経験がモノを言うポイントガードで主力に定着
B1西地区では大阪エヴェッサが快進撃を続けている。ここまで20勝9敗で地区トップに立っており、1月22日の滋賀レイクスターズ戦も接戦を制して連勝を4に伸ばしている。
好調なチームに勢いを与えているのが、大東文化大から加入した特別指定選手の中村浩陸だ。「自分はシュートに自信があって、縦に切って行ける、得点の取れるガードだと思っています」との自己評価の通り、アグレッシブに自ら仕掛けていく姿勢がチームを押し上げる力になっている。
インカレ終了後にチームに合流し、12月21日のサンロッカーズ渋谷戦でデビュー。この試合でいきなり25分と長いプレータイムを与えられ、チームが連戦をともに制したこともあって信頼をつかんだ。この頃は伊藤達哉がまだ故障明け、合田怜がケガで欠場中とガード陣が手薄だったが、その2人が復帰した今も中村はプレータイムを確保している。
ポイントガードは経験がモノを言うポジション。そこに途中加入の22歳が食い込んでいるのだから大したものだ。しかし本人は「プレータイムをもらっているので、やれている部分とやれていない部分がすごくはっきりしています。自分の中での評価はあまり高くありません」と淡々と語る。
コート上では堂々としている中村だが、『やれていない部分』についてこう説明する。「チームルールの中でディフェンスをするのがまだ全然。相手の利き手を見極めたりができていません。個人としては1プレー目の入りがターンオーバーで入ってしまうことが何試合かあるので、そこは直していかないといけない」
「責任を持ってプレーしなければならない」
では、彼にプレータイムを与えている天日謙作ヘッドコーチはどう考えているのだろうか。それを問うと「私は達哉みたいに積極的な選手が好きなんですが、浩陸は攻めすぎず、消極的すぎず。そこが良いんです(笑)」との答えが返って来た。パスとドライブを駆使して常に能動的に仕掛ける伊藤に対し、他の選手にボールを預けた後は様子を見ているだけのこともある中村に、指揮官は「なんでやねん、と(笑)」と内心ツッコみながらも、その組み合わせの妙を気に入っている。
今シーズンから大阪の指揮を執る天日ヘッドコーチは『走るバスケ』を掲げているが、帰化選手のアイラ・ブラウンを含むビッグマン3人はコートに立っている時間が30分以上と長く、ガード陣がどれだけエネルギッシュに、なおかつ攻守にメリハリを付けられるかがカギとなる。そういう意味で、メインの司令塔である伊藤と、そこに代わって入る中村のポイントガードとしてのタイプの違いを指揮官は評価している。
中村は「ポイントガードが少ないことが大阪を選んだ理由でした」と明かすが、「最初からこんなにプレータイムがもらえるとは思っていませんでした」とも語る。1試合平均20分以上プレーする現状は勝敗の責任が圧しかかるものだが、中村は「プレッシャーは感じていないですね」とサラリと言ってのける。
彼が感じているのはプレッシャーではなく責任感だ。「チームメートがいる中で自分が出してもらっている以上、責任を持ってプレーしなければならないことは分かっています」
大東文化大の4年生として臨んだインカレが終わってまだ1カ月しかたっていないにもかかわらず、中村はすでにB1で9試合に出場し、21.3分のプレータイムを得て7.4得点、3.1アシストという数字を残している。「大学では自分がフィニッシュに行くスタイルでバスケをやっていましたが、周りを生かすことを覚えました。あとは数少ないシュートチャンスをしっかり決めないといけない。そこで何本かショットを決めることができているのは、すごく成長しています」
ここからは相手も警戒を強め、そう簡単にプレーさせてもらえなくなるかもしれないが、中村は粛々と、そして堂々と自分らしいプレーでプロの道を突き進んで行きそうだ。
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