取材=丸山素行

元日本代表テクニカルアドバイザーによる密度の濃い練習

昨日、アルバルク東京の練習がメディアに公開された。代表活動を行っていた田中大貴と馬場雄大がチームに合流し、外国籍選手3名も揃い、新シーズンを戦うすべての選手が参加した。

A東京の指揮を執るのは日本代表のテクニカルアドバイザーを務めたルカ・パヴィチェヴィッチ。代表の頃からディテールにこだわる指導で知られ、昨日の練習でもその細やかな指導は健在だった。

アップ代わりの速攻の練習では「相手のステップに合わせてパスをしろ」と注文をつけた。また日本代表の強化合宿を担当していた時と同様に『強度』を求めた。特にディフェンスでは「フィジカルにもっと激しく」と指示を出していた。

ハーフコートの4対4ではディフェンスが不利な状況からスタートし、イレギュラー時のリカバリーのルールを身体に染み込ませていた。特筆すべきはそのスタートの合図だ。ディフェンスの4人が床を両手で叩いてから始めるという、まるで部活のような手法だ。「連帯感を持たし、不利を挽回するための気合いを注入」という意図だとルカコーチは説明する。

日常的に行われる日本代表同士のマッチアップ

1番、2番&3番、4番&5番とポジションごと3つのグループに分かれて行われたハーフコートの1対1では、田中と馬場の日本代表同士のマッチアップが実現し、バチバチにやりあっていた。

田中は馬場をこう評する。「個人的な意見ですが、彼の一番良いところはディフェンスだと思います。反応が早くスティールも得意ですし、ディフェンスリバウンドもとれます」。そんな日本トップクラスのディフェンダーとの1on1が日常的に行われる環境は、田中に限らず誰にとっても大きなプラスとなる。「彼と普段から切磋琢磨して、お互いに高め合っていきたい」との田中の言葉には期待が持てる。

A東京は今オフに小島元基と安藤誓哉を獲得。新たなポイントガードとの連携についても田中は「心配してない」と頼もしい言葉を発した。「誓哉に関しては代表でも一緒にやってます。大学の頃から彼のプレーは見てますし、非常にスマートな選手だと思うので、お互いに感覚というかそこまで合わせよう合わせようとする必要はないのかなと。回数を重ねれば合ってくると思うので、そこまで心配してないです」

真のエースへ「まだまだ理解しなきゃいけない」

またA東京の大きな変化は、田中とともにダブルエースとして活躍した、元NBAプレーヤーのディアンテ・ギャレットと再契約を結ばなかったことだ。チームハイの18.1得点を挙げたギャレットの退団により、田中には昨年以上に得点面での期待がかかる。「ルカの求めるオフェンスはピック&ロールが多いです。そういったところで去年よりも攻撃する回数が増えるのかなと感じるので、それに伴い得点も伸びていくんじゃないかと考えています」と言葉こそ控えめながら田中には自覚がある。

「去年とヘッドコーチが変わってバスケットのスタイルも違いますし、去年のスタイルで点数を取るのと今年のスタイルで点数をとるのではまた違ってくるので、自分もまだまだ理解しなきゃいけないことが多いです」とエースは開幕までの準備に余念がない。

「リングにアタックする回数をもっと増やし、フィニッシュを決めれるようにすること」を課題に挙げた田中は、その課題に向き合うように、練習中からオフェンシブな姿勢を見せていた。このままいけば馬場らとの1on1やルカの指導によって、その課題は解消されるだろう。

すべては公開されなかったが、そんな期待の持てる練習内容だった。