ジャマイ・マシャック

史上最低のトリプル・ダブルも「すさまじい経験」

グリズリーズは3人のルーキーを加えて2025-26シーズンに臨んだ。1巡目11位指名のセドリック・カワードは62試合に出場、25.8分のプレータイムを得て13.6得点と、即戦力としての期待に応えた。シーズンを通して波は大きく、3ポイントシュート成功率は33.8%と低調だったものの、今後のチーム作りがどんな方針に進むとしてもローテーションの一角として計算できる戦力となった。

ほとんど注目されていなかった残る2人、2巡目48位のジェボン・スモールが41試合、2巡目59位のジャマイ・マシャックが31試合に出場したのは、グリズリーズがタンキングに転じた結果だ。タンキングの是非が大いに議論されたシーズンにおいて、グリズリーズは主力の大半をインジュアリーリストに送り込んで、経験のない若手を起用して負け続けた。

結果として25勝57敗、リーグで下から6番目の順位。勝利を目指すことなく多くの試合をただ消化するのはバスケへのリスペクトを欠き、NBAの価値を毀損する行為だが、それでチャンスを得たのがスモールやマシャックだった。

テネシー大で4年生までプレーしたマシャックには、カワードのようなサイズもシュートスキルもなかった。大学でも、エースを封じ込めるしぶといディフェンスは評価されたが、オフェンスではほぼ何も期待されなかった。グリズリーズと2ウェイ契約を結んでも出場機会の保証はなかったし、サマーリーグでアピールに成功していなかったら、その時点で解雇されていたかもしれない。

シーズン前半のほとんどをGリーグで過ごしたマシャックにも、グリズリーズの成績が落ち込むにつれNBAでプレーするチャンスが与えられた。メンフィスとノックスビルとの違いこそあれ、『地元』テネシー大出身のマシャックをファンも温かく見守った。

ドラフトされた時点で彼は「僕はエリート街道を歩いてきたわけじゃない。たくさん得点する選手でもない。ドラフトの最後の最後で指名されたラッキーな男だけど、それを努力でつかみ取ったことを誇りに思う」と語っている。

ラッキーで得たチャンスであったとしても、彼は少しずつ信頼を勝ち取っていった。持ち味のディフェンスはもちろん、ガード陣が軒並みケガをする中でプレーメークも担ったし、得点も狙った。大学時代に対戦したザック・イディーが離脱した後は、限られた機会ながらスモールラインナップのセンターまで務めた。鼻を骨折してもフェイスガードを着用して試合に出続けるなど、得られるチャンスは一つも逃さないという覚悟を見せた。

欠場しながらもチームに帯同するベテランは、ジャ・モラントもスコッティ・ピッペンJr.もタイ・ジェロームも彼にアドバイスするために時間を割いた。「2ウェイ契約でGリーグのハッスルから来たばかりの僕にも、他の若手と同じ扱いをしてくれたのは本当にありがたかった。『ウザいぞ』と言われるギリギリのラインを見極めながら『質問魔』をやっていたよ」とマシャックは振り返る。

現地4月10日のジャズ戦は101-147の大敗に終わったのだが、この試合でマシャックは13得点15リバウンド14アシストを記録した。チームは6人ローテでこの試合に臨み、マシャックは48分フル出場。トリプル・ダブルを記録しながら得失点差は-46で、故意に負けようとするチームのあからさまな姿勢が批判され、彼の記録は『史上最低のトリプル・ダブル』と呼ばれた。

それでも彼にとっては、NBAで打ち立てた金字塔だ。「どんな小さな役割でも精一杯やるつもりでシーズンをスタートさせたから、あんなすさまじい経験ができるとは思っていなかった」とマシャックは言う。

「チームに加わったばかりの選手が多く、チームのオフェンスをまだ理解していない者もいたから、まずは全力で戦う姿勢で彼らを引っ張り、ガードとしてできる限り組織的にプレーを組み立てようとした。自分がそういう役割を担うと予想していたからイメージはできていた。僕の強みはオールラウンドに何でもベストを尽くすところで、それが発揮できた試合だった」

そして彼は、「ディフェンスは上手いが、オフェンスでは何もできない選手」という評価を覆すことに意欲を見せる。「僕と対戦したことがある選手なら、そうじゃないことを知っている」と彼は言う。「僕はペイントを攻めることもできるし、そこからキックアウトでシューターに打たせることもできる。キャッチ&シュートは今のところの課題なのは認めるけど、それもこのオフに克服するつもりだ。シュートの確率が上がれば、ドライブもパスも選択肢が広がる」

最後の最後でNBAに滑り込んだルーキーとしては望外の1年を過ごしたが、ここで止まるつもりはない。「ドリュー・ホリデー、デリック・ホワイト、ルーゲンツ・ドート、クリス・ダン。将来的に彼らのような選手になりたい。『あいつにできるわけがない』と思う人もいっぱいいるだろうけど、僕はこれまでのキャリアでそういう意見を覆してきた。そんな将来図を意識しながら、今年の夏はひとまず『素晴らしいシューター』になるよ」

マシャックのオフはそれほど長くない。「まだチームとは話をしていないけど、サマーリーグには出場するつもりだ」。もっともっとプレーしたい、という笑みとともに、マシャックはルーキーシーズンを終えた。