『カリー以後』を犠牲にして優勝を追い求められるか

バックスは18勝27敗で東カンファレンスの12位に沈んでおり、ヤニス・アデトクンボがふくらはぎのケガでまだ数週間はプレーできない今、状況が好転する見通しが立たない。『ESPN』は複数のチームがアデトクンボ獲得に向けたオファーを提示しており、バックスはこれを検討し始めたと報じている。

ヤニスはこれまでも常に移籍市場の注目の的であり、小さなフランチャイズのバックスは不釣り合いだと見られ、ビッグクラブへの移籍が取り沙汰されてきた。契約延長のタイミングが近付くたびに、ニックスやヒートはヤニスが新天地を求めることを期待してサラリーキャップに空きを作り、受け入れ態勢を整えてきた。

キャリア13年目にしてヤニスは初めての移籍を経験しようとしている。もっとも、バックスは2月5日のトレードデッドラインを一応の目処としつつ、納得のいく条件が出なければオフまで待つこともできる。バックスはこれまでヤニスを慰留するために、将来性を犠牲にして目の前のシーズンで勝てる戦力を整えてきたが、アキレス腱断裂で長期離脱となったデイミアン・リラードとの契約を解除し、その年俸を2030年までの5年分割で支払うような無理を重ねて、限界を迎えようとしている。

『ヤニス以後』のバックスは、毎年2200万ドル(約33億円)を負担する間は再建期となるだろう。となれば、トレードで手に入れたいのは1巡目指名権だ。

ヤニスを最も欲しいであろうニックスには、バックスを納得させるだけの指名権がなく、第3のチームを取引にからめる必要があるが、その交渉をまとめるのは簡単ではない。ヒートが使える指名権の多くは2030年以降のもので、これではバックス再建のタイムラインに合わないため、ニックス同様に他のチームをからめる必要がある。

その一方で、シンプルに解決策を提示できるのはウォリアーズだ。ステフィン・カリーが今のレベルを維持してプレーを続ける限りは優勝を争いたいが、ジミー・バトラーのケガでプランは崩れた。本気で優勝を目指すのであれば、このタイミングでバトラーを放出して『勝てる戦力』を獲得する必要がある。ウォリアーズは『カリー以後』の時代に備えて1巡目指名権のほとんどを保持しており、これを譲渡すればヤニス獲得のトレードは成立する。

ヤニスは中で、ステフは外で、相手からすれば1人では守れない相手であり、強力なデュオになるのは間違いない。だが問題は、ウォリアーズがトレードに消極的であることだ。

5年連続のNBAファイナル進出と、その間に3度の優勝を果たした『王朝』の体制に固執した結果、その後の6シーズンで優勝1回を追加したものの、そのうち3回はプレーオフ進出を逃している。バトラーがケガをした際にフロントは「彼の回復を待ち、来シーズンの活躍に期待したい」と語ったが、ステフがもう37歳であることを忘れてしまったのだろうか?

ウォリアーズは、将来の1巡目指名権を保持し続けることで『カリー以後』が保証されるという幻想にとらわれてもいる。彼らは若手の才能を見抜けないし、育てることもできない。1巡目指名権が新たなステフ、ドレイモンド、クレイ・トンプソンを生み出し、次の黄金期を作ると期待しているのだろうが、新たなジョナサン・クミンガジェームズ・ワイズマンを生み出すだけに終わる可能性の方がずっと高い。

ヤニスを獲得するチャンスが目の前にあるなら、つかみ取りに行くべきだ。ボールプッシュのできるヤニスが加わることでステフの負担が減り、今でも驚異的な全盛期があと数年伸びる可能性もある。それがいつまで続くにせよ、ステフのキャリアは最後の一日まで有意義なものであるべきだ。ウォリアーズ首脳陣は、この思い切った決断を下せるだろうか。