河村勇輝

河村勇輝が『堅守速攻のスイッチ』を入れる

ウインターカップの男子準決勝、福岡第一(福岡)と東山(京都)が対戦した。

前半は完全に東山のペース。じっくり攻めることで試合のテンポをスローに持って行き、ムトンボ・ジャン・ピエールのスクリーンから作り出したズレを巧みに突くことで先行する。守備では福岡第一が得意とする速攻を出させず、206cmでウイングスパンもあるピエールがリムプロテクターとして驚異の存在感を発揮。ドライブでゴール下まで切り崩されてもピエールが余裕を持ってブロックショットを見舞い、その圧力に押されて福岡第一のシュートが入らない。

こうして第1クォーターを18-10とリードした東山が主導権を握り、前半を38-28で折り返したのだが、後半になると流れは一変する。

きっかけを作り出したのは福岡第一の司令塔、河村勇輝だ。「このチームはどこからでも得点できるので、自分はみんなが気分良くプレーできるようにコントロールする」とここまで繰り返してきた河村だが、チームのピンチに個人技を解禁する。目にも止まらぬドライブから連続得点を上げると、福岡第一の本来のスタイルである堅守速攻のスイッチが入った。

福岡第一

「継続することで東山さんの体力を消耗させた」

受けに回っていた姿勢をあらためて、オールコートでプレッシャーを掛ける『攻めるディフェンス』が機能する。井手口孝コーチは「前半の終わりからオールコートをやって、終わり方は悪くなかったのでそのまま。継続することで少しずつ東山さんの体力を消耗させられた」と語る。

オフェンスだけでなくディフェンスでもチームを引っ張った河村は、後半になってスイッチが入った経緯をこう説明する。「1試合を通して自分が出ないといけないと思っていたので、ファウルを意識して前半はボールのプレッシャーを少し甘くしてしまいましたが、ファウルも少なかったですし後半はプレッシャーを掛けることを意識しました」

河村がボールを運ぶ選手に強烈なプレッシャーをかけ、小川麻斗は前半に東山の得点源となっていた脇阪凪人に執拗なディナイでボールを入れさせない。こうしてリズムを崩したところで、チームNo.1のディフェンス力を持つ内尾聡理が、ズレを作ろうとする東山の仕掛けを見極めてスティールを連発する。

井手口孝

第3クォーターを30-11と圧倒、一気呵成の逆転劇

かくして福岡第一のトランジションは炸裂した。河村が豪快なダブルクラッチを沈めたかと思えば、強烈なボールプッシュから全速力でゴール下に飛び込むクベマジョセフ・スティーブへパスを合わせる。続いてのトランジションの機会を東山が止めるも、これがアンスポーツマンライクファウルに。

タイムアウトを取っても福岡第一の勢いは止まらない。この第3クォーターを30-11と圧倒して、一気に試合を引っくり返した。

58-49と福岡第一がリードして最終クォーターへ。強烈なプレッシャーディフェンスの連続と、そこからの電光石火のトランジションは、東山からリードだけでなく集中力も奪っていった。東山の反撃は単発に終わり、最終スコア71-59で福岡第一が逆転勝利を収めている。

もう一つの準決勝では福岡大学附属大濠(福岡)が北陸(福井)を破り、ファイナルでの『福岡決戦』が実現。決勝は明日12時ティップオフとなる。