ライジング福岡(現・ライジングゼファー福岡)、福島ファイヤーボンズ、神戸ストークスのヘッドコーチを歴任した森山知広は、2024-25シーズンから韓国のWKBLのハナ銀行で2シーズンにわたってアシスタントコーチを務めた。そしてこの春に女子マレーシア代表のヘッドコーチに就任が決定した。異色のキャリアを進む彼に、ここまでの経緯と今後の展望について語ってもらった。

「対比しながら試行錯誤していきたい」

──WKBLチャレンジ1年目のシーズンは9勝21敗でしたが、翌シーズンは20勝10敗と躍進しました。その要因を教えてください。

シーズンが切り替わるにあたってコーチングスタッフを刷新してイ サンボムさんがヘッドコーチに就任しました。彼はKBLでも優勝経験があり、ロンドンオリンピックでは韓国代表を率いた実績もあります。その彼とは神戸ストークス時代にともに戦った仲(2023-24シーズン)で、スタッフが総入れ替えとなる中で「一緒に戦ってほしい」と、オファーをもらうことができて2シーズン目を迎えました。彼が入ってきたことで、練習の質や内容が大きく変化しました。その結果がレギュラーシーズン2位という結果に結びついたのだと思います。

──森山さんはチームでどのようなことを求められていましたか?

サンボムヘッドコーチは僕が何ができるのか、強みが何かということを理解してくれていたので、まずはスカウティングのレベルを日本でやっていた時と同等のレベルに引き上げてほしいということが一つ目のミッションでした。次にモーションオフェンスを志向しているコーチなので、セットプレーやアウトオブバウンズのプレーをデザインしてほしいと要望されました。もちろんシーズンが進んでいくにつれて役割は変わっていくのですが、しっかりと僕の意見を取り入れて貢献できるようにまとめてくれていました。

──2シーズンで学んだことはありますか?

1年目は本当にリーグの状況も何も分からない中で、しかも女子の選手を指導すること自体が初めてだったので慣れることが必要でした。2年目は韓国の男子で結果を出してきたサンボムヘッドコーチが女子チームをどうやってコーチングするのか、彼が志向するモーションオフェンスをチームに落とし込んでいく過程を学べたことは大きなプラスになりました。

「お前は弟みたいなものだ」といってくれた彼にはなんでも相談ができて、提案をして採用されなくてもしっかりと理由を説明してくれていたので、生きたディスカッションができていました。やりがいという意味でも1年目よりも多くのことを学ぶことができました。

──今回、マレーシア代表コーチに就任されましたが、この経験は活用できそうですか?

東南アジアの中でどうやって勝っていくか。というレベルなのですが、この経験は非常に参考になると思います。選手たちの特徴やレベルをどうやって引き上げるか、同じアプローチをしたら良いわけではないと思いますが、対比しながら試行錯誤していきたいですね。

A代表だけでなく全カテゴリーを統括

──マレーシア代表への就任の経緯について教えてください。

B3のトライフープ岡山などでコーチ経験のある松井康仁さんが、当時マレーシアの一般企業で働きながら、マレーシア協会の男子U18代表チームを指導していました。協会が彼に「A代表チームのコーチを探している」と相談した事がきっかけで、正式オファーの前にヒアリングをもらったのがきっかけでした。

──それはいつ頃の話でしょうか?

今年の1月頃ですね。僕自身もWKBLのシーズン中だったので深くは考えず、そこが終わってから次に進もうと思っていたくらいでレジュメを送った程度でした。3月のワールドカップ予選でリーグが中断期間に入った時に、マレーシア協会から現地に来てほしいという依頼を受け、ハナ銀行の了承も得て1週間ほど滞在してオファー内容などを詰めていました。その時にU18のセレクションも行っていたので、視察もさせていただきました。

──実際にセレクションをご覧になって、マレーシアの選手たちの印象はいかがでしたか?

可能性はかなりあると思いました。マレーシアは多民族国家なんですが、マレー系、インド系、中華系と様々な人種で構成されています。中にはミックスの選手もいて体格に恵まれた選手もいます。ファンダメンタルや競技力は日本に劣りますが、ポテンシャルの高さがうかがえました。

──今回は女子のヘッドコーチに就任したということですが、正式に決まったのはいつですか?

実は昨日(5月5日)契約書にサインをしました(笑)。協議を重ねた結果、女子の全カテゴリーを統括してコーチングすることで落ち着きました。来月から2カテゴリー同時にトレーニングキャンプが始まりますが、U18の練習の後に、フル代表の練習があり、1日に4セッションをこなすハードスケジュールになっています(笑)。

──全カテゴリーでのコーチングは頭をフル回転させなくてはいけないですね。

本来であれば各カテゴリーにコーチを配置し、育成していくのですが、競技力が発展途上の国では予算的にも厳しい部分があります。とは言え、A代表からアンダーカテゴリーまで一貫して見られることのメリットもあります。年齢に関係なくコールアップさせてA代表に絡む経験を早い段階からさせるのが理想で、そのために基本的なシステムやチームルールは統一しようと思っています。

──女子日本代表は『ペース&スペース』といったテーマが存在します。マレーシア代表として求めるプレースタイルについてお聞かせください。

まだ日本代表のレベルには達することはできないですが、あのスタイルは僕も好きなので近いものを考えています。ただ発展途上のチームなので少し振り切った戦術にしないと戦えない部分もどうしてもあるので、まず1つ目はファストブレイクでペースを上げていきたいです。2つ目はスペーシングが良いオフェンスを作るのでアライメントを意識させたいです。最後に3ポイントシュートを主軸にした大胆なオフェンスで、受け身にならず仕掛けていくオフェンススタイルを構築していきたいと考えています。ただ、ビッグマンが他の国に比べて少ないので、ただ単のピック&ロールをするのではなくて、ハンドオフにアレンジを加えた2対2を加えていきたと思っています。

ディフェンスはサイズがない分、リバウンドの勝負になります。リバウンド、ルーズボールという泥臭い部分は全カテゴリー強調して取り組んでいきますが、規律のあるローテーションを用いたチームディフェンスを作ってスマートなバスケットも展開したいと思っています。統一意識を持たせるワードに関してはまだ決めかねていますが、打ち出したいと考えています。