
「何よりも、喜びと感謝の気持ちでいっぱいだ」
クリス・ポールのラストイヤーは思いがけない形で終わりを迎えた。40歳で迎えた今シーズン、全盛期を過ごしたクリッパーズに8年ぶりの復帰を果たす。カワイ・レナードにジェームズ・ハーデンと経験豊富かつ今もトップレベルでプレーできるベテランが揃うチームで、キャリアに唯一欠けているNBA優勝を目指すための古巣復帰だった。
開幕直後に彼は、今シーズン限りでの現役引退を発表。この時点でカワイをはじめケガ人続出のクリッパーズは5勝11敗と出遅れていたが、まだここから巻き返し、優勝を追い求めるという希望があった。しかし、その2週間後に彼はクリッパーズから自宅待機を命じられ、そのままチームに戻ることはなかった。そして今月のトレードデッドラインを前に、クリッパーズとネッツとの3チーム間トレードでポールはラプターズに移籍する。ただ、これはサラリー削減が目的で、ラプターズはすぐに彼を解雇した。
クリッパーズから放逐された時点での彼は「次に何が起きるのか楽しみだ」と語り、現役ラストシーズンを別のチームで戦い抜くことに意欲を見せていた。ただ、もう再建チームの礎を築くことに興味はなく、優勝を狙えるチームからのオファーはなかったのだろう。
「ここまでだ。21年以上を経て、僕はバスケを引退する。これを書いている今もそれが何なのかは分からない。大抵の人は驚くだろうけど、答えが分わからない(笑)」というSNSでの声明で、クリス・ポールは引退を表明した。
「何よりも、喜びと感謝の気持ちでいっぱいだ。NBAプレーヤーという章は終わるけど、バスケットボールは永遠に僕の人生に刻み込まれている。人生の半分以上をNBAでプレーできた。言葉にするだけでも信じられない気持ちになる。バスケで生きていくのは信じられないほどの幸運であり、多くの責任を伴うものだった。その良きも悪きも僕は受け入れた」
「バスケが教えてくれた素晴らしいことすべてを次のステージに持っていけることに胸が躍るよ。これはバスケを通じて出会えた人たちに教わったことだ。チームメート、コーチ、スタッフ、経営陣、そして何より僕の家族へ。感謝の気持ちは言葉では足りない。でも良い知らせは、これからその気持ちを伝える時間がたっぷりあることだ」
誰よりも闘争心旺盛なクリス・ポールには敵も多かったが、NBAプレーヤー全体のリーダーとして多くのリスペクトを集めた。NBA優勝は果たせなかったが、球団創設から約40年でプレーオフに7回しか出ていなかったクリッパーズを、在籍6シーズンすべてでプレーオフに導き、その後の強豪の礎を築いた。
ロケッツでは『王朝』ウォリアーズをあと一歩のところまで追い詰め、低迷していたサンダーを今の強さへと引き上げるきっかけを作った。サンズでは若い選手たちを引っ張りNBAファイナルへ進出。ウォリアーズでは不発に終わったが、スパーズも今の強いチームの基盤作りに大きく貢献している。
「バスケはいつも、僕に戦う理由を与えてくれた。真のリーダーは、その場に立ち向かうこと自体が戦いの半分を制すると知っている」と彼は綴る。NBA優勝という実績をキャリアに刻むことはできなかったが、彼がNBA史上に残る名選手であることに疑いの余地はない。