プレータイムを求めて移籍して得た『経験』
外国籍選手と帰化選手が大半のインサイドにおいて、日本人選手で確固たるプレータイムを得ている選手といえば竹内譲次、竹内公輔、太田敦也といったベテラン勢の名が挙がる。そんなBリーグにおいて出場機会を伸ばしている貴重な若手ビッグマンが、シェーファー・アヴィ幸樹だ。
アルバルク東京から滋賀レイクスターズへとレンタル移籍したアヴィは、開幕からローテーション入りを果たし、2019年内は26試合出場で1試合平均14分以上のプレータイムを獲得している。
振り返れば2019年はまさに激闘の1年だった。2018年12月中旬にジョージア工科大バスケットボールを退部してプロ転向し、A東京に入団。そして夏はワールドカップに出場し、滋賀にレンタル移籍で加入した。
「初めてのプロシーズン、そこから移籍を決断し、夏の間はワールドカップでいろいろな経験ができました。あと少しで22歳と若いので、まだまだこれから吸収できることはたくさんあります。もっと成長できると思います」
本人がこう振り返る2019年は、実り多き1年となった。ただ、そうなったのは彼の行動力があったからこそ。馬場雄大を筆頭に例外は出てきたが、日本では大学で4年間プレーし、プロに入って出番がなくても移籍するのは数年の修業期間を経た後で、というのが一般的だ。だがそれは『世界基準』では遅い。伸び盛りの20代前半までの時期は、プレー機会を求めてそれこそ1年スパンでチームを変えるのが当たり前だ。
「環境を変えることの恐れはない」
ワールドスタンダードな感覚を持つアヴィはこう語る。「こうやって動いているのは普通の選択です。オリンピックが近いこともあって、競技歴が浅い自分は得られるものはどんどん吸収したい。環境を変えれば違うものが得られます。環境を変えることの恐れはないですし、もう慣れました」
目標とする東京オリンピック出場までに自分の競技力を高めていくには、何が最善なのか。それを最優先に考えた時、彼にとって移籍は当然の行動であり、それによって多くのものを得ている。
「少しずつ自信がついてきました。大学、代表でもアルバルクでもプレータイムがあまりありませんでした。アルバルクではすごく成長させてもらいましたが、試合に普段から出ていないと、いざ出たときに身体は動かない。練習と試合で得られるものは違います。そういった中でプレータイムをもらうことで、試合勘が戻ってきています」
試合に出ているからこそ、あらためて実感できることもある。「このレベルでやれる自信がついたと同時に、足りない部分も試合に出ているからこそ感じることができます。今は普通に充実しています。チームの勝ち負けにかかわってくることで責任感が増してきました」
「チームに勝利をもたらせる選手になりたい」
2020年、アヴィにとって滋賀でチームの勝利に貢献するプレーを見せ、東京オリンピック出場が目標となる。そこに向けて前進している手応えはある。
「ワールドカップのメンバーにも選ばれましたし、ここまでやってきたことが間違っていないと信じています。リバウンド、ディフェンス、泥臭いところ、スクリーンとか、自分がやるべき仕事は分かっているのでそれを突き詰める。そして試合でもっとなめらかに動けるようになればオリンピックのメンバーに入れる。今は良いところに行けていると思います」
もちろん、さらなるレベルアップへの意気込みも強い。「オフェンスではもっとアタックしていきたい。インサイドでシールしてのフックシュート、自分より小さい相手、他の日本人選手とのマッチアップではポストアップして積極的にシュートを狙っていく。ディフェンスでは外国人選手を1対1で止められるように。チームに勝利をもたらせる選手になりたいです」
新天地でプレータイムを得ることで着実に進化を遂げているアヴィ。滋賀のエース、ヘンリー・ウォーカーの本職はスモールフォワードであり、彼をそのポジションで使うにはインサイドを日本人ビッグマンが担う必要がある。彼が存在感をより高めることは、Bリーグで日本人の若手ビッグマンが育つモデルケースとなるし、滋賀のステップアップにも繋がる。
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