文・写真=鈴木栄一

「ちょっとずつ自分たちのリズムになった」

10月22日の大阪エヴェッサ戦、千葉ジェッツの富樫勇樹は今シーズン最多となる31得点をマーク。77-70での勝利にチームを導く大暴れだった。前日の同カードで、第1クォーターから2桁のリードを許し68-84と完敗を喫した千葉は、22日も第1クォーターで8点のリードを許す嫌な展開となった。しかし、第2クォーターに富樫を中心とした持ち味の高速バスケットボールを繰り出すと、このクォーターに24-12とダブルスコアで圧倒して逆転。後半に入っても富樫が次々とシュートを沈め、粘る大阪を振り切った。

「第1クォーターから昨日の反省を生かしてハードなディフェンスができました。リバウンドのこぼれ球が相手側にこぼれたり、シュートが入らなかったりしましたが、オープンなシュートは打てていました。点数で負けてはいましたが、内容的には昨日みたいな試合ではなかった。試合開始から自分たちのプレーを続けたことで、ちょっとずつ自分たちのリズムになったと思います」

このように富樫は試合を振り返り、リードを許した第1クォーターに関しても前日とは全く違う内容で、まずは試合の入りでしっかりできたことが勝利につながったと見ている。そして何よりも守備の立て直しに成功したことが最大の勝因であり、しっかりした守備によって、自分たちの得意とする速い展開にどんどん持ち込めたと強調する。

「今日もオフェンスは、最初の方はリズムが良くなかったです。ただ、その中で我慢できました。昨日はディフェンスで集中しきれていないところがあった。相手のどこが強くて、どこを守らないといけないかというところに、あまり集中できていなかった。ハードなプレーはしていたけど、スマートではなかったと思います」

「この5勝7敗は、とても印象に残っています」

「ディフェンスの部分で今日は40分間しっかりできました。相手にタフショットを打たせたことでロングリバウンドになり、そこをしっかり拾えたことで走ることができました」

この日の千葉が、どれだけ自分たちの目指す『走るバスケットボール』に持ち込めたのかは、富樫の得点の内訳が端的に示している。「今日は特にほとんどのシュートがレイアップでしたが、それは走る展開にできたからこそ。チームメートがディフェンスを頑張り、リバウンドを全員で取る。チームとしてのプレーができたからと思います」と語るように、この日の富樫は速攻からのレイアップとゴール下でのシュートが大半だった。2点シュートは15本中11本成功、3ポイントシュートは2本打っていずれも外している。3ポイントシュートでの得点がないのに大量点を挙げたのは、富樫にとって稀なことだろう。

これで6勝2敗として千葉だが、富樫は昨シーズンからの成長をしっかりと感じている。「昨日の場合、20点差がつく前に修正できれば良かったのですが、それは終わったこと。次の日にしっかり修正できて、こういう試合ができたのはチームとしての成長だと思います。昨シーズンは開幕5勝7敗で入っています。この5勝7敗は、とても印象に残っていますが、それに比べたらかなり良いです」

「チームとしては入りを大事にしていきたい」

今後のさらなる進化に向け、富樫が一つの鍵と見ているのが第1クォーターの入りだ。各チームとも千葉が勢いに乗ると手がつけられないことは理解しており、第1クォーターで、オン・ザ・コート「2」を選択しての「2-1-1-2」と、先手を取ることを重視している。一方の千葉は、開幕から帰化選手マイケル・パーカーの存在もあり、オン・ザ・コートを「1-2-1-2」で固定している。

「開幕節の西宮以外、全部相手は第1クォーターにオン2で来ています。これからも結構多くなってくると思います。チームとしては入りをしっかり大事にしていきたい。第1クォーターで勝てれば、第2クォーターではこちらのオン・ザ・コートの人数が上回りますし、かなり自分たちのリズムにできる。今後は試合の入りが課題となります」

6勝2敗という成績もさることながら、内容でも安定のパフォーマンスを見せている千葉。その中心にいるのが富樫であることは間違いない。31得点が目立つが、しっかり6アシストもマーク。これで開幕8試合の内、7試合で6アシスト以上を記録している。一方で今シーズン最低の内容で完敗だった21日の試合では3アシストのみ、シュート成功率も計12本中3本成功と低調だった。あらためて千葉のチームとしての高いパフォーマンスには、富樫のプレーが大きな肝となってくることを強く感じた2日間だった。