トリプル・ダブルは「去年も大濠戦で」
福岡第一がどの試合でも底の知れない強さを見せ付けて日本一へと駆け上がったウインターカップ。『チームの顔』である河村勇輝と同じぐらい、替えが効かないという意味ではそれ以上に勝利への貢献度が高かったのがクベマジョセフ・スティーブだ。特に福岡大学附属大濠との決勝では31得点20リバウンド11ブロックのトリプル・ダブルを記録。当然のように大会ベスト5にも選ばれた。
生まれ持ったサイズの身体能力をフルに生かしたプレーに、「日本人では太刀打ちできない」と思うとともに「ずるい」と感じた人もいるかもしれない。だが、彼もまた福岡第一の一部員として3年間の高校バスケで努力を重ねて今のレベルまで一歩ずつ上がってきた。
試合後のスティーブは自身のプレーをこう振り返る。「自分の100%をファイナルで出せて良かったです。ディフェンスとリバウンドとブロックショットはいつも頑張っているけど、先生のおかげです。ボックスアウト、ヘルプ、ルーズボールはすべて先生に教えてもらいました。特にリバウンドとブロックはこの1年間ですごく上手くなったし、それを今日出せてうれしいです」
「大濠はセンターの木林(優)君が3ポイントシュートもダイブもあるので、どう守るかは難しいです。横地(聖真)君のダイブもあって、周りも助けるのですごく難しかったです。でも今日はやっぱりまずディフェンス、リバウンドで自分が絶対負けないようにしました」
ブロックショットで2桁を記録するのは稀だが、スティーブ本人によれば「去年のウインターカップ予選でも大濠相手にトリプル・ダブルをやりました」とのこと。留学生の彼に両校のライバル意識は関係ないはずだが、この3年間で「やっぱり大濠だけには負けられないです。大濠との試合で100%が出せて良かった」と最後まで対抗意識を見せた。
「大学に行ったらオフェンスを頑張る」
ちなみに、優勝後に行った取材はすべてスティーブが日本語で答えている。2年生で優勝した時には本当に片言の日本語しかできなかったし、話すこと自体を避けているようにも感じた。だが今は、大会前に取材して慣れたこともあるだろうが、質問の意図を理解して自分の考えをきっちりと言葉にできるようになった。この部分でも3年間で相当な努力があったであろうことは忘れてはならない。
この先の目標についても、スティーブはこう語る。「日本の大学に進みます。大学を卒業するまでは日本にいます。プロバスケットボール選手になりたいし、Bリーグも考えたいけど、まずは大学で頑張ります。今年はディフェンスを頑張って練習してきたので、大学に行ったらオフェンスを頑張ります。これまであまりやっていないミドルシュートを決めたいです。ディフェンスももちろん頑張ります」
近年ではどの大会でも印象深い留学生プレーヤーの活躍があったが、スティーブの実力は頭一つ抜けていると言える。試合の流れを読んでハッスルすべき場面を見誤ることがないし、入れ込みすぎるとファウルがかさむのが怖いことを理解し、リスクを避けて、なおかつ激しくディフェンスする術も心得ている。技術的にはまだまだ向上の余地があり、大学でさらに次のレベルへと進化することを期待したい。