渡嘉敷来夢

7連勝も「もっと良いチームになる感触はあります」

Wリーグは開幕から1カ月で代表活動のための中断期間に入った。JX-ENEOSサンフラワーズは開幕戦を落としたものの、その後は7連勝でリーグ首位に立っている。チームを牽引するのはエースの渡嘉敷来夢。中断前の東京羽田ヴィッキーズ戦では、99-74で勝利した初戦は37得点11リバウンドのダブル・ダブルを記録。103-67と大勝した第2戦では早々に勝利を決定づけてプレータイムが19分半と短い中で、15得点11リバウンドと結果を出している。

『女王』の強さはしっかりと発揮できているように見えるが、渡嘉敷は「めちゃくちゃ良いという感じではないですね。でも、これから1試合1試合戦っていく中で、もっと良いチームになる感触はあります」と、まだまだチームはレベルアップできると考えている。

渡嘉敷自身もレベルアップに意欲的だ。アジアカップでは優勝、特にインサイドでの渡嘉敷のディフェンスは日本代表に大きな安定感をもたらしており、そのディフェンス力をもってすれば、国内のライバルは相手にならないのではないか。それを渡嘉敷は「求められているところが違うので、何とも言えない。難しいんです」と語る。

「海外仕様と日本仕様ではまたちょっと違うんです。日本代表ではトム(ホーバス)が求めているプレーをすべきで、オフェンスよりもディフェンスが求められます。試合のたびに求められることが違って、試合の中だったり相手の映像を見て自分自身でアジャストしていく。アジアカップではできたので、そこはあまり心配していません。国内になると小さい選手をうまく守る必要があるし、ディフェンスとオフェンス、中と外のバランスを上手く取りたいです」

渡嘉敷来夢

「自分が求めている理想に少しでも近づきたい」

相手チームからすれば、JX-ENEOSには『当たって砕けろ』の気持ちで思い切りぶつかってくる。前節の東京羽田もそうで、インサイドで渡嘉敷に自由にプレーさせないことがまずは第一の攻略だと激しく当たり、ダブルチームやトラップなど、様々な手で抑えに来た。激しく当たられることには「もう慣れました」と笑みを見せる渡嘉敷だが、相手の対応より自分たちのプレー、パスが出るタイミングややりたいプレーの認識のズレを気にしている。

「相手が激しく寄せていても、とりあえずパスを入れてほしいと思うことがあります。ボールに触れられれば身体を張って良かったと思えるし、別に自分はパスを出せない選手ではないので、一度入れて展開することでチームのオフェンスにもっと良い流れができると思っています」

日本代表では勝利のために徹底したチーム戦術の遂行が求められるが、JX-ENEOSでプレーする際には、自分の持てる能力を最大限に発揮したい、チームメートにもそれを引き出してほしいと渡嘉敷は願う。「誰がどうとかの話ではなく、自分が求めている理想が高くて、それに少しでも近づきたいんです。そのために中だけではなく外のプレーも覚えたい。3ポイントシュートがあればドライブももっと行きやすくなる。自分はドライブもできると思っているし、その武器をもっと良いものにしたい。そのために3ポイントシュートもしっかり練習して決めていきたいです」

ただのインサイドプレーヤーではなく、託してくれればそれだけ活躍の幅を広げられるという思いは、渡嘉敷の次の成長へのモチベーションになっている。「自分ではできると思っているし、託されたら応えられる選手でありたいです。そういう部分でみんなの信頼も得られるようにできたらもっと良くなると思っています」

渡嘉敷来夢

どの選手とも息の合った連携を「練習でしっかりと」

そういう意味で、吉田亜沙美の現役復帰を誰よりも喜んでいるのが渡嘉敷なのかもしれない。東京羽田との第2戦では吉田がスタメン復帰。吉田-渡嘉敷のホットラインはやはりワールドレベルであり、久々のプレーであっても渡嘉敷は十分な手応えと楽しさを感じていた。

「リュウさん(吉田)は自分の欲しいところが分かるし、逆にリュウさんが今自分に取ってほしいんだなっていうのも分かるので、そこはすごくやりやすい。今はリュウさんがいない間のフラストレーションが解消されているな、と感じながらプレーしていました(笑)」

吉田との息の合った連携を、JX-ENEOSと日本代表の他のポイントガードとも築いていくことが今後の渡嘉敷の一つの目標となる。「リュウさんは分かっているからパスが出せますが、他のチームのポイントガードにそれが分かるかと言われたら簡単じゃないです。そこはコミュニケーションを含めて、しっかりと練習の中でやっていけたらと思います」

アジアのトッププレーヤーであっても、まだまだやらなければならないことは多い。渡嘉敷は一つひとつの課題にひたむきに取り組んでいる。