「接戦にすら持ち込めず、今は失望感しかない」
日本代表はワールドカップを5戦全敗で終えた。過去最高のタレント力を持った代表チームとして挑んだ大会での惨敗に、ニック・ファジーカスは「接戦にすら持ち込めなかったことに、今は失望感しかない」と沈んだ表情で語る。
現状、世界のトップレベルとはあらゆる面で差があることは否めないが、その中でもファジーカスは「オフェンス、ディフェンスともに遂行力だ」と課題を挙げる。「毎試合、世界のハイレベルなプレーに対応しなければいかなかったが、中1日で試合が続く中ではそれもできなかった。そうなったら勝つことはできない」
またファジーカス自身も、アジアではサイズと技術を生かしゴール下で圧倒的な存在感を発揮できたが、ワールドカップでは相手ビッグマンにパワーで押し込まれた。また、世界のトレンドである3ポイントシュートを狙ってくるビッグマンをケアしきれない場面も目立ち、彼自身も世界の壁を感じた。
「オリンピックは世界のトップ12が出場するからワールドカップよりレベルが高い。今のままだと今大会以上に自分たちのプレーを遂行するのは難しい」とファジーカスも危機感を語る。
「いまだに僕をリスペクトしてくれる人がいたらいい」
チームとして結果は残せず、ファジーカス個人も消化不良に終わった感は強い。アジア予選ではオフェンスは彼が中心だったが、今大会では八村塁がエースとなり、ファジーカスがゴール下でパスを受けたり、彼を起点とする攻めはほぼ見られなかった。それは八村が離脱した後も基本的には変わらなかった。
それでも「ボールタッチが少なくても得点できた。シュートタッチが良くて、特に3ポイントシュートはこれまでにないくらいだった(16本中9本成功)」と振り返るように、オフェンスのファーストオプションではなくなったにもかかわらずアメリカ戦を除く4試合で2桁得点をマーク。さらにニュージーランド戦では31得点と爆発しており「ゲームプランとして僕にボールを集めない状況でもシュート決めたことで、いまだに僕をリスペクトしてくれる人がいたらいいと思う」とスコアラーとしての意地を見せた。
最後に「負け続けることはメンタル面で厳しかった」と素直な感情を吐露したファジーカスだが、それでも強い気持ちを保てていたのは次の思いがあるからだった。
「僕はずっと、日本代表として戦えることにプライドを持って試合に臨んでいる」
オリンピックに向けては、現状に危機感を露わにする一方で、「今回の雪辱を果たすセカンドチャンスが与えられる」とポジティブにもとらえている。このままでは終われない、とファジーカスのような強い決意でこれから各選手がそれぞれリーグ戦で個の力を磨いていくことが、まずは代表再建へのファーストステップだ。