ハリソン・バーンズ

10年ぶりのNBAファイナル「今この瞬間に集中する」

スパーズは22歳のビクター・ウェンバニャマ、21歳のステフォン・キャッスル、ディラン・ハーパーとカーター・ブライアントの20歳のルーキーコンビといった若手が引っ張るチームだ。チーム最年長は36歳のメイソン・プラムリーで、35歳のケリー・オリニク、33歳のビスマック・ビヨンボといったベテランは若手を支える役目に回っている。ベテラン勢で唯一ローテーション入りしているのが、34歳のハリソン・バーンズだ。

ベンチから出るオールラウンダーとして堅実な働きを見せるバーンズは、レギュラーシーズンの25.8分からプレーオフでは9.4分と出場時間を減らしているが、デビン・バッセルが「出場するたびにチームを落ち着かせてくれるし、ベンチにいても常に意味のあるアドバイスをくれる。僕らはかなり彼に頼っている」と言うように、その存在感は大きい。

2012年のNBAドラフト1巡目7位でウォリアーズに加わった彼は、それからの4年間でウォリアーズ黄金期の立ち上げに大きく貢献。2015年にNBA優勝を勝ち取っている。その翌年にもNBAファイナルに駒を進めたが、ここではレブロン・ジェームズを擁するキャバリアーズに敗れ、そこからマーベリックス、キングス、スパーズとチームを変えながら、NBAファイナルの舞台に戻るまでに10年を要した。

サンダーとのカンファレンスファイナルを制してNBAファイナル進出を決めた5月30日は、彼の34歳の誕生日だった。その前夜、『GAME7』がいかに重要なものか、なおかつ『負ければ終わり』の試合で恐れずにプレーすることの意義を若い選手たちに説いたのはバーンズとルーク・コーネットだった。

彼のアドバイスは常に「まずは落ち着け、そして自分を信じろ」だ。「ディランもステフォンも勝利への意欲がとても強く、そのために正しいプレーをしなきゃいけないと思いすぎるところがあって、時にそれが焦りに繋がる。リラックスして、少し冷めたぐらいでいるほうが着実にプレーを遂行できる。10点リードでも10点ビハインドでも関係なく、1ポゼッションずつ戦え。僕たちがここまで来れたのは偶然じゃなく、これまでやってきたプレーを貫けば勝つ資格はある、と伝えている」とバーンズは言う。

今の若いチームメートたちが10年前の自分と重なって見えるのは自然なことだ。「ハーパーとステフォンには、『お前たちはNBAで最もツイている』と伝えたよ。大学から来ていきなり60勝を挙げて、NBAファイナルのコートに立っているんだから。勝者がいれば必ず敗者がいることを、彼らはまだ知らない。成功体験だけを積み重ねてここまで来た。そんな若さゆえの勢いがあるのは良いことだ。ただ、大事なのはこの機会が持つ意味をしっかりと受け止めて、地に足をつけて集中することだ」

「つまり、どんなに優れたチームであってもNBAファイナルに戻って来られる保証はないということだ」とバーンズは言う。過去何年かのファイナル進出チームを思い出してほしい。1年前は『サンダーはあと3年はファイナルに来る』と誰もが思った。サンズもバックスもナゲッツもそうだ。でも、毎年シーズンが始まる時には山のふもとから登り直すことになる。『若いチームだから何度もチャンスがある』みたいな考え方に陥ってはダメなんだ。僕らもニックスも、これでしばらくファイナルには戻って来られないかもしれない。先のことなんて誰にも分らない。だから今この瞬間に集中して、すべてを出しきるんだ」

NBAファイナル初戦は悔しい逆転負けに終わったが、百戦錬磨のバーンズに焦りも動揺もない。「このポストシーズンを通して、アプローチを間違えたり集中を欠いたり、それで勝てるはずの試合を落としたりと、いろんな経験をしてきた。そのおかげで今の僕たちは、何を優先して、どうアプローチすべきかは分かっている。まずは自分たちでコントロールできること、スカウティングレポートに基づいたゲームプランを遂行することから始めるよ」