中村颯斗

「僕の一番の武器はシュート」原点回帰で苦境を打破

6月6日、東山はインターハイ予選の決勝で京都精華学園に敗れた。京都府のレベルが高いとはいえ、全国制覇を目指すチームが出場を逃したことのショックは大きかった。

その3週間後の6月28日、近畿ブロック大会の決勝で両者は再び対戦した。前日の準々決勝で大阪学院に勝利するも、格下の相手の奮闘ぶりが目立つ試合で、東山としてはインターハイ予選での敗戦のショックを払拭できる内容ではなく、それは高野山との準決勝も同じだった。

いまいち手応えを得られないまま迎えた京都精華学園との再戦。リードするものの突き放せず、試合終盤に相手がディフェンスのギアを上げると受け身に回ってしまう。残り4分で14点リードの状況から、東山らしい『攻めのバスケ』に振り切るでもなく、落ち着いて時間を使ってリードを守るでもなく、相手のディフェンスに煽られてミスを連発し、逆に相手が思い切り良く放つシュートが当たって、残り35秒で89-89の同点に追い付かれる。

3分半で2-16のランを浴びており、流れは完全に京都精華学園に傾いていた。直後のポゼッションでも相手のプレッシャーに苦しいエントリーを強いられたが、鈴木勇功とアイコンタクトを交わした中村颯斗が、一瞬の動きでマークを振り切ってリムへと走り、鈴木からのパスを呼び込む。見事な合わせのプレーで中村が決めたシュートがゲームウィナーとなり、東山が辛うじて追撃をかわし、91-89で勝利した。

ゲームウィナーとなった得点を、中村はこう振り返る。「自分の3ポイントシュートが何本か入って、それを相手が警戒してディナイをしてきていました。どこのチームも僕のシュートを警戒するし、そこにカッティングが効くのは勇功も分かってくれているので、目を合わせて『行こう』という感じで、そこにドンピシャのパスが出てきました」

重要な場面でカッティングから得点を狙うのは、府予選の反省から生まれたプレーだった。「あの試合ではチームが苦しい時に、どこか去年の凪くんみたいになろうとして、逆に自分の良さが出せずに、悪いほうに行ってしまいました」

去年のエース、佐藤凪はチームが苦しい時にアイソレーションを多用し、自分でクリエイトして、自分で決める活躍を見せていた。中村は頼れる先輩のイメージを追い求めるあまり、自分らしいスタイルを見失っていた。「僕の一番の武器はシュートなんだから、思い切って打ちなさいと大澤(徹也)先生からもアドバイスをもらいました。凪くんみたいになりたいけど、個人で打開して自分で点を取るより3ポイントシュートを打ちつつ、相手が警戒してきたら今日みたいなカッティングを入れて得点を引っ張るのが僕らしい形です」

中村颯斗

「ピックにこだわらずにいろんな選手が点を取る」

そんな反省があったからこそ、追い詰められた土壇場で合わせのプレーが鮮やかに決まった。「あそこで決めて、一度負けている相手に勝てたのは良かったですが、予選と同じミスを繰り返していたり、今日もまだまだ課題が多いです。決勝でも流れが悪くなって静かになった時に自分が声を出してチームを鼓舞するつもりだったのに、やれませんでした。良いところも悪いところもたくさん出た大会だったので、良いところは自信に繋げて、ダメだったところは克服して、2カ月後のU18日清食品トップリーグに繋げたいです」

頼れる先輩たちの下でプレーしてきた中村も3年生になり、チームを引っ張らなければいけない立場にある。インターハイ予選でいきなりつまずくスタートになったが、「あの日、学校に戻って主に試合に出ていたメンバーでミーティングをして、この負けを引きずっていてもダメだし、冬に勝てるチームになれるように全員が同じ方向を向いて、同じ目標に向かおうと話し合いました」と、その日のうちに意識を切り替えている。

どうしてもショックを引きずる部分はあったが、この近畿ブロック大会で京都精華学園にリベンジできたことで、悪いイメージは払拭できたはずだ。中村も、これを機に個人としてもチームとしても、良い方向に変わっていけると信じている。「あの負けから全員の意識が変わりましたが、僕個人としては自分がもっと変わって、リーダーシップを執らないとチームは伸びないと思っています。練習からもっとチームを鼓舞して、プレーでも引っ張っていけるようになりたいです」

「今年のチームには全員が点を取れる個人技の強みがあると思うので、ピック&ロールを使った東山の伝統であるオフェンシブなバスケをやりつつ、ピックにこだわらずにいろんな選手が1対1でも点を取れて、その中に僕の3ポイントシュートだったり、いろんな点の取り方ができるバスケを、皆さんに見てもらえるように頑張っていきます」