文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

序盤に大量ビハインドを背負うも、強気のプレーで逆襲

アーリーカップ『東海北陸』地区の決勝は富山グラウジーズと名古屋ダイヤモンドドルフィンズの対戦となった。

両チームともオン・ザ・コート「1」でスタートした序盤を取ったのは名古屋。笹山貴哉を中心としたパスワークで富山のディフェンスを振り回すと、笹山が2本の3ポイントシュートを含む8得点、中東泰斗がキレのあるドライブから3つのシューティングファウルを誘い7得点、張本天傑がギャップを突いて内外バランス良く10得点。自慢の若手トリオが躍動した名古屋が第1クォーターで大量27得点を奪った。

ところが名古屋がセカンドユニットに切り替えたのを機に富山が反撃に出る。第1クォーターのラスト1分を6-0のランでまとめると、第2クォーターに入って爆発。宇都直輝が強烈なボールプッシュでリズムを作り出し、ド派手なコースト・トゥ・コーストを決めてチームを波に乗せる。

ともにオン・ザ・コート「2」、ドリュー・ヴァイニーとサム・ウィラードの外国籍コンビに対し、名古屋も十分対抗できるだけの力があるはずだが、微妙なジャッジにイライラしたクレイグ・ブラッキンズとジャスティン・バーレルが立て続けにテクニカルファウルを受けてしまう。

49-43で始まった後半もいきなり富山が9-0のラン。ようやくランを止めたと思えば今度は笹山がアンスポーツマンライクファウルをコールされるなど名古屋は波に乗れない。

この第3クォーターに目立ったのは富山の小原翼。ブラッキンズとのマッチアップでも臆することなくフィジカル勝負を挑むと、オフェンスでも巧みなフットワークでフリーでボールを呼び込み、落ち着いてジャンプシュートを決めて流れを作った。

3連戦で消耗する富山、勝利を求める気持ちは衰えず

第3クォーターも残り1分半のところで68-54と大量リードする富山がこのまま押し切るかと思われたが、試合はまだまだ揺れた。富山はケガ人がいて9人しか使えない上に、特定の主力にプレータイムが集中しており、ここに来て息切れを起こす。速攻が出せなくなり、ハーフコートオフェンスでもインサイドにダイブする動きがなく攻めが停滞。ボールプッシュする宇都から激しいディフェンスでボールを奪った中東にダンクを見舞われると、連続で速攻を許して名古屋を蘇らせてしまった。

70-62でスタートした最終クォーター、前半は目立たなかった柏木真介にベテランの味を発揮され、バーレルとブラッキンズの重量級コンビを止められず、あっという間に1ポゼッション差に詰め寄られる。その後はリードチェンジを繰り返す大混戦に。

残り2分を切って柏木の華麗なダブルクラッチが決まり名古屋が79-78と逆転すれば、すぐさま宇都がリングに一直線に飛び込みレイアップを沈め再逆転。そして最後は名古屋も足が止まり、バーレル、ヴァイニーと両チームとも主力をファウルアウトで欠く消耗戦となった。

残り36秒、ブラッキンズのタフショットが外れたリバウンド争い、ティルマンの両手に収まりかけたボールをウィラードがかすめ取る。気持ちだけの勝負となった最終盤をこうして乗り切り、ファウルゲームのフリースロー6本をヴィラードがすべて決めた富山が最終スコア86-83で競り勝った。

接戦を落とした名古屋も新シーズンに期待の持てる出来

両チーム通じて最長の36分半、強気のアタックを貫いて23得点5アシスト4スティールを記録した宇都直輝は「人数が少なかったので、決勝というより3日間ともキツかったんですけど、みんなで力を合わせて戦うことができました。この勝ちが自信につながると思います」と満足気。仲間とともにアーリーカップ優勝を祝った。

敗れた名古屋にしても、厳格なタイムシェアはレギュラーシーズンに向けたテストの一環であることをうかがわせる。ティルマン、バーレル、ブラッキンズの外国籍トリオの破壊力はリーグ最強クラス。若手主体の日本人選手も昨シーズン以上の活躍が期待でき、新たに中地区での飛躍が期待される。