取材=丸山素行

「子供たちの育成について使命感を持ってやっています」

バスケットボール界でJX-ENEOSと言えば、吉田亜沙美や渡嘉敷来夢など日本代表選手を多数輩出し、Wリーグ9連覇中の『女王』であるJX-ENEOSサンフラワーズが頭に浮かぶ。その一方で企業として力を入れているのが普及や育成活動だ。豊富な知識と経験を持ったサンフラワーズのOGが、年間を通じて日本各地でクリニックを実施し、レベルに応じた指導を行うとともに、指導者の育成も行っており、その活動は未来につなぐイベントとして『東京2020参画プログラム』にも認定されている。

「JX-ENEOSは子供たちの育成について使命感を持ってやっています。バスケを広めたいという思いで、会社としてもコストをかけてこのような活動を行っています」。そう説明するのは、JXTGエネルギー株式会社企業スポーツ室アシスタントマネージャーの菊池明人氏だ。

中でも最も規模が大きいのが、8月21日から2泊3日で行われたサマーキャンプだ。2010年にスタートし、今年で8回目を迎えたこのキャンプには全国から35名の女子中学生が集まった。

このキャンプでは①人を尊重する②自律する③挑戦する④自分を表現する⑤真剣に楽しむという、5カ条を重んじている。スキルの向上だけでなく、「合宿形式で友情や連帯感、協調性を育む」ことも目的にしていると菊池氏は説明してくれた。

専任コーチにサンフラワーズのOGを起用する充実の指導

今回のキャンプでメインコーチを務めたのは大山妙子。JX-ENEOSの前身にあたるJOMOの黄金時代を支え、アトランタとアテネの2回のオリンピックに出場したレジェンドだ。練習内容は基本姿勢から足の使いかたなど、基礎的なことからスペースの使いかたなど高度なことまで多岐にわたる。「個人のスキルを上げることはすごく大事です。その子に合った技術を上げてあげる手助けができればと思っています」と大山。

コーチとしての一番の使命はスキルアップかもしれない。だが大山は上述した5カ条も同様に大事にしている。「団体の中で自分をアピールできるかできないかはとても重要です。特に今はコミュニケーションが取れないお子さんが多いので、そのような部分もこのキャンプで学んでほしいと思っています。選手という以前に、一人の人間としての行動を大事にしています」

こうした強い思いは子供たちに確実に伝わっていた。

千葉県柏市で行われたキャンプに遠く鹿児島から参加した選手は「バスケの向上はもちろんですが、全く知らない人と友達になれて、人とのかかわり合いを学べました」と語る。また青森から参加した選手は「いろんな出身地の人とバスケをして、いろんな考え方を参考にできた。初対面の人とやるのはワクワクします。知らない人とやれたことが一番」と目を輝かせた。

密度の濃いクリニックを年に約70回開催

最終日、ゲーム形式の後に行われたキャンプの締めくくりはフリースローだった。4グループに分かれ、グループの全員がシュートを決めるまで続けられ、外した選手以外が走るという厳しいもの。プレッシャーと責任感に苦労しながらも、やり終えた皆の顔は充実感と達成感に満ちていた。

大山もこうした活動を通し、生徒に教えられることは多いと語る。「指導方法に正解はないと思います。なので自分も向上心を持ってやっていかないといけないですし、日々勉強ですね」

「その年その年によってやんちゃな年や大人しい年もあるので、そこがまた面白い部分です。今年は手のかからない選手が多かったです」と全日程を終了し、どこか寂し気に話す大山の表情が印象的だった。

サマーキャンプは年に1回だが、こうした密度の濃いクリニックを年に約70回も開催しているというから驚きだ。JX-ENEOSは日本バスケの発展と向上にこれからも尽力していく。