「試合は私たちのやっていることの全体の10%にすぎない」
2月1日、長崎ヴェルカはホームの広島ドラゴンフライズ戦に98-74で圧勝した。
長崎はシーズン前半戦を27勝3敗と圧倒的な強さで終えるも、1月25日の三遠ネオフェニックス戦、28日のシーホース三河戦と連敗を喫していた。しかし、この嫌な流れを84-71で勝利した前日に続いての同一カード連勝で断ち切ることに成功。しっかりと立て直し、2月6日と7日に行われるアウェー宇都宮ブレックスとの注目カードに臨む。
長崎のモーディ・マオールヘッドコーチは次のように試合を総括する。「良い形で試合に入ることができました。しっかりした対策ができて、第1クォーターのディフェンスは素晴らしかったです。試合を通して自分たちがコントロールできたことが勝利に繋がったと思います」
指揮官が語るように長崎は、出だしから堅実なディフェンスを継続することで、マークのズレを防ぎ広島にタフショットを打たせ続ける。その結果、第1クォーターで相手のフィールドゴールを12本中4本成功に抑えると、自分たちはうまくボールを散らして3ポイントシュート10本中6本成功と高確率で沈め、28-10といきなりのビッグクォーターを作る。これで完全に主導権を握った長崎は、このまま常に2桁リードをキープする危なげない試合運びで逃げ切った。
この試合の長崎はどんなに大差をつけても気を緩めることなくハードワークを続けた。特に印象的だったのは、チームリーダーである37歳の大ベテラン、狩俣昌也の振る舞いだった。狩俣がコートに初めて入ったのは最終クォーター残り3分半からで、その時点で長崎は30点リードの大差をつけ勝利を確定させていた。このガベージタイムと呼ばれる時間帯は、どうしてもリードしている側は気が緩んでしまいがちだ。その中で、狩俣は「まだ、終わりじゃないよ」といった声がけをして、味方を引き締めていた。
マオールヘッドコーチに、この言動を含めた狩俣の数字に出ない影響力について聞くと、「まず、バスケットボールの面白いところは、皆さんに試合で見てもらっているモノが私たちのやっている全体の10%にすぎないことです」と語り、残りの90%における狩俣の貢献度がどれだけ大きいのか続ける。
「マサ(狩俣)は素晴らしい人間性の持ち主で、常にチームのことを考えてくれています。例えば昨日は(プレータイム0分の)狩俣選手のおかげで勝つことができました。タイムアウトで彼が話して、チームに大きなインパクトを与えてくれました。今、私たちが良い成績を残せている大きな理由として、彼の日々の取り組み方の一つひとつがもたらすチームへの影響がすごくあります」

「本当のチャレンジは、いかに危機感を持って成長していけるか」
ここまで狩俣は、1試合平均9分40秒の出場で2.1得点、0.6アシストと、スタッツ面でいえば主力ではない。しかし、マオールヘッドコーチは、間違いなく狩俣を今の快進撃に不可欠なピースとして、絶大な信頼を寄せている。
「例えばマサのかわりに若くて身長、才能がある選手を獲得したとしても、彼のような人間性を持った選手がいないと、今のようなチームにはなれていないですし、ここまで勝つことはできないです。マサは本当に替えの効かない存在です。彼がこのチームにいてくれて私は本当に恵まれていると思います」
快進撃を続けている長崎だが、マオールヘッドコーチは現状に全く満足していない。「本当のチャレンジは、いかに危機感を持って成長していけるかです。人はどうしてもうまくいっていると、どこかで休んでしまったりしてしまいがちです。勝っている中でも気を緩めないで、いかに危機感を持って取り組めるのか。それがカルチャーに繋がっていきます」
この指揮官が目指すカルチャーの確立には、間違いなく狩俣の助けは欠かせない。試合では見えない90%のチームビルディングを支える、狩俣の存在があってこその長崎の快進撃であることを伝えたい。
