ブルズ

8勝17敗の成績よりもチーム内の不協和音が課題

ジム・ボイレンはスパーズでグレッグ・ポポビッチの右腕を務めた後にブルズに移り、アソシエイトヘッドコーチを経て昨シーズン途中からブルズを率いている。しかし、昨シーズンは22勝60敗と低迷し、今シーズンも8勝17敗と下位に沈んでいる。

ただ、東カンファレンスにはブルズの下にまだ4チームがいるし、プレーオフ圏内までは3ゲーム差。まだシーズンを投げ出すには早いのだが、ニックスのデイビッド・フィズデイルに続いて解任されるのはボイレンだとの見方が広まっている。成績よりも、ボイレンと選手たちの関係が悪化しているというのが、解任説の根拠だ。

昨シーズンの就任から間もない12月8日、ボイレンが率いるブルズはセルティックスに77-133の大敗を喫した。56点差はブルズ史上最大の点差での敗戦である。この試合でボイレンは、スターターを早々にベンチに下げており、その理由を翌日の練習に体力を温存するためだと説明した。この決断に対して一部の選手が怒り、練習をボイコットしようとした。結局、他の選手が「過激な手段ではなく、プロフェッショナルな振る舞いをしよう」と説得にあたったことでボイコットは回避された。

今シーズンに入ってからも、ボイレンはザック・ラビーンと一悶着を起こしている。11月のヒート戦、スターターだったラビーンは試合開始3分で交代を命じられた。ボイレンは交代の理由を「ディフェンスで酷いミスが3つあった」と答え、ラビーンに対する叱咤激励だと強調した。

そのラビーンは「自分を信頼していない人を信頼するのは難しい」と語り、コーチとの信頼関係が揺らいでいることを明かす。後日、2人は1対1で話し合いの機会を持ったが、問題が本質的な解決に至ったかどうかは分からない。大量の選手交代に試合直後のフィルムセッション、厳しい練習などボイレンの指導方法に疑問を持つ選手は多いとの声は、今もロッカールームから漏れ伝わってくる。

ただ、現時点ではボイレンが解雇される可能性は低い。ブルズのジョン・パクソン副会長はボイレンの厳しい指導を気に入っているという。実際、パクソンとガー・フォーマンGMは今年のオフにボイレンに契約延長を申し出ている。また、チーム不振の原因はヘッドコーチの手腕だけでなく、オットー・ポーターJr.、チャンドラー・ハッチソンら主力のケガの影響も大きい。

ラビーンを交代させたゲームの数日後、記者からブルズが勝てるようになると信じているかと聞かれたボイレンは、映画『フィールド・オブ・ドリームス』の名台詞を引用し「それを作れば、彼は来る」と答えた。

12月9日のラプターズ戦、1点ビハインドで迎えた残り8秒、ザック・ラビーンが果敢なアタックを仕掛けるも、フリーの味方が見えておらず、立ちはだかるマルク・ガソルをかわすことができずにシュートが外れ、92-93で敗れた。

いまだそれはできていないし、彼も来ない。ブルズが本当に勝てるようになるのか、その時ボイレンがヘッドコーチを続けているのか。ブルズの未来はどこへ向かうのだろうか。