ケビン・デュラント

タリ・イーソン「何で勝負すべきかは分かっている」

一般的に再建チームは若手のエネルギーを活用して、ディフェンスからチームを作り上げる。今の東西トップチームであるサンダーとピストンズも、まずはディフェンスで安定した基盤を作り、そこにオフェンスを上積みしていった。

ロケッツも同じ手法で再建を進めた。ジェームズ・ハーデンが去った後、スティーブン・サイラス体制では混沌の3年間となったが、イメイ・ユドカをヘッドコーチに迎えてからは、すぐさまリーグトップレベルまでディフェンス力を鍛え、サイラス3年目に22勝だったチームは41勝、51勝と結果を残すようになった。

1年目は『西高東低』が厳しすぎて勝率5割ながらプレーオフ進出を逃し、2年目はプレーオフの経験の差で、ウォリアーズとの第7戦までもつれたファーストラウンドで敗れた。そうして迎えた3年目にケビン・デュラントを迎え入れ、いよいよ優勝争いに加わるはずが、チームの成長は頭打ちになってしまった。

接戦をモノにするために必要なのは強固なディフェンスとクラッチタイムに結果を出せる絶対的なエース。両方が揃っても接戦に勝ちきれないのはなぜなのか。フレッド・バンブリートとスティーブン・アダムズという信頼できるベテランのケガ、デュラントへの過度な依存という問題はあれど、それだけでは片付けられない。

プレーオフのストレートインとなる6位を確保していてもなお、目標のないブルズに敗れ、ティンバーウルブズ相手に延長で2桁のリードをひっくり返された。その前にもステフィン・カリー不在のウォリアーズに延長で敗れ、スパーズには25点差、ナゲッツには36点差と大敗。単なる勝敗以上に無様な負けっぷりがチームの評価を落としている。

だからこそ、ただ勝つだけでなく意味のある勝利をロケッツは必要としていた。それを手にしたのが現地3月31日のニックス戦だ。ニックスは6位以内でのプレーオフ進出が確定し、ファーストラウンドをホームで開催できる4位以内の確保も当確状態で、いつもの闘志を失っていた面はあった。それでもマディソン・スクエア・ガーデンの観客に後押しされる強豪を試合開始3分で14-1と圧倒し、そのリードを最後まで保つ圧倒的な勝ち方ができた。

ゲームハイの27得点を挙げ、6リバウンド8アシスト2ブロックも記録したデュラントのパフォーマンスは、チームの勝敗にかかわらず安定している。ロケッツの調子を決めるのはタリ・イーソンやアメン・トンプソンが守備のインテンシティを上げることであり、リード・シェパードが全員の力を引き出すゲームコントロールをすることだ。

イーソンはキャリア4年目のフォワードで、シェパードは2年目の21歳のガード。この2人がプレッシャーに屈することなく堂々としたプレーを見せたことで、ニックス戦ではチームが攻守とも機能した。デュラントはこの勝利に、相手の徹底的なマークにフィジカルでやり返した自分のプレーを自画自賛しつつ、2人への信頼をこう語っている。

「タリは世界中から『シュートが下手』なんて揶揄されてきたけど、この数試合はそんなの関係なしに打てるようになった。ディフェンスやドライブはずっと素晴らしく、あとはシュートが入るかどうかで、今日は全く迷いなく打って決めていたよね。若手はつい躊躇してしまうものだけど、迷いなく打ち続ければ結果は出ると分かったと思う。リードは2年目だけど、チームの勝敗を背負うのは1年目だから、ずっと『そんなに慌てるな』と言ってきた。シーズン中盤になって、常に100マイルで突っ込むのではなく緩急を付けたプレーができるようになったのが大きい。2人とも遠慮せずに自分らしくプレーすることでチームを次のレベルへと引き上げる。そういうアグレッシブなプレーをしてくれるのは助かるよ」

そのデュラントにイーソンは感謝の言葉を語った。「彼のような偉大な選手の励ましはありがたいよ。そのおかげで一番大切なことに集中し、何があってもうつむかずに前を向いて努力し続けられている」

それでもやはり、イーソンの仕事は守備の強度を高く設定することだ。「それが僕らの命綱だと思っている。今シーズンはオフェンスの勢いに注目が集まり、ディフェンスが少し疎かになる面があった。でも、コーチ陣も僕たちも自分たちが何で勝負すべきかは分かっている。僕らはディフェンスでここまでやって来た。そこに立ち返るんだ」

デュラントを擁するとは言っても若いチームだけに、勢いはとても重要なもの。このニックス戦の快勝をきっかけとし、レギュラーシーズン残り7試合で自信を取り戻してプレーオフに臨みたいところだ。