いくら強豪校であっても、3年連続でウインターカップに出場できるチームは限られている。さらに1年生から主力として試合に出ていた選手が複数いるとなれば、その数はさらに限られたものとなる。精華女子ではエースの三浦舞華、司令塔の樋口鈴乃、センターの木村瑞希の3人がそれにあたる。高校バスケ最後の大会に臨む3人に、意気込みを聞いた。
「毎日の練習がベスト4を懸けた試合だと思って」
──まずは自己紹介をお願いします。レオ(三浦)とレグ(樋口)は以前にも取材しているので、木村選手を紹介してください。
木村 熊本出身の木村瑞希です。コートネームはセルです。中学の実績はジュニアオールスター出場で、1年のウインター予選からスタートで試合に出ています。
三浦 セルは良い時に決めてくれる選手です。外のシュートが入らない時でも中があるから安心してシュートが打てます。
樋口 精華のお母さんですね。全部を包み込んでくれる雰囲気があって、困った時にそばにいてくれる安心感があります。でも、たまに笑顔のつもりなのに真顔の時があって、「面白い!」って言ってるのに真顔の時があります。
木村 自分では笑ってるつもりなので、「えっ、なんで真顔!?」って驚かれるんです……。
──今回はチームの成長について聞かせてください。ウインターカップ予選まででチームとして苦労した部分、個人として成長できた部分はどこだと感じますか?
樋口 毎週やっているモチベーションミーティングがあるのですが、9月半ばぐらいに2年生から「3年生が思ったことを伝えてほしい」と言われたことで、3年生が横の繋がりをもっと強くして、どんどん思いを伝えるようになりました。そこが一番苦労したところですが、そこからチームの雰囲気も変わったと思います。
三浦 私たちは全国ベスト4を目標に掲げていて、練習からそれを意識してきました。毎日の練習がベスト4を懸けた試合だと思ってチーム全員でやってきました。だからいつも全力だし、疲労も半端ないんですけど、やっぱりそうやって意識すると雰囲気も全然違ってきます。ウインターカップの予選もすべて全国ベスト4の懸かった試合だと思って全員で取り組みました。
木村 練習の時から2人だけずば抜けていて、最初はすごいと思っていたし、一緒に試合に出てプレーも合うようになってくるとすごくうれしかったんです。私が点を取るにしても、自分を生かしてくれるのはこの2人だし、「お母さんみたい」なんて言われますが、支えられていると感じています。私はあまり足が速くないので、スリーメンの時とか2人についていくのに必死です。足を引っ張っちゃダメだという一心でやっていて、今ではちゃんと合わせられるようになりました。そこは自信になりました。
「私がしっかり取ってブレイクに繋げなきゃいけない」
──組み合わせ抽選の結果を見て驚いたと思います。初戦が八雲学園で、目標のベスト4の前には桜花学園が立ちはだかります。全国で強豪と当たる心境はどんなものですか?
樋口 「毎日がベスト4」だと思ってやってきました。八雲は昨年負けたチームだから、まずは絶対に勝ちたいです。ベスト4を懸けて桜花学園と戦えるのはすごく楽しみです。
三浦 八雲には高さでは負けるかもしれませんが、スピードではミスマッチができます。フィジカルでも勝てると思っています。リバウンドに行く時に相手より先にボックスアウトして取られないように食らい付いて、そこから精華の強みであるトランジションの速さで勝ちたいです。
木村 リバウンドがカギになると思うので、私がしっかり取ってブレイクに繋げなきゃいけないと思っています。でも相手の身長が高いから、相手に取らせないことを意識したいです。
──ポイントガードとしての樋口選手の成長をどう見ていますか?
樋口 ガンガンしゃべるタイプじゃないんですけど、コートの中でコミュニケーションを取ること、苦しい時にみんなを集めたりすることができるようになったと自分では思います。
三浦 自分で積極的にコミュニケーションを取ろうとする意識の部分で、レグは目に見えて成長したと思います。ディフェンスも前よりは抜かれなくなりました。まだまだですけど(笑)。
──三浦選手はスコアラーとして、自分の成長をどう感じていますか?
三浦 ディフェンスを見ながら攻めることができるようになったと思います。以前はとにかく突っ込んで、打てる時は打つ、打てなかったら考えるみたいな感じでしたが、今はディフェンスを観察してスクリーンの使い方を工夫したり、ドリブルの緩急を付けたりしています。あとは試合中にちょっとだけですけど自分の思いをチームメートに伝えられるようになりました。
樋口 プレーは1年の頃からすごかったけど、今はエースという感じがします。ボールを渡したら1対1で絶対に点を取り続けるというか、リングに向かう気持ちが切れなくなりました。
木村 ブレイクを基本にしているから、以前から走るプレーは得意でしたけど、今は落ち着いて攻めることもできるようになったと思います。インサイドを見たり、たまにガードとしてゲームメークしたり、そういうプレーの幅の面ですごく成長したと思います。
──木村選手の成長はいかがですか?
木村 プレー中に要求できるようになりました。「こっちに動かして入れろ」とか、どのタイミングでどんなパスが欲しいのか、自己主張してボールを呼べるようになったのは成長です。
樋口 1年の頃から落ち着いてプレーはできていたけど、今言ったみたいに自己主張の面では本当に成長したと思います。練習中も私に一番要求してくるのはセルだし。ガード陣がミスした時に「もっとこうしてほしい」とすごく伝えてくれるようになったから、すごく変わりました。
「感謝の気持ちを持って、思いをすべてぶつける」
──3人とも1年生から試合に出て、いろんな経験をする中で成長してきました。そうして迎える最後の大会、高校バスケの集大成となるウインターカップに、どんな気持ちで臨みますか?
樋口 3年間やってきましたが、いつもチームの目標の一歩手前で負けて達成できずにいます。1年の時も2年の時も、自分たちが目標としていた試合を観客席から見るのはすごく悔しかったから、今年は絶対に目標を達成してウインターカップのメインコートに立ちたいです。今まで3年間支えてくれた家族だったりチームメートだったり、そういう人たちへ感謝の気持ちを持って、自分たちの思いをすべてぶつける大会にしたいです。
三浦 大上(晴司)先生に繋がりがあったお父さんが勧めてくれなければ、私は精華のこと自体を知りませんでした。お父さんは宮城県で教員をしているから、最初は県外には出さないと言っていたみたいですけど、結局は私が行きたいなら行って来いと背中を押してくれました。だからまずはお父さんに感謝しないといけないです。やるしかないと思って来たけど最初はスピードがあるだけで、あとは全然できない悲惨な感じだったのを、大上先生がイチから教え直してくれて、一つずつ成長してきたと思います。今の自分があるのはいろんな人たちのおかげで、恩返しするにはチームの目標を達成して、精華の良さを全国に知ってもらうことだと思っています。
木村 私も最初は精華という学校があることも知りませんでした。熊本から出てくる時は不安しかなかったですけど、先生にも仲間にも恵まれて、ここを選んで本当に良かったと思っています。レグとレオの2人が活躍するのは絶対に間違いないと思っているので、あとは周りの3人がどれだけやれるか。ウチは小さいチームなので、私はリバウンドを取ることで自分たちが先手を取れるように頑張りたいと思います。自分たちの代である今年こそ絶対に目標を達成して、メインコートで精華のバスケットを全国の人たちに見てもらいたいです。
──全国の舞台で何をアピールしたいですか?
三浦 精華のバスケットはもちろんですが、スコアには出ないベンチの盛り上がりや一体感も見てもらいたいです。私たちは試合前に握手をするのですが、それは試合ができるのは相手がいるからで、それに感謝してお互いに頑張ろうという気持ちの表れです。そういう精華らしさ、精華の良さを知ってもらえるように、感謝の気持ちを持って試合に臨みたいです。