チアゴ・スプリッター

「深夜に親の目を盗んで起き出し、MJを応援したものだ」

チアゴ・スプリッターの2025-26シーズンは予想外の出来事に満ちていた。ブラジル出身の彼は現役時代にスパーズの控えセンターとして活躍し、2014年の優勝に貢献。引退後はコーチに転身し、いくつかのチームでアシスタントコーチを務め、パリ・バスケットボールを率いてフランスリーグ優勝を勝ち取った後、トレイルブレイザーズのアシスタントコーチとしてNBAに戻って来た。

シーズン開幕早々、ヘッドコーチのチャウンシー・ビラップスが違法ギャンブル容疑で逮捕され、彼は暫定ヘッドコーチを務めることになった。自分自身も難しい立場だったが、「事件からは距離を置き、選手がバスケに集中できるようサポートしたい」との姿勢を打ち出すことでチームを混乱に巻き込ませず、選手たちと信頼関係を築き、前評判の低かったブレイザーズをプレーオフへと導いた。

このシーズン中にオーナー変更があったブレイザーズはスプリッター続投に難色を示したが、すぐにブルズがオファーを出した。デマー・デローザンやザック・ラビーンといったベテランを放出して若手で再スタートを切るブルズはビリー・ドノバンの退任が決まっており、後任を探していた。運営統括責任者に就任したばかりのブライソン・グラハムは「高いバスケIQを持ち、周囲と信頼関係を築くことができ、育成に情熱を持つ」という3つの条件を定め、これに合致したスプリッターを新ヘッドコーチに据えた。

就任会見に臨んだスプリッターは「ブルズのヘッドコーチに就任できて光栄だ。我々の進む先には素晴らしい未来が待っていると確信している。高い基準と素晴らしい習慣を持つチームを作りたい。それには多大な努力と時間を要するが、やり方は分かっているつもりだ」と抱負を語る。

「ブラジルで過ごした幼少期、私はブルズのファンだった。深夜に親の目を盗んで起き出し、MJ(マイケル・ジョーダン)を応援したものだよ。そのブルズでみんなと一緒に働けることを、心から楽しみにしている」

スプリッターの採用が決まって、ファンが唯一心配したのは、ハイテンポなバスケを目指すガード主体のブルズのロスターを彼がどう見るかだった。ブレイザーズはハーフコートバスケでプレーのテンポは遅く、フォワードのデニ・アブディヤのアイソレーションからオフェンスを作り出すチームで、ブルズのロスターには合わない。スプリッターは「私は速いペースのバスケが好きだし、パリではそうだった」と、ファンの心配を払拭した。

「パリはガード中心で、ポイントガードがスコアラーだった。ブレイザーズはドライブが強い選手やリバウンドが強い選手が多く、ロスターの質が異なる。当然、システムは選手に合わせて構築するものだ。私自身にやりたいプレースタイルはあるが、選手たちが得意とすることを引き出すのが第一だし、それをここでも実践していく」

『すぐ勝てるチーム』ではないはずだったブレイザーズをプレーオフへと導いた手腕にファンが期待するのは当然だが、スプリッターは新シーズンがどのような展開になるかについて「現時点では明確なことは何も言えない」とブレーキを掛けた。

「それでも、一つだけ保証できるのは、すべての試合を全力で戦い、あらゆることに高い基準を持つことだ」とスプリッターは約束した。「現時点で何勝するかの目標を掲げるのは賢明ではない。まずは選手たちを把握し、毎日競争するところから。そして小さな目標を立て、小さな勝利を積み重ねていく。10試合ごと、20試合ごとに現状を分析し、改善のための微調整を施す。それが私のやり方だ。常に良いチームになり、選手を成長させるために、変えるべきことは常に変えていく」