タウンズのファウルトラブルから大苦戦、土壇場で逆転

NBAファイナル第4戦、ニックスは試合開始からわずか1分で窮地に陥った。最初のプレーでカール・アンソニー・タウンズがディアロン・フォックスを止める際にファウルを犯す。その30秒後、タウンズのドライブを背後から止めたビクター・ウェンバニャマがファウルをコールされるも、スパーズはこのタイミングでチャレンジを要求。映像を確認した結果、ポストアップでウェンバニャマを抑え込んだタウンズがリムを攻める際に相手の腕をつかんでいたとして、タウンズのオフェンスファウルへと判定が覆った。

開始1分でタウンズを下げざるを得なかったニックスに対し、スパーズは一気に攻勢に出た。代役の重量級センター、ミッチェル・ロビンソンを速いペースで振り回し、アウトサイド主体で攻める。タウンズは粘り強いディフェンスの中心になっていただけでもなく、ポストからのプレーメークでオフェンスの起点にもなっており、彼の不在でニックスは攻守ともに機能不全に陥った。

ニックスの指揮官マイク・ブラウンは、3番手のセンターであるアリエル・フクポルティを起用し、ジェレミー・ソーハンを入れたスモールラインナップなどあらゆる手を打つも、スパーズの勢いを止められない。タウンズがコートに戻ってもプレーの強度を落とさざるを得ず、個人3つ目のファウルも犯してしまったことでスパーズ優勢はさらに強まった。第1クォーターを41-22と圧倒し、第2クォーターも最大29点までリードを広げていった。

それでも、第3クォーターにスパーズはステフォン・キャッスルがファウルトラブルとなり、3ポイントシュートが落ち始めたことで優位が揺らぐ。ここでは13-0のランを浴びても崩れずに持ち直したのだが、第4クォーターに入って本来のプレー強度を取り戻したニックスに流れは傾いた。

タウンズがタフショットを連続で決めきることで点差を1桁に縮め、残り4分半でOG・アヌノビーの3ポイントシュートで95-99とクラッチシチュエーションに持ち込んだ。こうなるとマディソン・スクエア・ガーデンの観客の熱狂ぶりがスパーズの選手から冷静さを奪っていく。

伏兵ホセ・アルバラードの連続得点、さらにウェンバニャマの前からブランソンが3ポイントシュートをねじ込んで、ニックスが103-104の1点差と肉薄。ここでジョシュ・ハートがワンマン速攻を決められず。ウェンバニャマがフリースロー2本を得るもいずれも失敗と、スパーズには相手の流れを断ち切るチャンスが訪れたのだが、それを逃してしまった。

ブランソンの得点でニックスがこの試合で初めてのリードを奪い、キャッスルがフリースロー2本を決めてスパーズがリードを奪い返す。両チームともに疲労し、熱狂の渦の中でプレーに集中するのも難しくなった最終盤、残り5.7秒でタイムアウトを使ったニックスは、ブランソンに最後のチャンスを託す。ブランソンがトップの位置から放った3ポイントシュートはリングに弾かれたが、これをかき出そうとするデビン・バッセルとディラン・ハーパーより先にリバウンドに飛び込んだのがアヌノビーだった。アヌノビーがティップで浮かせたボールがリングを通過し、これがゲームウィナーとなってニックスが107-106で激闘を制した。

ニックスにとっては攻守が機能しなかった試合展開の中で精力的なプレーを続け、特にブランソンがリズムをつかめない時間帯にも3ポイントシュート9本中7本成功と得点を繋いでいたアヌノビーが最後に大仕事をやってのけた。「ジェイレンが良い形でシュートを打てそうだと判断して、僕はとにかくリムに突っ込んだ。勝つためには何でもやる、それだけを考えていた」とアヌノビーは言う。

最大29点差からの逆転劇。アヌノビーは自分たちの精神的な強さに自信を持っている。「僕らは粘り強く戦うし、決してあきらめないチームだ。バスケは流れのスポーツで、前半はスパーズに流れが行っていたけど、その後は僕たちが波に乗った。これまでも逆転勝利を何度もやってきた。修羅場をくぐり抜けてきているんだ。精神的な強さを発揮して、ただ戦い続けるだけだった」

これで3勝1敗でNBA優勝に王手を掛けた。アヌノビーはにこりともせず、次の試合へと意識を向けていた。「まずは映像を確認して、29点差も付けられた原因となる問題を修正する。あとは試合になればアグレッシブに戦うだけさ」