文=丸山素行 写真=鈴木栄一

アーリーカップの収穫は『栃木らしさ』を出せたこと

栃木ブレックスの新シーズンは波乱の幕開けとなった。千葉ジェッツとの『アーリーカップ』初戦で32点差を付けられる大敗を喫したのだ。新しい選手を多く起用するテスト的な采配だったとはいえ、初年度王者の大敗はショッキングな出来事だった。

しかし、翌日の川崎ブレイブサンダース戦では見違えるようなパフォーマンスを披露。初戦は3分間しかプレーしなかった田臥も12分と出場時間を伸ばし、4得点を挙げ健在をアピール。チームとともに田臥の元気な姿を見て、多くのファンが胸をなでおろしたのではないだろうか。

栃木にとってアーリーカップは試運転の場。開幕1カ月前のチーム力を測り、課題をあぶり出す意味では有意義な大会となった。田臥も「アグレッシブにディフェンスから頑張って得点につなげた部分は出せました。そういうところはチームの強さとして全員で作っていきたい」と『栃木らしさ』を出せたことを収穫に挙げた。

「プレーヤーだけじゃなくてファンの方も一緒に戦う」

Bリーグ2年目を迎えるにあたり『追われる立場』としてのプレッシャーを感じるかを問われると「全然ないですね」と即答。「自分たちはさらにチャレンジャーとして挑まないといけない。見ての通り他のチームが強いので、王者なんて、追われる立場なんて余裕を持ってやってる場合じゃない」と慢心は一切見られない。

栃木が所属する東地区は、昨シーズンのチャンピオンシップに出場した8チーム中5チームが集まる超激戦区。それでも「良い意味で自分たちがプレッシャーを持って挑むことができる」と田臥は前向きにとらえている。

栃木は選手の入れ替わりが多く、ヘッドコーチも交代し、大きく様変わりした。それでもファンも含めた「チーム全員で戦う」という姿勢は不変だと田臥は強調する。「チーム全員で戦うというのはこのチームの強さだと思います。プレーヤーだけじゃなくてファンの方も一緒に戦うというのが、このブレックスの強さだと思いますから。今年も応援して一緒に戦ってもらえるようにやっていかないといけない」

千葉戦の不甲斐なさを払拭する川崎戦での奮闘は、ファンに向けたものだったのかもしれない。

「まだまだこうできたな、という部分を自分のモノに」

「田臥ももう年齢的なものもあり、プレータイムをある程度コントロールしなきゃいけない」と長谷川健志コーチが言うように、日本バスケ界を長らく牽引してきた田臥も今年で37歳を迎えるベテランとなった。それでも「毎年いつまでもうまくなっていきたい」と以前から変わらぬ言葉を発した。

「特にコーチが変わったりメンバーが変わったことで、バスケットのスタイル自体はまた新しいものが自分の中でチャレンジできるので、また引き出しを増やしていけるようにやっていきたい」と、向上心はとどまることを知らない。

新シーズンに向けた個人的な目標を尋ねると、田臥はこう答えた。「言葉ではうまく伝えられないんですけど、いろんな感覚的な部分で、昨シーズンは『まだまだこうできたな』という部分がシーズンが進むにつれ、終盤では特に感じるものがあったんです。それをさらに自分のモノにすることで、チームにためにもなるなって感覚があるので、それですかね」

田臥にしか分からない境地なのだろう。少し具体的に聞くと「例えば練習からもそうだし、ベンチにいてもそうだし、コートでプレーしてる時もしてない時も『何ができるのか』を考えながらやっていくこと。それが自分のためだしチームのためにもなるので、そういうチャレンジです」と説明した。

チームの顔ぶれが一変し、東地区の環境も変化した。それでも「自分にとっても、チームにとっても新しいチャレンジができるので昨年以上に楽しみたいです」と語る、田臥のバスケットに取り組む姿勢だけは変わらない。