文・写真=鈴木栄一

日本人がアタックすることはキングスの課題

10月27日、琉球ゴールデンキングスはホームで千葉ジェッツと対戦。前半で15点の大量ビハインドを背負うも後半に追い上げ、第4クォーター早々には2点差にまで縮めたが、そこで息切れ。最終的には61-72、リーグ屈指の強豪である千葉との地力の差を感じる敗戦となった。

ただ、その中でも奮闘していたのが津山尚大であり、そこには攻守の両面においてこれまでにない彼の姿があった。高卒ルーキーとして琉球に入団してからこれまで、津山はシューティングガードとして起用され、プレースタイルも3ポイントシュート中心となっていた。しかし、それが今シーズンはゴール下にアタックして味方のシュートチャンスを作り出すゲームメークの役割も担うようになっている。

津山は言う。「佐々(宜央)さんに、日本人がアタックすることはキングスの課題であり、自分の目標である日本代表、将来の海外進出を目指すためには、アタックできない選手はシューターとして厳しいと常々言われています。まだゴール下に入った後のプレー選択に迷いもありますが、アタックしてシュートの確率を上げていければ、海外や代表につながっていくと思います」

よりチームに貢献するため、そして自身のステップアップのために欠かせないと考えてのスタイルチェンジ。まだ試行錯誤の段階ではあるが、「これはもともと、やりたいと思っていたこと。いろいろと新しいものに挑戦することで、自分もどんどん成長していけるので、その点については満足しています」と手応えを得ている。

エースガードとのマッチアップにも意欲と自信

オフェンスにおけるチャンスメークに加え、ディフェンスでも新たな役割も担っている。先日の滋賀戦では並里成、今回の千葉戦では富樫勇樹などスピードを持ち味とする相手のポイントガードを、クイックネスに加え馬力のあるところを買われて密着マークする機会が増えてきた。

この試合、富樫はシュート10本中1本成功のみの7得点。そのうち4得点は終盤のファウルゲームでのフリースローで挙げたもので、実質的には3得点と津山のディフェンスが光った。相手のエースガードとのマッチアップについて、「高校の頃は相手のエースガードとのマッチアップをよくやっていました。相手のポイントを抑えることで、自分もリズムを作っていけるので手応えを感じています」と、相手オフェンスの『起点潰し』にやりがいを感じている。

津山の新しいスタイルへの挑戦がモノになるのかは、言うまでもなくこれからだが、開幕前にリーグ屈指の大型補強を行ったチームにあって昨シーズンからプレータイムが増えていることは成果が出ている証でもある。

ゲームを作りつつ点を取るスタイルを目指して

「手応えと、まだまだという気持ちの半々です。須田(侑太郎)さん、石崎(巧)さんがいて、そこに(欠場中の)古川(孝敏)さんが戻ってきても、僕にしかできない役割はあると思っています。そこは日頃から考えて伸ばしていきたい」と津山は言う。

この『僕にしかできない役割』の一つの理想像がカイリー・アービングだ。「カイリーのようにゲームを作りつつ、シューティングガードとして点もどんどん取っていけるようになりたいです。ボールは運べてもゲームのコントロールはできていないので、そこをしっかり磨いていくことです」

世界標準のガードになるため今、新たなプレースタイルに挑戦している津山尚大。彼のチャレンジがしっかりと形になる時、それは琉球にとって大きな浮上の起爆剤にきっとなるだろう。