにこだわる。ディフェンスではアグレッシブにプレッシャーをかけて相手にいい状態でボールを持たせず、常にヘルプやローテーションをして絶え間なく足を動かす。もっとも強調しているのが、日本の弱点であるリバウンドだ。「一人が1本でも多く取るように、5人全員が積極的に取りに行くこと」を掲げ、リバウンドを取るための分解練習から徹底してラマスHCは指導している。

もう一つのキーワードが『タレント性のある選手の育成』だ。これらの運動量あるスタイルをサイズと身体能力を上げた中でやり切ることを目指す。ゆえに、最終14名には宇都直輝や熊谷尚也といった身体能力が高い選手が残った。彼らを新戦力として加えたことで、チーム内の競争も活発になっている。

しかし、シーズン中に合宿の時間を割いても、組織的なチームに仕上げるには時間が足りない。ラマスHCにしても「私自身もBリーグの全選手、全チーム、全コーチを知り、日本のバスケの全体を知るプロセスの最中。それにはもう少し時間が必要」と語るように、これから始まる1年3カ月にわたる予選を通して、チーム力も個の力も上げて一つのチームになる成長が求められる。

11月の予選では打倒フィリピンを目指せ!

成長を求める中でも勝利はもぎ取らなくてはならない。オーストラリア、フィリピン、チャイニーズ・タイペイといったクセ者たちが並ぶグループの中で上位3チームに入らなければ、1次ラウンドで脱落してしまう。日本が11月の予選でターゲットにしているのは、11月24日にホームで戦うフィリピンだ。11月27日にアウェーで戦うオーストラリアについては、NBA選手が参戦しなくとも格上であり、「オーストラリアについてはフィリピン戦が終わらないと語れない」とラマスHCは言う。それだけフィリピン戦に懸けているのだ。

フィリピンバスケは『PUSO』(プソ)の精神をモットーし、バスケを国技とする国だ。タガログ語で心やハートを意味する『PUSO』の精神は彼らの誇りであり、フィリピンにはフィリピンにしかできない、1対1とロングレンジの3ポイントシュート、トランジションに強みを持つスタイルを確立したからこそ、この10年でアジアの強豪へと躍進した。

チームの軸となるのは、超攻撃型のポイントガード、テレンス・ロメオとジェイソン・ウィリアム。また210cmの帰化選手、アンドレイ・ブラッチェは内外角を器用にこなしてゲームを掌握する力がある。ラマスHCも「ブラッチェ、ロメオ、ウィリアム。とにかくこの3人をマークだ」と言い切るほどの要注意人物である。

しかし、今回のフィリピンには付け入る隙がある。直前に入った情報によると、8月のアジアカップで得点源だったロメオは膝のケガで12人のエントリーから外れることが判明。ブラッチェは11月19日に合流したばかりでチームとの融合時間は短い。さらに8月のアジアカップでは不安要素も見せている。ドイツ系の帰化選手をインサイドに置いたが機能せず、準々決勝の韓国戦ではディフェンスが崩壊して惨敗。ブラッチェという切り札が加わった今回は、インサイドの攻防とディフェンスがどこまで強化されているかがカギとなる。フィリピンを倒すならば、熱狂的ファンで埋め尽くされるアウェーではなく、日本で開催される今回こそがチャンスなのだ。

田中大貴「自分たちのホームは自分たちで守る」

大会前に負傷したものの、フィリピン戦を見据えて調整してきた田中大貴は言う。「今までの国際大会と一番違うのは、何回も日本で試合があること。これから日本バスケ界が良くなろうとしている中で、ファンの前で日本のバスケに可能性があるところを見せたい。自分たちのホームは自分たちで守らないといけないと思って戦います」

これぞ、まさしくホーム&アウェーで戦う意義。日本のファンの前で成長していく姿を見せるからこそ、東野技術委員長が言うように、このワールドカップ予選が男子バスケのターニングポイントになる。

初戦のフィリピン戦は、11月24日、東京の駒沢体育館で19時にティップオフを迎える。