
「昔から知ってくれている人にとってエモいのかな」
6月3日に千葉ジェッツの西村文男の引退試合『LAST RUNWAY #11』が行われた。
千葉ジェッツはLaLa arena Tokyo-Bay(以下、LaLaアリーナ)という1万人を収容できるホームアリーナを持っているが、西村の引退試合はその収容人数の半分にも満たない船橋アリーナで行われた。LaLaアリーナでの開催を希望する声も多かったが、これは西村本人の意向で決定。船橋アリーナでともに戦った戦友たちを招いて行う、今回の試合にふさわしい場所として選んだ結果だったと西村は言った。
「引退試合にはジェッツでずっと一緒にやってきた選手たちをお誘いさせてもらうし、フロントスタッフと引退試合の仕様について話をした時に、昔をいろいろと思い出したいので船橋アリーナでやりたいということを伝えさせてもらい実現しました」
今シーズンのチャンピオンシップクォーターファイナルでは、LaLaアリーナに駆けつけたブースターの声援が「過去イチだった」と西村も語ったほどに熱狂の渦を形成したが、2014年から千葉Jに所属した彼にとって、船橋アリーナこそがホームアリーナだった。加入当初は人気チームとは言えず空席も目立っていたが、チームが強くなり、フロントスタッフの努力の甲斐もあって成長を続け、やがてアリーナは超満員となった。この成長をともに実感できたことへの敬意も含め船橋アリーナでの開催となった。
平日夜だし
— 西村 文男 (@fumionishimura) May 13, 2026
キャパの話もあった中
思い入れが強い船橋アリーナで
やりたいと
僕のわがままを聞いてくれた
千葉ジェッツには感謝しています。
ご理解頂けるとありがたいです。
そして
チケット完売ありがとうございます。 https://t.co/SUfXaHON1c
西村はユニフォームの着こなしについても言及した。着用するアンダーウェア、ソックスの色統一などシーズンを追うごとにルールが変更され、これまで封印を余儀なくされていたスタイルがある。西村のファンの中では有名となっていた白いロングタイツに白いソックス、そして白いバッシュを組み合わせた『王子様スタイル』をこの引退試合で復活させた。「今日の白タイツも、10年前は僕がアウェー戦でやっていたスタイルなので、昔から知ってくれている人にとってエモいのかなと思って着用しました」。西村はいつだってファンやブースター、関わるすべての人々に気を遣っている。
その姿勢になったのは、元千葉Jのヘッドコーチである大野篤史との出会いが深く関わっていると西村は試合後の記者会見で語った。「大野さんにはバスケットだけではなく、人として大切な部分で成長させてもらえました。その成長があったからこそ僕は、この年齢までみんなに支えられて続けられたと思っています。わがままで自己中心的な当時の僕のままだったら、絶対に今この場でこのように皆さまの前で喋らせてもらっていないと思っています」
このLAST RUNWAYは自分の引退する姿を見てもらう場ではなく、支え続けてくれた方々への恩返しの場として、随所に西村らしさが散りばめられていた。引退試合となればセレモニーも多く、試合後も関係者へのあいさつ回りが続いた。イベントの最後、23時を回って始まった記者会見に登場した西村は集まった記者たちに対して開口一番、感謝の気持ちを伝えた。
「まずはお待たせして、本当に皆さま申し訳ありませんでした。皆さまと長くお付き合いをさせてもらっていく中で、僕が飽きないように工夫した質問などもいろいろしていただいて本当に感謝してます。長く、西村を追って取り上げていただき本当に感謝しております。ありがとうございました」
この言葉を聞いた時に、あらためて心を惹きつけられて記者もいたに違いない。そして人たらしの彼はこう続け、記者の取材本能をさらに駆り立たせた。
「ぜひ皆さまには、コーチとして新しい道を進む僕も引き続き取り上げてもらいたいと思います。取り上げてもらえるようなコーチになりたいと思っているので、引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございました」
西村の選手としての活動はこれで幕を閉じた。しかし、この引退試合後のセレモニーで発表された通り、西村はアドバイザリーコーチとして来シーズンも千葉Jに関わることが決定している。プロバスケットボールプレーヤー西村文男からプロバスケットボールコーチ西村文男へ。彼を追いかける日はまだまだ続く。