ヒステリックに騒ぎ、戦犯を仕立てて批判する『文化』

セブンティシクサーズのファンは、長らく『期待を持たされては裏切られる』を繰り返してきた。特にこの23年間は、レブロン・ジェームズが次々と優勝を重ねる姿を指をくわえて眺めてきた。

アレン・アイバーソンがチームを牽引して東カンファレンスを制した2001年まで時間を戻そう。NBAファイナルではレイカーズとの第1戦を延長の末に制すも、その後は4連敗。しかし、これが今日まで続く『シクサーズが優勝に最も近付いた瞬間』であり続けている。

その翌シーズン、アイバーソンと指揮官ラリー・ブラウンの不和が表に出た。親友を亡くして精神的に落ち込んだアイバーソンに対し、ブラウンは「練習に来ない」と苦言を呈し続けた。プレーオフのファーストラウンドで敗退した直後、ブラウンが「誰がトレードに出されてもおかしくない」と発言したことで、アイバーソンの移籍話が噴出する。結局、両者はシクサーズの優勝のためにあらためて結束を誓ったのだが、トレードの噂を払拭するための記者会見で事件が起こる。地元記者がプレーオフの試合やシーズンの振り返りではなく、ブラウンが繰り返していた『練習に来ないこと』に対する説明を求められたことで、アイバーソンは「練習の話をしろと?」と同じ言葉を22回も繰り返す35分間の独白へと突入する。

アイバーソンは型破りな性格だったが、昔気質の義理堅さも持ち合わせていた。だからこそ、チームへの情熱を踏みにじられては我慢できなかった。熱狂的にチームを応援するが、選手には徹底して規律と結果を求め、上手くいかなければ戦犯探しに躍起になる──この街のファンとメディアの気質とアイバーソンは正面からぶつかってしまった。

アイバーソン放出後の低迷期を経て、当時のサム・ヒンキーGMは上位指名権を集めるために、なりふり構わず負けにいく方針を取った。『プロセス』という名の徹底的なタンキングは、19勝、18勝、10勝という3年連続の低迷をファンに強いた。この間、レブロンはヒートとキャバリアーズで東カンファレンスを勝ち続け、シクサーズが10勝72敗という破滅的な惨敗を喫したシーズンに、キャブズにNBA優勝をもたらした。

ベン・シモンズ

上位指名したスター候補を次々と潰していく批判の嵐

あからさまなタンキングはリーグから再三の警告を受け、2016年4月にヒンキーは「他球団と同じ方向を向いていては勝てない」という言葉を残してシクサーズを去った。2014年の1巡目3位で指名され、ケガが癒えた2016年にデビューしたジョエル・エンビードは、「NBAがヒンキーを追い出したから、あえて『プロセス』というニックネームを名乗った」と後に語り、この球団のねじれた歴史を自ら背負う道を選んだ。

2018年にレブロンがレイカーズに移籍し、東カンファレンスに『空白』が生まれたことで、ファンはシクサーズの復活に期待した。しかし、この時期こそシクサーズの低迷が最も色濃く出てしまう。ジャリル・オカフォーはコート外のトラブル続き、マーケル・フルツは肩のケガを機にシュートフォームを見失った。フルツは最終的に胸郭出口症候群という身体的な疾患がシュート不調の原因だったと分かるのだが、彼は「一番辛いのは『あいつはメンタルが弱い』と言われることだった」と、ファンとメディアのバッシングに潰されたと回顧している。

アイバーソンも彼らの憤りをぶつけられる対象になったが、その際たるものはベン・シモンズだ。屈強な大型ポイントガードとして台頭するも、シュートを打たない消極性が批判の的となった。2020-21シーズンのプレーオフ、セカンドラウンドでホークスに敗れた『GAME7』で、シモンズは苦手なシュートを避け続けた。敗退が決まった瞬間から、ファンはシモンズに激怒し、地元メディアもその激情を煽るようにシモンズを叩きに叩いた。

確かにシモンズのプレーはひどかったが、その試合で13アシストを記録してもいる。勝つのも負けるのもチームの責任なのだが、負けた時のシクサーズのファンとメディアは『誰かを血祭りに挙げないと』収まらない。生え抜きのスター選手だったシモンズは、この時にファンの怒りが荒れ狂うのに任せ、自分を擁護しようとはしなかったフロントと対立し、退団へと至っている。

ジョエル・エンビード

チームに忠誠を誓うエンビードも地元メディアと衝突

エンビードにも批判の矛先が向けられた。2024-25シーズンの序盤、地元メディアが「エンビードにケガが多いのはプロ意識が足りないせいだ」との論陣を張り、その文脈の中で彼の亡くなった弟と、その名前を譲り受けた彼の息子を引き合いに出した。これにエンビードは激怒し、試合後のロッカールームでこの記事を書いた記者を突き飛ばしたことで出場停止処分を受けている。

膝の痛みと付き合いながらプレーし続ける方法を模索する姿が批判されるのだから、腹が立つのは当然だ。チームのために、ファンを喜ばせるために文字通り身体を削って戦っているのに、過度な批判を浴びるとなれば、しかも愛する家族への侮辱まで加われば、どんな選手も精神的に疲弊してしまう。

シクサーズは戦力が整うたびに、ケガという『身体』の問題と、それに加えて批判や対立という『心』の問題に見舞われてきた。レブロンの加入により、その悪い連鎖は断ち切れるのだろうか。話はそう簡単ではないだろう。期待値が高まれば高まるほど、何か一つ歯車が嚙み合わなくなれば批判の嵐が吹き荒れるのがシクサーズの文化なのだ。

勝っていれば物事は上手く回る。しかし、3連敗もすれば不穏な空気が生まれるだろう。シクサーズが長年苦しんできたのは、単に優勝できなかったからではない。期待が裏切られるたびに、誰かを戦犯へと仕立て上げ、その矛先をスター選手へと向けてきたことこそが、このチームの『失敗の歴史』だ。

レブロンの加入は、シクサーズに優勝をもたらすための最後のピースなのか。それとも、また新たな『期待と失望』の始まりなのか。これは目先の勝ち負けの話ではない。この機会に本当の意味でチームの文化を刷新できれば、『レブロン以後』もシクサーズは勝てるチームに生まれ変わる。そうでなければ、過去最大級の『期待を持たされては裏切られる』となるだろう。