文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

3試合を終えて平均18.7得点、ここまで大会トップの数字

U-19男子日本代表はグループリーグの3試合を終えた。注目の八村塁は、ここまでエースと呼ぶに相応しい働きを見せている。3試合で56得点、1試合平均18.7はここまで大会トップの数字。この調子をキープすれば、U-17世界選手権に続くアンダー大会での得点王も十分に狙える。

しかし、カナダ戦を終えた直後の本人は「個人的にはシュートの確率があまり良くないので、上げていかなきゃと思っています」と浮かない顔。ここまでの3試合でフィールドゴール41本中23本(56.1%)と上々の数字を残しているが、あくまで最低ラインというのが本人の認識だ。

実際、まだ八村は本領発揮には至っていない。初戦のスペイン戦では20得点を挙げたが、後半にはスタミナ切れで失速。前半だけで16得点を荒稼ぎしていたのだから、ペース配分ができていれば得点はもっと伸びただろう。八村の失速はチームも巻き込む結果となってしまった。

続くマリ戦ではファウルトラブルに陥り15得点止まり。こちらも安定しないジャッジに悩まされた不運な結果と見ることもできるが、国際大会ではもう少し慎重にプレーすべきだった。今後、相手が八村にファウルさせる作戦を仕掛ける可能性は十分にある。その対策も、八村個人はもちろん、チームとしても打っておく必要がある。

その点、カナダ戦では次を見据えてプレータイムを制限したにもかかわらず21得点をマーク。厳しいプレッシャーに遭いながらもインサイドで身体を張り、9本の2点シュートを沈めている。この試合だけアシストが0だったのは気になるが、先の2試合で10本中3本成功と散々だったフリースローも3本中2本を沈めて持ち直している。

課題はいくつかあるものの、数字だけではない部分で八村らしさが出ているのも事実。チーム合流から開幕までが短く懸念された連携についても、八村への合わせは十分に機能している。ゴール下に限らず、ミドルレンジからのジャンプシュートを高確率で決めているのも、守る側から見れば厄介に違いない。

3試合すべてでダブル・ダブルを記録するのは八村ただ一人

もちろん、得点だけが八村の仕事ではない。むしろインサイドでの相手ビッグマンに対する守備こそ最優先すべき役割。身長で八村の方が低いミスマッチはしばしば起きているが、粘り強く貼り付くことで相手に自由を与えず、そしてすべてのリバウンドに跳び付いていく。消耗が激しいインサイドの守備をこなしてなお、ここまでトップの得点を挙げているのだから恐れ入る。

ちなみにリバウンド平均11.0は大会5位の数字で、こちらも上出来。ここまで全チームが3試合を戦ったが、そのすべてでダブル・ダブルを記録しているのは八村ただ一人だ。

今夜が勝負のイタリア戦。その後も順位に直結する重要な試合が続く。「明日は大事な試合なので、チームのやるべきことをもう一度みんなで確認したい」と八村は言う。真剣勝負を重ねる中で連携はさらに向上するはず。いくつかの課題を修正できれば、攻撃でも守備でももっと活躍できるはずだし、周囲が頑張りエースに依存しないチームもまた、大きな伸びしろを秘めている。